延享元年の本殿 ― 大社造の現存最大例

出雲大社本殿は、島根県出雲市大社町大字杵築東にある延享元年(1744年)造営の神社建築で、明治33年(1900年)4月7日に重要文化財、昭和27年(1952年)3月29日に国宝に指定された。指定番号は00073、員数は1棟。文化庁の構造及び形式等の記載は「大社造、檜皮葺」の一行である。

大社造は日本最古の神社建築様式とされる形式で、高床式住居の特徴を色濃く残す。文化庁の解説は現本殿を「正方形平面・切妻造・妻入の大社造」と記し、規模の大きさ、高い床、太い部材を挙げて「相当に雄大である」と評する。現存する大社造の本殿としては最大規模にあたる。

高さは8丈、およそ24メートル。柱間は約10.9メートル四方である。伊勢神宮の神明造が直線的な輪郭をとるのに対し、大社造の屋根は緩やかに反り上がる。この対比は、両者を並べたときに最も分かりやすい。

田の字に並ぶ九本の柱と、西を向く御神座

内部は一般に公開されていないが、平面の構成は公表されている。九本の柱が正方形の平面に三列三行で立ち、空間を田の字型に区切る。その中心に立つ太柱が心御柱である。

心御柱と、正面から見て右側の側柱とのあいだは板壁になっており、この壁の奥に御内殿すなわち御神座が置かれる。社殿そのものは南を向くのに対し、大国主大神の御神座は西を向く。理由については、本殿の構造上の要請とする説と、西方を鎮護するためとする説が伝えられている。断定できる説明は今のところない。

御内殿の前室には板壁に接して御客座があり、天之常立神・宇麻志阿斯訶備比古遅神・神産巣日神・高御産巣日神・天之御中主神の五柱が祀られる。心御柱の近くには、大国主大神の御子神である和加布都努志命が祀られている。神座の配置そのものが、この建物の内部構造と分かちがたく結びついている。

発掘された巨大柱と、古代本殿の伝承

文化庁の解説は末尾にこう書く。史料や伝承によれば、古代にはさらに高大であった、と。

この一文の背景に、平成12年(2000年)から翌年にかけての境内発掘調査がある。3本の大木を鉄輪で束ねて1本とした柱の遺構が出土し、直径はおよそ3メートルに達した。出雲大社宮司家である千家国造家に伝わる古代本殿の平面図「金輪御造営差図」に描かれた柱の構成と一致する。

この差図は高さ16丈、およそ48メートルの本殿を伝える。発掘によって、その姿が単なる伝承ではない可能性が高まった。ただし48メートルの本殿が実際に建っていたことが証明されたわけではなく、文化庁の記述も「史料や伝承によれば」という留保を外していない。本稿もその線を踏み越えない。

出土した柱の遺構は、隣接する島根県立古代出雲歴史博物館で実物を見ることができる。差図の復元模型もあわせて展示されており、本殿を見たあとに立ち寄ると、いま目の前にある24メートルと、伝承の48メートルの距離が実感しやすい。

外から読む ― 八足門の前に立って

本殿は瑞垣・玉垣に囲まれ、通常の参拝では八足門の前までしか進めない。それでも読み取れるものは多い。

まず屋根の反り。檜皮葺の面が緩やかな曲線を描いて棟へ向かい、その先端から千木が交差して天へ伸びる。千木の長さは7メートルを超える。棟の上には鰹木が3本並び、銅板に覆われた表面が光を返す。

次に床の高さ。大社造は高床式住居の系譜に属し、床が地面から大きく持ち上げられている。八足門の前からでも、階段が長く伸びていることは確認できる。太い部材と高い床は、文化庁が雄大さの根拠として挙げている要素そのものである。

八足門の前の敷石には、発掘された巨大柱の位置を示す円が埋め込まれている。三つの円が寄り集まった形が、束ね柱の断面をそのまま地面に写している。見落としやすいので、門の正面に立ったら足元を確認したい。

