昭和10年指定 ― 富士山麓の隧道と軌を一にする洞

大根島第二熔岩隧道は、島根県松江市八束町の大根島にある溶岩洞窟で、昭和10年(1935年)6月7日に国の天然記念物に指定された。通称は竜渓洞。管理団体は松江市で、同年7月26日に指定されている。読みは「だいこんじまだいにようがんずいどう」。

文化庁の指定解説は文語体で書かれている。大根島のほぼ中央にあり、洞形は東南から西北に向かってほとんど一直線をなし、延長81.1メートルに及ぶ。中央部から北へ向けて支洞が1本分岐する。洞底はほぼ平坦で西北に緩く傾斜する。

解説はさらに細部を挙げる。洞底の熔岩面は縄状を呈し、両側に棚状の隆起がある。天井には短い熔岩鍾乳が懸垂する。そして最後に、これらは富士山麓の熔岩隧道とほとんど軌を一にする、と結ぶ。

この一文が指定の骨格である。富士山以外の場所に富士山麓と同じ特徴をもつ溶岩隧道があるという事実が、天然記念物とされた理由にあたる。

なぜ島根に溶岩洞があるのか

大根島は中海に浮かぶ周囲およそ12キロメートルの島で、火山島である。島のほぼ中央にある大塚山は標高42メートルにすぎないが、火口の跡にあたる。

溶岩隧道は、溶岩流の表面が先に冷えて固まり、内部のまだ流動性のある溶岩が流れ去ったあとに残る空洞である。表面が殻となり、中身が抜ける。洞底に縄状の熔岩面が残り、天井から熔岩鍾乳が垂れるのは、いずれも溶岩がまだ熱く流れていたときの形がそのまま固まったものである。

日本で天然記念物に指定された溶岩洞穴は多くなく、その大半が富士山麓の山梨・静岡両県に集中する。大根島にはこの第二熔岩隧道と、別に指定された第一熔岩隧道(幽鬼洞)がある。第一は特別天然記念物だが、落盤の危険があるため立入禁止となっている。

同じ島に2つの溶岩隧道があり、成因が異なるとされる点も見どころである。第一が溶岩流内のガス溜まりによるのに対し、第二は溶岩流の内部が流れ去って生じたと説明される。

洞窟内火口という報告

指定解説には書かれていないが、後年の調査で注目された点がある。

平成16年(2004年)に火山洞窟学会が実施した調査で、洞窟の内部に溶岩の流出孔、すなわち洞窟内の火口があると報告された。神溜りと呼ばれるドーム状の空間が、噴火の終息時に溶岩が盛り上がって固まった痕跡と考えられている。

この報告は昭和10年の指定理由には含まれない。文化庁の解説は洞形・洞底・天井の形状を挙げるにとどまる。指定後に価値が追加された事例として読むのが正確で、本稿もそれ以上には踏み込まない。

暗闇に適応した生き物

洞内には光が届かない。この環境に適応した生物が確認されている。

目が退化したヨコエビの仲間が生息する。またゴミムシの一種が知られ、この洞窟以外では見つかっておらず、確認された個体数もごくわずかとされる。

洞内の温度は年間を通じておよそ15度で安定する。外気の変化から切り離された環境が、こうした生物の生存を支えている。ガイドとともに入洞しても遭遇できるとは限らないが、洞窟が閉ざされた生態系であることは、足元と壁面の湿り気から実感できる。

見学 ― 施錠されておりガイドが要る

洞は常時施錠されている。見学にはガイドツアーへの参加が必要で、出雲国ジオガイドの会が案内を担当する。

定時ガイドは毎週土曜と日曜の午後2時から。所要はおよそ40分である。ガイド料は1人500円、中学生以下は無料で、1回の案内は最大15名まで。団体や平日の見学を希望する場合は事前に相談する。天候や予定により変更されることがあるため、訪問前に確認したい。

懐中電灯と長靴は無料で貸し出される。洞内は完全な暗闇で足元が滑るため、汚れてもよい服装で訪れたい。子ども用の長靴は用意がない場合があるので、家族での参加なら持参するのが確実である。

交通は松江市街から車で約30分、江島大橋を渡って大根島へ入る。所在は八束町寺津である。

Q&A

Q大根島第二熔岩隧道はいつ天然記念物に指定されましたか。
A昭和10年(1935年)6月7日です。管理団体は松江市で、同年7月26日に指定されました。通称は竜渓洞、読みは「だいこんじまだいにようがんずいどう」です。
Q大根島第二熔岩隧道の指定理由は何ですか。
A文化庁の解説は、洞形が東南から西北にほぼ一直線をなし延長81.1メートルに及ぶこと、中央部から北へ支洞が1本分岐すること、洞底の熔岩面が縄状で両側に棚状の隆起があること、天井に短い熔岩鍾乳が懸垂することを挙げ、これらが富士山麓の熔岩隧道とほとんど軌を一にすると結んでいます。
Q溶岩隧道はどうやってできるのですか。
A溶岩流の表面が先に冷えて固まり、内部のまだ流動性のある溶岩が流れ去ったあとに空洞が残ります。洞底の縄状の熔岩面も天井の熔岩鍾乳も、溶岩がまだ熱く流れていたときの形がそのまま固まったものです。
Q大根島第一熔岩隧道との違いは何ですか。
A第一熔岩隧道(幽鬼洞)は特別天然記念物ですが、落盤の危険があるため立入禁止です。成因も異なるとされ、第一が溶岩流内のガス溜まりによるのに対し、第二は溶岩流の内部が流れ去って生じたと説明されます。
Q大根島第二熔岩隧道は見学できますか。
A常時施錠されており、ガイドツアーへの参加が必要です。定時ガイドは毎週土曜と日曜の午後2時から、所要およそ40分。ガイド料は1人500円、中学生以下は無料で、1回最大15名です。懐中電灯と長靴は無料で貸し出されます。

基本情報

名称大根島第二熔岩隧道(だいこんじまだいにようがんずいどう)/通称 竜渓洞
所在地島根県松江市八束町寺津
指定区分天然記念物
指定年1935年(昭和10年)6月7日 指定/管理団体は松江市(同年7月26日)
員数1件
寸法延長81.1メートル。洞形は東南から西北へほぼ一直線、中央部から北へ支洞1本が分岐。洞底はほぼ平坦で西北に緩傾斜、熔岩面は縄状、両側に棚状の隆起。天井に短い熔岩鍾乳。洞内温度は年間およそ15度
所有者管理団体 松江市
公開状況常時施錠。ガイドツアーで見学可。定時ガイドは土曜と日曜の午後2時、所要およそ40分。ガイド料500円、中学生以下無料、定員は最大15名

参考文献

文化遺産オンライン 大根島第二熔岩隧道
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/210990
松江市 竜渓洞(大根島第二熔岩隧道)
https://www.city.matsue.lg.jp/soshikikarasagasu/bunkasportsbu_bunkazaika/rekishi_bunkazai/3/1/1/ryukeido.html
島根半島・宍道湖中海ジオパーク 竜渓洞ガイドのご案内
https://kunibiki-geopark.jp/
大根島観光協会 熔岩隧道
https://kankou-daikonshima.jp/tourist_info/lava_tunnels

最終更新日: 2026.09.02