1基の礼盤 ― 1924年に重要文化財
黒漆螺鈿礼盤は、静岡県熱海市桃山町26-2のMOA美術館が保管する鎌倉時代の工芸品で、1924年(大正13年)4月15日に重要文化財に指定された。国宝ではなく、重要文化財としての指定である。所有は世界救世教である。
員数は1基である。明王院五重塔、水晶五輪塔、鉄宝塔と同じ数え方になる。あちらは塔、本件は台である。
礼盤は仏を礼拝するための台をいう。静岡県は、猫足形の脚と全体のプロポーションが安定感を感じさせ、礼盤、つまり仏を礼拝するための台としてふさわしい、と記す。
法量が「縦・横」で一つの数値にまとめられる
寸法の書き方が、他と違っている。
静岡県は法量を、(縦・横)64.9×(高さ)17.0センチメートルとする。
縦と横が括弧でくくられ、64.9という一つの数値が当てられている。二つの向きに同じ値が示されていることになる。
紫地葵紋付葵葉文様辻が花染羽織では、前幅と後幅がともに36.5センチメートル、袖幅と袖口がともに22.0センチメートルと、同じ値が別々に書かれていた。
本件は二つの向きを一つにまとめて書いている。書き方そのものが違う。
金銅密教法具では、金剛盤に盤径縦21.8、横28.6と別の値が示されていた。あちらは縦と横が違う。
用途にふさわしいことが、評価になる
何のための道具かに照らして、良し悪しが述べられる。
静岡県は、猫足形の脚と全体のプロポーションが安定感を感じさせ、礼盤、つまり仏を礼拝するための台としてふさわしい、と結ぶ。
ふさわしい、という語が使われる。形が用途に合っていることが評価の理由になっている。
明王院本堂では基準、大笹原神社本殿ではもっとも傑作の一、専修寺御影堂では指標とされた。いずれも他との比較である。
北口本宮冨士浅間神社では地方的特色、鳴無神社では文化財の少ない地方という周囲の事情が理由になった。
本件は物そのものと、その使われ方との関係が理由になっている。評価の言い方として6型目にあたる。
記録の詳しさが、機関によって大きく違う
同じ物について、二つの記録の分量が釣り合わない。
文化庁の解説文は、鎌倉時代の作品。の一文である。寸法や品質・形状の欄も記載がない。
一方、静岡県は法量、螺鈿の技法、文様、脚の形、評価まで書いている。
螺鈿については、漆に貝の薄片を埋め込み、さらに漆を研ぎだして作られる、とする。貝は夜光貝やあわびなどを使い、虹色の真珠光の輝きが、漆の面に模様となって現れる、と続く。
鎏金獣帯鏡でも、文化庁の解説は古墳時代の資料。の一文だった。あちらは他に手がかりがなかった。
本件は県の記録が補っている。出典は静岡県教育委員会が編集発行した写真集とされる。
鑑賞
保管はMOA美術館、所有は世界救世教である。鎏金獣帯鏡では保管と所有がどちらも五島美術館だった。本件は分かれている。
公開についても欄が分かれる。静岡県は一般公開有無を有とし、公開情報を常設展示ではない、とする。
見られる場合があるが、いつでも出ているわけではない、という区別になる。
装飾は、側面と脚に、厚手の螺鈿で蓮華唐草を表し、さらに毛彫りの唐草文様を彫った金属板で飾る、とされる。
螺鈿と金属板の二つで飾られている。宝相華蒔絵経箱では金蒔と銀蒔、沃懸地獅子文毛抜形太刀では鍍金と鍍銀が使い分けられていた。本件は素材そのものが貝と金属に分かれる。訪問前に展示の予定を確認したい。
Q&A
- 黒漆螺鈿礼盤はいつ指定されましたか。
- 1924年(大正13年)4月15日に重要文化財へ指定されました。国宝ではなく重要文化財で、員数は1基、所有は世界救世教です。
- 礼盤とは何ですか。
- 仏を礼拝するための台です。静岡県は「猫足形の脚と全体のプロポーションが安定感を感じさせ、礼盤、つまり仏を礼拝するための台としてふさわしい」と記します。
- 寸法はどのくらいですか。
- 静岡県は「(縦・横)64.9×(高さ)17.0cm」とします。縦と横が括弧でくくられ、一つの数値にまとめられています。
- 螺鈿とはどのような技法ですか。
- 静岡県は「漆に貝の薄片を埋め込み、さらに漆を研ぎだして作られる。貝は夜光貝やあわびなどを使い、虹色の真珠光の輝きが、漆の面に模様となって現れる」と記します。
- 見ることはできますか。
- 静岡県は一般公開有無を「有」とし、公開情報を「常設展示ではない」とします。見られる場合はありますが、いつでも出ているわけではありません。
基本情報
| 名称 | 黒漆螺鈿礼盤(こくしつらでんらいばん)/礼盤は仏を礼拝するための台 |
|---|---|
| 所在地 | MOA美術館(静岡県熱海市桃山町26-2) |
| 指定区分 | 重要文化財(美術品・工芸品)/国宝ではない |
| 指定年 | 1924年(大正13年)4月15日 重要文化財 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 静岡県は法量を(縦・横)64.9×(高さ)17.0センチメートルとする。側面と脚に厚手の螺鈿で蓮華唐草を表し、毛彫りの唐草文様を彫った金属板で飾る。脚は猫足形。文化庁の寸法・品質形状の欄は空で、解説文は「鎌倉時代の作品。」の一文 |
| 所有者 | 世界救世教 |
| 公開状況 | 静岡県は一般公開有無を「有」、公開情報を「常設展示ではない」とする |
参考文献
- しずおか文化財ナビ 黒漆螺鈿礼盤
- https://www.pref.shizuoka.jp/kankosports/bunkageijutsu/bunkazai/1002825/1041003/1041884/1004983/1021348.html
- 文化遺産オンライン 黒漆螺鈿礼盤
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/197503
- MOA美術館 公式サイト
- https://www.moaart.or.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.06