本殿の周囲には摂末社や宝庫が並ぶ。これらは平成16年(2004年)7月6日に重要文化財となった別の指定で、本殿とは指定が異なる。楼門・八足門・玉垣・瑞垣などがそこに含まれる。

参拝

境内の参拝は無料である。御本殿エリアへの参拝時間は午前6時から午後7時まで、3月から10月は午後8時までが目安とされる。御札・御守・御朱印の授与所は午前8時30分から午後4時30分まで、本殿裏手の素鵞社エリアも午後4時30分に閉鎖される。時期や行事によって変わるため、訪問前に出雲大社公式サイトで確認したい。

本殿の内部は公開されていない。八足門より内側へは正式参拝の手続きが要る。宝物殿は有料で、料金と開館時間は公式サイトの案内による。

境内での撮影に一般的な制限はないが、瑞垣の内側や祈祷中については社務所に確認するのが無難である。車椅子での参拝には石畳のスロープが整備され、神社事務所で車椅子の貸し出しも行われている。

交通はJR出雲市駅から一畑バスで約25分、正門前下車。一畑電車の出雲大社前駅からは徒歩約10分である。出雲大社本殿を静かに見たい場合は開門直後の午前6時台が向く。旧暦10月の期間とゴールデンウィーク、年末年始は八足門の前に人が並ぶ。

Q&A

Q出雲大社本殿はいつ建てられ、いつ国宝に指定されましたか。
A現在の本殿は延享元年(1744年)の造営です。明治33年(1900年)4月7日に重要文化財となり、昭和27年(1952年)3月29日に国宝へ指定されました。指定番号00073、員数は1棟です。
Q出雲大社本殿の大社造とはどのような様式ですか。
A日本最古の神社建築様式とされる形式で、高床式住居の特徴を残します。文化庁は現本殿を「正方形平面・切妻造・妻入の大社造」と記載し、構造及び形式等の欄は「大社造、檜皮葺」の一行です。現存する大社造の本殿としては最大規模にあたります。
Q出雲大社本殿の御神座が西を向いているのはなぜですか。
A社殿は南を向きますが、御神座は西を向きます。理由は本殿の構造上の要請とする説と、西方を鎮護するためとする説が伝えられており、断定できる説明はありません。心御柱と右側の側柱のあいだの板壁の奥に御内殿が置かれる構成に由来します。
Q出雲大社本殿は古代には48メートルあったのですか。
A千家国造家に伝わる「金輪御造営差図」が高さ16丈、およそ48メートルの本殿を伝えます。平成12年から翌年の発掘で直径約3メートルの束ね柱の遺構が出土し、差図の柱構成と一致しました。ただし実在が証明されたわけではなく、文化庁も「史料や伝承によれば」と留保しています。
Q出雲大社本殿は見学できますか。参拝時間と料金は。
A境内の参拝は無料で、御本殿エリアは午前6時から午後7時まで、3月から10月は午後8時までが目安です。本殿の内部は公開されておらず、通常の参拝は八足門の前までとなります。授与所と素鵞社エリアは午後4時30分までです。

基本情報

名称出雲大社本殿(いずもたいしゃほんでん)
所在地島根県出雲市大社町大字杵築東
指定区分国宝(建造物)/指定番号00073/種別 近世以前・神社
指定年1900年(明治33年)4月7日 重要文化財/1952年(昭和27年)3月29日 国宝
員数1棟
寸法大社造、檜皮葺/正方形平面、切妻造、妻入/高さ約24メートル、柱間約10.9メートル四方/江戸中期、1744年
所有者出雲大社
公開状況境内参拝は無料。御本殿エリアは午前6時から午後7時(3月から10月は午後8時)が目安。本殿内部は非公開で、通常の参拝は八足門の前まで。授与所と素鵞社エリアは午後4時30分まで

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 出雲大社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2971
文化遺産オンライン 出雲大社本殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/146668
出雲大社 御本殿
https://izumooyashiro.or.jp/precinct/keidai-index/gohonden
出雲大社 公式サイト
https://izumooyashiro.or.jp/
島根県立古代出雲歴史博物館
https://www.izm.ed.jp/

最終更新日: 2026.08.31