なごみの塔:竹富島の集落を見守り続ける小さな展望塔

沖縄県・八重山諸島の竹富島は、石垣島から高速船でわずか15分ほどの距離にある小さなサンゴ礁の島です。周囲約9キロメートルの平坦なこの島の集落の中心に、「なごみの塔」と呼ばれる小さなコンクリート造りの展望塔が建っています。

1953年(昭和28年)、西集落の住民たちが力を合わせて建立したこの塔は、2006年(平成18年)に国の登録有形文化財に登録されました。「なごみ」という名前には、「集落のすべての人が肩を寄せ合って仲良く暮らすように」という温かい願いが込められています。重要伝統的建造物群保存地区に選定された赤瓦の家並みを一望できるこの塔は、竹富島を訪れる人々にとって欠かすことのできないシンボルです。

なごみの塔の歴史

なごみの塔が建つ赤山(あかやま)は、古くから特別な場所でした。伝承によれば、平家の落人として竹富島に流れ着いた赤山王の居城跡であるとされ、見晴らし台としても使われていたといわれています。

1949年(昭和24年)、老朽化した放送台の建て直しを考えていた「いんのた村」の人々は、西集落有志で構成する一和会が購入した赤山丘の土地を譲り受け、ゴミ捨て場と化していた赤山丘の公園化に着手しました。集落の人々に憩いの場を提供するとともに、星見石や石馬、太鼓石も配置し、見事に公園として整備されました。

そして1953年(昭和28年)6月25日、西集落の住民が総出で建てたのが、なごみの塔です。建立当初は放送台として、塔の上からメガホンを使い、集落内に連絡事項を伝えるために活用されていました。やがて音響設備が整い放送台としての役割を終えた後も、島を訪れる多くの観光客が憩う展望台として、長きにわたり愛されてきました。

なぜ文化財に指定されたのか

なごみの塔は、2006年(平成18年)3月27日に国の登録有形文化財として登録されました。登録有形文化財制度は、築50年以上を経過した建造物のうち、歴史的・学術的・景観的に価値のあるものを保護するための制度です。

なごみの塔が文化財として評価された背景には、いくつかの重要な要素があります。まず、戦後間もない1953年に、離島の住民たちが自らの手で築き上げた鉄筋コンクリート造の構造物であるという歴史的意義です。地域の共同体精神と自助努力の象徴として、戦後復興期の沖縄の暮らしを伝える貴重な証でもあります。

さらに、重要伝統的建造物群保存地区に選定された竹富島の集落の中で、赤瓦の家並みを唯一俯瞰できる場所に建つという景観的な価値も高く評価されました。隆起サンゴ礁でできた平坦な島において、集落全体を見渡せる貴重な展望ポイントとしての文化的意義は極めて大きいのです。

建築の特徴

なごみの塔は鉄筋コンクリート造の展望塔で、塔自体の高さは約4.5メートルです。高さ約6メートルの赤山丘の上に建てられているため、歩道からの高さは約8.7メートルになります。隆起サンゴ礁でできた全体が平坦な竹富島において、最も高い場所のひとつです。

頂上の展望台までは8段の階段が設けられています。階段の幅は約45センチメートル、奥行きは約16センチメートル、段差は約35センチメートルと高く、斜度は約60度という急勾配です。このため、一度にひとりずつしか昇り降りすることができません。また、頂上の展望台部分も非常に狭く、大人2人分程度のスペースしかありません。

コンパクトな造りでありながらも、放送台と展望台という二つの機能を見事に兼ね備えた設計は、限られた資材と技術の中で最大限の効果を追求した先人たちの知恵と工夫を今に伝えています。

なごみの塔からの眺望 ― 生きた文化遺産のパノラマ

なごみの塔の最大の魅力は、かつて頂上から一望できた竹富島の集落の眺めです。重要伝統的建造物群保存地区に選定された集落には、赤瓦の屋根にシーサーを載せた伝統的な琉球建築の家々が立ち並び、サンゴの石垣にはブーゲンビリアが彩りを添え、白砂の小道が美しい幾何学模様を描いています。その向こうには、エメラルドグリーンからターコイズブルーへと移り変わる海が水平線まで広がっています。

現在は塔への登降は制限されていますが、赤山丘の上からでも集落の景観を十分に楽しむことができます。平坦な島にあって、わずかな高低差でも視界は大きく開け、地上からは見えない赤瓦の屋根並みの美しいパターンを感じることができるでしょう。

現在の状況:保存と活用の両立に向けて

2016年(平成28年)9月20日、老朽化による安全上の理由から、なごみの塔への登降が禁止されました。建立から60年以上が経過し、塩分を含む風雨や台風、強い紫外線にさらされてきたコンクリートには、ひび割れや剥落が生じていました。

2019年(令和元年)10月から保存修繕工事が行われ、2020年(令和2年)2月末に完了しました。工事では高圧洗浄、躯体の剥落や鉄筋の錆の補修、モルタルの修理、亀裂補修などが実施されたほか、階段や塔上部に手すりが追加され、階段下に門扉が設置されました。文化財であるため建て替えはできず、外観を保ちながらの補修が行われました。

