御本殿の北西、木立の奥に建つ木造二階建て

出雲大社彰古館は、島根県出雲市大社町杵築東の出雲大社境内北西隅に建つ木造二階建ての宝物館で、大正3年(1914年)の造営、平成27年(2015年)11月17日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。読みは「いずもおおやしろしょうこかん」。

ここまで足を延ばす参拝者は多くない。通常の参拝は八足門の前で終わる。そこから時計回りに御本殿の裏手へ回り、神在月に全国の神々が滞在するとされる十九社の細長い社殿の前を過ぎ、素鵞社の脇を抜けていくと、境内の空気が一段静かになる区画に出る。彰古館は、その木立の中に建っている。銅板葺きの屋根はすでに緑青をまとっている。

建築面積は165平方メートル。屋根は入母屋造で、御本殿の厚い檜皮葺とは対照的に銅板で葺かれている。基壇は亀甲積、つまり石を六角形に組んだ積み方で、名前の通り亀の甲羅の模様に見える。

控えめな建物が登録された理由

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁の解説文は、この建物について木割の細部にまで踏み込んでいる。正面中央に一間切妻造の玄関を設けること。二階は桁行・梁間ともに側廻り一間を逓減させ、上に行くほど平面を絞ること。その二階に縁高欄を廻すこと。そして良質のスギ材を用い、施工も丁寧で、境内空間と調和していること。

並べてみると、評価の性格が見えてくる。派手な要素はひとつもない。前に立つ御本殿に対して控えた姿を保つこと、その加減の巧みさが登録の理由になっている。

大正3年前後の出雲大社は、周辺の整備が続いた時期にあたる。明治45年(1912年)に国鉄大社線が開通し、大正3年に宇迦橋が架けられ、翌大正4年には神門通りの南端に高さ23メートルの鉄筋コンクリート造の大鳥居が建った。鉄道で訪れる参拝者を受け止める体制が、数年のうちに整えられていった。彰古館もその一連の動きの中にあり、平成27年には宇迦橋大鳥居と同じ日に登録されている。片方は当時最新の材料で、片方は数百年来の技法を受け継ぐ大工の手で。同じ時期の出雲大社が持っていた二つの顔である。

造営当初、この建物は出雲大社全体の宝物館だった。その役割はすでに移っている。現在の主要な収蔵・展示は銅鳥居脇の宝物殿「神祜殿」が担っており、平成29年(2017年)のリニューアルで、平成12年から13年(2000年から2001年)にかけて境内から出土した心御柱が公開された。直径1.35メートルほどのスギの大木を3本束ねて1本の柱とした構造で、高さ48メートルに達したとされる中世の本殿の存在を裏づける資料とされている。

展示の中身と、拝観をめぐる現状

彰古館には、神祜殿とは性格の違う資料が残されている。一階に並ぶのは大小のだいこく様と恵比寿様の木像。御祭神の大国主大神は、神仏習合の時代に七福神の大黒天と重ねて信仰され、「大国」と「大黒」の音が通じることもあって像容が交じり合った。その名残がここに集まっている。二階は出雲大社の信仰に関する資料や古文書の展示にあてられている。神楽で用いる笙や篳篥といった楽器、30分の1の縮尺で作られた社殿の模型も収められている。

ただし、内部の拝観は長く限定されている。出雲観光協会の案内では、拝観料200円、開館時間8時30分から16時30分(入館は16時まで)。開館期間は土曜・日曜・祝日のほか、大祭礼期間(5月14日から16日)、神在祭期間(旧暦10月11日から17日)、正月(おおむね元日から5日)、ゴールデンウィークなどの大型連休に限られている。

そしてこの案内には現在「閉館中」の注記が付いている。館内に入ることを目的に訪れるのであれば、出雲大社または出雲観光協会に直前で確認しておきたい。上記の開館日程は通常時の運用を示すもので、今の状況をそのまま表しているわけではない。

外観は境内の開いている時間帯であればいつでも見られる。建物の周囲を歩くのに料金はかからず、外からの撮影も自由である。午後遅い時間に行くと、低い光が二階の縁高欄の連子と杉柱の木目を拾い、逓減させた上層の輪郭がはっきりする。

勢溜の二の鳥居からは、松の参道を下り御本殿を回り込んで徒歩10分ほど。JR出雲市駅からは一畑バスで正門前まで約25分、一畑電車なら電鉄出雲市駅から川跡乗り換えで出雲大社前駅へ向かい、駅から徒歩10分ほどである。

出雲の収蔵品をまとめて見る計画を立てている場合には、もうひとつ確認しておきたいことがある。境内のすぐ東に隣接する島根県立古代出雲歴史博物館は、耐震改修のため令和7年(2025年)4月から休館しており、令和8年(2026年)10月1日のリニューアルオープンが予定されている。

Q&A

Q出雲大社彰古館の中に入ることはできますか。拝観料はいくらですか。
A通常の拝観料は200円、開館時間は8時30分から16時30分(入館は16時まで)で、土曜・日曜・祝日と大祭礼・神在祭・正月・大型連休の期間に限って開かれます。ただし出雲観光協会の案内には現在「閉館中」と記されているため、入館を目的とする場合は事前に確認してください。外観の見学は自由です。
Q出雲大社彰古館は境内のどこにありますか。
A境内の北西隅、御本殿の裏手にあたります。八足門から時計回りに御本殿を回り込み、十九社と素鵞社の前を通り過ぎた先です。勢溜の二の鳥居からは徒歩10分ほどです。
Q出雲大社彰古館には何が展示されていますか。
A一階には大小のだいこく様と恵比寿様の木像が並びます。御祭神の大国主大神が大黒天と習合した信仰の名残です。二階は出雲大社の信仰に関する資料や古文書の展示にあてられ、神楽用の笙や篳篥といった楽器、30分の1の社殿模型も収められています。
Q出雲大社彰古館の建築上の見どころはどこですか。
A亀甲積の基壇に建つ木造二階建てで、入母屋造の屋根を銅板で葺いています。正面中央の一間切妻造の玄関、二階を桁行・梁間とも側廻り一間だけ逓減させた構成、その二階を廻る縁高欄が特徴です。文化庁の解説文は、良質のスギ材と丁寧な施工を評価しています。
Q出雲大社彰古館と宝物殿「神祜殿」は同じ建物ですか。
A別の建物です。神祜殿は銅鳥居の脇にあり、出土した心御柱をはじめ主要な宝物を展示しています。彰古館は大正3年に造営された以前の宝物館で、境内北西の奥に建ち、現在は規模の小さい別系統の資料を収めています。

基本情報

名称出雲大社彰古館(いずもおおやしろしょうこかん)
所在地島根県出雲市大社町杵築東195
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 32-0174
指定年平成27年(2015年)11月17日登録
員数1棟
寸法木造2階建、銅板葺、建築面積165平方メートル
所有者宗教法人出雲大社
公開状況外観は常時見学可。内部は通常200円、8時30分から16時30分、土日祝と祭礼期間のみ。現在は閉館中と案内されている

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)/出雲大社彰古館
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010887
文化遺産オンライン(文化庁)/出雲大社彰古館
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/266042
出雲観光ガイド(一般社団法人出雲観光協会)/出雲大社・境内のご案内
https://izumo-kankou.gr.jp/676
出雲大社 公式サイト
https://izumooyashiro.or.jp/
しまね観光ナビ(島根県)/島根県立古代出雲歴史博物館 休館のお知らせ
https://www.kankou-shimane.com/destination/20313

最終更新日: 2026.08.21