建築面積12平方メートルの本殿 ― 2017年に登録
善覚稲荷神社本殿は、岡山県真庭市木山字金谷平1265-1にある社殿で、2017年(平成29年)10月27日に国の登録有形文化財に登録された。員数は1棟、構造は木造平屋建、銅板葺、建築面積12平方メートル。所有は宗教法人木山神社である。
文化庁は年代を大正/1919とする。建築面積12平方メートルは、畳にしておよそ7畳半にあたる。桁行4.0メートル、梁間3.2メートルの小さな建物である。
形式は切妻造銅板葺、平入で、四周に縁を廻らす。小規模ながら四方に縁を巡らせている。
壁を二重に張り、柱の断面を内外で変える
文化庁の解説で目を引くのは、壁と柱の扱いである。
壁を二重に張り、柱は外側を円柱、内側を角柱とし、天井は格天井。
壁を二重にするとは、壁の面を二重に構えることをいう。その内外で柱の断面が違う。外側は円柱、内側は角柱である。
円柱と角柱では、格式や由来の異なる系統に属する。それを一つの建物の内外に使い分けている。通常は建物全体で柱の形が揃うので、この扱いは目を引く。
天井は格天井である。格子状に組んだ枠に板を張る形式で、12平方メートルという小さな空間に格天井を張っていることになる。
境内の他の建物と要素を揃える
文化庁は設計者と評価をこう記す。設計は江川三郎八で、垂木を吹寄とするなど、境内の他の建物と共通する要素でまとめる、特色ある社殿建築。
吹寄は、部材を等間隔に並べず二本ずつ寄せて配する手法である。垂木にこれを用いる。
評価の要点は、この建物単体の意匠ではなく、境内の他の建物との共通性にある。同じ設計者が境内の複数の建物を手がけ、共通の要素でまとめたという構成である。
同じ境内の善覚稲荷神社拝殿も同日に登録されている。拝殿の建築面積は44平方メートルで、本殿の12平方メートルとは規模が大きく異なる。文化庁は拝殿についても、吹寄垂木、トラス架構、格天井が江川三郎八の特徴をよく示すと記す。
本殿と拝殿は別々の登録であり、それぞれ独立した物件として扱われている。
登録という制度
登録有形文化財は「指定」とは別の制度である。届出制を基本とし、所有者が使い続ける自由を広く残す。
登録基準は「造形の規範となっているもの」など複数あり、同じ境内の拝殿はこの基準で登録されている。本殿も同じ枠組みで扱われる。
所有は宗教法人木山神社である。神社が現に使っている建物であり、博物館の収蔵品とは扱いが異なる。
登録は2017年10月27日で、本殿と拝殿が同じ日に登録された。境内をまとめて評価した結果である。
参拝
善覚稲荷神社は岡山県真庭市木山にある。神社であるから、境内の参拝は基本的に可能である。
本殿は社殿であり、内部に立ち入ることはできない。外から切妻造の形と四周の縁、吹寄の垂木を確かめることになる。
壁の二重張りと柱の使い分けは、縁の下や軒下をよく見ないと分かりにくい。外側の円柱は縁の側から確かめられる。
参拝時間や社務所の対応は変わることがあるため、訪問前に木山神社の案内で確認したい。
Q&A
- 善覚稲荷神社本殿はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 文化庁は年代を大正/1919とします。2017年(平成29年)10月27日に国の登録有形文化財に登録されました。員数は1棟、木造平屋建、銅板葺、建築面積12平方メートル、所有は宗教法人木山神社です。
- どのような構造ですか。
- 文化庁は「桁行四・〇メートル、梁間三・二メートル、切妻造銅板葺、平入で、四周に縁を廻らす。壁を二重に張り、柱は外側を円柱、内側を角柱とし、天井は格天井」と記します。小規模ながら四方に縁を巡らせています。
- 柱の使い分けは珍しいのですか。
- 壁を二重に張り、その外側を円柱、内側を角柱としています。円柱と角柱は格式や由来の異なる系統に属し、通常は建物全体で柱の形が揃うため、一つの建物の内外で使い分ける扱いは目を引きます。
- なぜ登録されたのですか。
- 文化庁は「設計は江川三郎八で、垂木を吹寄とするなど、境内の他の建物と共通する要素でまとめる、特色ある社殿建築」と記します。評価の要点は建物単体の意匠ではなく、境内の他の建物との共通性にあります。
- 拝殿も登録されていますか。
- はい。善覚稲荷神社拝殿も同じ2017年10月27日に登録されていますが、本殿とは別の物件です。拝殿の建築面積は44平方メートルで、本殿の12平方メートルとは規模が大きく異なります。
基本情報
| 名称 | 善覚稲荷神社本殿(ぜんかくいなりじんじゃほんでん) |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県真庭市木山字金谷平1265-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/善覚稲荷神社拝殿は別の物件 |
| 指定年 | 2017年(平成29年)10月27日 登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、銅板葺、建築面積12平方メートル。桁行4.0メートル、梁間3.2メートル、切妻造銅板葺、平入で4周に縁を廻らす。壁を2重に張り、柱は外側を円柱、内側を角柱とし、天井は格天井。設計は江川三郎八。1919年 |
| 所有者 | 宗教法人木山神社 |
| 公開状況 | 神社の社殿。境内の参拝は基本的に可能だが、内部に立ち入ることはできない |
参考文献
- 文化遺産オンライン 善覚稲荷神社本殿
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/275292
- 文化遺産オンライン 善覚稲荷神社拝殿
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/289893
- 木山神社 公式サイト
- https://kiyamajinjya.or.jp/
- 文化庁 登録有形文化財(建造物)の制度
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/
最終更新日: 2026.09.04