修繕工事は完了しましたが、国や県は修繕後も不特定多数の利用は構造的に難しいとの見解を示しており、引き続き利用は制限されています。塔に負荷をかけない利用ルールの検討が続けられています。

なお、なごみの塔のすぐ隣にある土産物店の屋上が「あかやま展望台」として開放されており、100円で竹富島の赤瓦の家並みを360度見渡すことができます。なごみの塔に代わる展望スポットとして、多くの観光客に親しまれています。

赤山公園と周辺の見どころ

なごみの塔が建つ赤山公園には、ほかにもいくつかの見どころがあります。かつて星座の観測に使われたと伝えられる「星見石」、叩くと響く音がする「太鼓石」、そして石馬の像が園内に配置されています。

赤山公園を起点に、竹富島の主要な観光スポットは徒歩圏内に点在しています。白い砂浜と透明度の高い遠浅の海で知られるコンドイビーチまでは南西へ徒歩約10分。星の砂(有孔虫の殻)で有名なカイジ浜はさらに南にあります。1938年に建てられた登録有形文化財の西桟橋は、夕日の名所として人気を集めています。

集落内の散策も竹富島の大きな楽しみです。サンゴの石垣と赤瓦の屋根が続く白砂の道は、住民の方々によって毎朝掃き清められています。水牛車に揺られながら三線の音色とともに集落を巡る体験は、竹富島ならではの貴重な思い出になるでしょう。

竹富島へのアクセス

竹富島へは、石垣島の離島ターミナルから高速船で約10〜15分です。複数の船会社が1日に多数の便を運航しており、気軽にアクセスできます。竹富東港からは集落の中心まで徒歩約15分、または船の到着に合わせて運行されるシャトルバスが利用できます。

島内の移動にはレンタサイクルが最も便利です。港や集落内にレンタル店があり、島一周は自転車で約1時間ほどですが、のんびりと回るのがおすすめです。

大型のホテルはありませんが、伝統的な赤瓦の建物を活かした民宿やゲストハウスがいくつかあります。最終便のフェリーが出発した後の静寂な島時間を体験するなら、宿泊がおすすめです。

Q&A

Qなごみの塔には登ることができますか?
A最新の情報では、構造保全のため塔への登降は制限されています。2020年に修繕工事は完了しましたが、不特定多数の方の利用は構造上難しいとされ、引き続き利用制限が続いています。赤山公園内からは塔の外観を間近に見ることができ、丘の上からは集落の景色も楽しめます。すぐ隣の「あかやま展望台」では100円で赤瓦の家並みを一望できます。
Qなごみの塔や赤山公園に入場料はかかりますか?
Aなごみの塔および赤山公園の見学は無料です。隣接する「あかやま展望台」(土産物店の屋上)は100円の入場料がかかりますが、竹富島の集落を360度見渡せる絶好のスポットです。
Q竹富島を観光するのに何時間くらい必要ですか?
A主要なスポットを一通り巡るなら2〜3時間程度が目安です。レンタサイクルで集落散策、ビーチ訪問、水牛車体験などをゆっくり楽しむなら半日以上がおすすめです。最終便の後の静かな島の雰囲気を味わうなら、宿泊して過ごすのも素晴らしい体験です。
Q竹富島を訪れるのに最適な季節はいつですか?
A年間を通じて訪問可能ですが、3月から10月の温暖な時期が人気です。5月〜6月は梅雨、7月〜10月は台風シーズンにあたるため、天気予報の確認をおすすめします。12月〜2月は比較的穏やかな気候で観光客も少なく、静かに島を楽しめます。
Q石垣島から竹富島への行き方を教えてください。
A石垣島の離島ターミナルから高速船で約10〜15分です。安栄観光や八重山観光フェリーなどの複数の船会社が頻繁に運航しています。竹富東港に到着後、集落の中心部までは徒歩約15分、またはフェリーの到着に合わせて運行するシャトルバスで約5分です。

基本情報

名称 なごみの塔(なごみのとう)
所在地 沖縄県八重山郡竹富町字竹富(赤山公園内)
文化財指定 国登録有形文化財(2006年3月27日登録)
建立年 1953年(昭和28年)6月25日
構造 鉄筋コンクリート造 展望塔
塔の高さ 約4.5m(地上からの高さ約8.7m)
所有者 竹富島いんのた会
現在の状況 登降制限中(赤山公園内は自由に見学可能)
入場料 無料
アクセス 竹富東港から徒歩約15分/石垣島離島ターミナルから高速船で約10〜15分

参考文献

なごみの塔 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AA%E3%81%94%E3%81%BF%E3%81%AE%E5%A1%94
なごみの塔 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/170842
なごみの塔 - 竹富島ビジターセンター 竹富島ゆがふ館
https://taketomijima.jp/%E3%81%AA%E3%81%94%E3%81%BF%E3%81%AE%E5%A1%94/
竹富町観光協会 - なごみの塔について
https://painusima.com/9632/
なごみの塔 - たびらい
https://www.tabirai.net/sightseeing/column/0003140.aspx
なごみの塔 - たのしま(八重山諸島観光情報)
https://www.tanoshima.jp/spot/nagominotou

最終更新日: 2026.03.22

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