1976年に重要文化財

紙本墨画拾得図は、東京都台東区上野公園13-9にある水墨画で、1976年(昭和51年)6月5日に重要文化財に指定された。所有は財団法人常盤山文庫である。

所在地の東京都台東区上野公園13-9は東京国立博物館の住所である。所有は財団法人で、保管は博物館という形になる。

紙本著色寝覚物語絵巻では会社が所有し美術館が保管していた。所有と保管が分かれる例が、また現れている。

「拾得図」であって「寒山拾得図」ではない

この物件の名称に注意したい。紙本墨画拾得図である。

旧来の記述には「紙本墨画寒山拾得図」とするものが見られる。寒山と拾得の二人を描いた作品の名である。本件の名称に寒山は入っていない。

寒山と拾得は、しばしば一対で描かれる。二人を各幅に描いて2幅とする作品も多い。ただし本件の名称は拾得図であり、拾得のみを扱う。

絹本著色当麻曼荼羅縁起では、名称の頭の紙本と絹本、末尾の縁起と図を両方見なければ物件を取り違えると記した。本件は名称の途中に語が入るか入らないかで別の物件になる例である。

名称は縮めても伸ばしてもいけない。記録どおりに扱う必要がある。

同じ主題に、登録美術品の物件がある

文化遺産オンラインには、紙本墨画寒山拾得図という別の物件がある。伝可翁、室町時代の14世紀、掛幅装、各88.7センチメートル×34.0センチメートル、2幅である。

この物件は重要文化財ではない。登録年月日2017年1月25日、区分は登録美術品である。

登録美術品は、重要文化財や国宝とは別の制度にあたる。美術品の公開を促すために設けられた登録の仕組みで、指定ではなく登録である。

登録有形文化財が届出に基づく登録であるのと同じく、登録美術品も指定とは性格が違う。同じ主題の作品が、異なる制度のもとに並んでいることになる。

絹本著色不動明王像では国・県・市という主体の違いがあった。本件の周辺には、制度そのものの違いがある。

拾得図は複数知られている

登録美術品の記録には、拾得図についての記述がある。

可翁筆とされる寒山拾得図は複数知られるが、本作の拾得図は、国宝指定本やフーリア美術館所蔵本の寒山図と近似する図様である、とある。

可翁の名で伝わる作品が複数あり、図様が近いものが日本と海外に分かれて所蔵されていることになる。

同記録は可翁についても述べる。可翁(生没年不詳)は14世紀前期から中期頃に活躍したと推定される画人で、我が国の初期水墨画を代表する存在である、とある。

続けて、その実体は不明で、禅僧・可翁宗然であるという説や、名の一部に「賀」を用いる詫磨派の絵師であるとの説などがある、と記される。実体が不明であることが、はっきり書かれている。

鑑賞

所在は東京都台東区上野公園13-9で、所有は財団法人常盤山文庫である。館に寄託された作品であり、常設で公開される性格のものではない。

紙に描かれたものは光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。

所有と保管が分かれているため、公開の判断には両者が関わる。

展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。

Q&A

Q紙本墨画拾得図はいつ指定されましたか。
A1976年(昭和51年)6月5日に重要文化財に指定されました。所在は東京都台東区上野公園13-9、所有は財団法人常盤山文庫です。
Q寒山拾得図とは違うのですか。
A違います。本件の名称は拾得図で、寒山は入っていません。寒山と拾得は一対で描かれることが多く、二人を各幅に描いて2幅とする作品もありますが、本件は拾得のみを扱う名称です。
Q同じ主題の別の物件はありますか。
Aあります。紙本墨画寒山拾得図という物件が、伝可翁、室町時代の14世紀、2幅として記録されています。ただしこちらは重要文化財ではなく、2017年1月25日に登録された登録美術品です。
Q登録美術品とは何ですか。
A重要文化財や国宝とは別の制度で、美術品の公開を促すために設けられた登録の仕組みです。指定ではなく登録であり、登録有形文化財と同じく指定とは性格が違います。
Q作者は分かっていますか。
A登録美術品の記録は可翁について「その実体は不明で、禅僧・可翁宗然であるという説や、名の一部に『賀』を用いる詫磨派の絵師であるとの説などがある」と記します。実体が不明であることがはっきり書かれています。

基本情報

名称紙本墨画拾得図(しほんぼくがじっとくず)
所在地東京都台東区上野公園13-9
指定区分重要文化財/同じ主題の紙本墨画寒山拾得図は登録美術品で別の制度
指定年1976年(昭和51年)6月5日 重要文化財
員数文化庁の記録で確認できなかったため記していない
寸法文化庁の記録で確認できなかったため記していない。紙本墨画は紙に墨だけで描いたものをいう
所有者財団法人常盤山文庫
公開状況館に寄託された作品で、常設の公開ではない。紙に描かれたものは光に弱く公開期間が限られる

参考文献

文化遺産オンライン 紙本墨画寒山拾得図(登録美術品)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/300389
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/
文化庁 登録美術品制度
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/toroku_bijutsuhin/
東京国立博物館 公式サイト
https://www.tnm.jp/

最終更新日: 2026.09.05