展示品でもある博物館
旧東京帝室博物館本館は、東京都台東区上野公園にある昭和12年(1937年)竣工の博物館建築で、平成13年(2001年)6月15日に国の重要文化財に指定された。訪れる人の多くは別の名前でこの建物を知っている。東京国立博物館本館、通称「日本ギャラリー」である。正面の階段を上がる人のほとんどは、建物ではなく中身を見に来ている。
先代の本館は赤煉瓦造だった。ジョサイア・コンドルの設計で明治14年(1881年)に完成したが、大正12年(1923年)の関東大震災で使用に耐えないほど損壊する。復興の資金と体制が整うまでには時間がかかり、上棟は昭和10年(1935年)4月1日、竣工は昭和12年(1937年)11月6日となった。
設計は公募によって決まった。「東京帝室博物館建築設計図案懸賞募集」である。応募条件には「日本趣味を基調とした東洋式」が掲げられ、この一行がその後のすべてを規定した。一等に当選したのが渡辺仁案で、これを原案として宮内省内匠寮が実施設計と工事にあたっている。
瓦屋根の下の鉄筋コンクリート
渡辺仁が示した形は、一般に帝冠様式と呼ばれる。鉄骨鉄筋コンクリート造という近代的な躯体に、和風の重い瓦屋根を載せる。冠をかぶせるような構成からその名がある。昭和10年代の官公庁建築に広く見られた手法で、この趣味を生んだ時代の政治とも切り離せないため、建築史上の評価はいまも一様ではない。文化庁はその論争には踏み込まず、達成度で評価している。
指定基準として挙げられているのは二つ、「(一)意匠的に優秀なもの」と「(三)歴史的価値の高いもの」である。解説文は、和風を基調とした大建築として意匠的な完成度が高く、昭和初期の日本の近代建築の到達点を示す作品のひとつだと述べる。もうひとつの理由は様式と関係がない。展示品の保護と鑑賞のために備えた採光や空気調和などの設備が当時最新の技術水準を示しており、その点にも歴史的意義が認められる、というものである。
数字は大きい。鉄骨鉄筋コンクリート造、建築面積6,601.8平方メートル、地上2階地下2階、本瓦葺、正面玄関ポーチ付。上から見た平面は中庭をふたつ設けた「日の字」型で、正面中央の前方に車寄が張り出す。
なお、文化庁データベースの所有者欄は「独立行政法人国立博物館」となっている。同法人は平成19年(2007年)の再編で独立行政法人国立文化財機構となっており、データベースの記載は指定当時の名称である。
中身を見ながら建物を見る
玄関を入ったら、最初の展示室へ折れる前に足を止めてほしい。ホールの中央に大階段が立ち上がり、途中で左右に分かれて折り返す。展示室はその階段を囲むように、両階ともぐるりと配置されている。全部で26室あるが、時期によっては閉鎖や転用で入れない部屋もある。2階を順に歩けば「日本美術の流れ」の構成をたどることになり、仏教の美術、茶の美術、武士の装い、能と歌舞伎といった小テーマが続く。1階は素材や分野ごとの展示になっている。
東博コレクション展(平常展)では個人利用にかぎって撮影ができる。ただし所蔵者の意向で撮影禁止マークの付いた作品は対象外で、フラッシュ、追加照明、一脚・三脚、自撮り棒はいずれも使えない。特別展会場は原則として撮影禁止である。結果として、いちばん確実な被写体は建築そのものになる。大階段、格天井、扉の金物あたりが狙い目だろう。
東博コレクション展の観覧料は一般1,000円、大学生500円。高校生以下および満18歳未満、満70歳以上は無料である。開館時間は午前9時30分から午後5時まで、金曜・土曜は午後8時まで延長され、入館は閉館の30分前まで。休館日は月曜日で、月曜日が祝日または休日の場合は開館し翌平日が休みになる。本館の展示室は環境整備のため数か月単位で閉室することがあるので、目当ての部屋があるなら公式サイトの閉室情報を先に見ておきたい。
JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口から徒歩10分。東京メトロ上野駅や京成上野駅からは15分ほどかかる。来館者用の駐車場はない。建物は上野公園の中央軸の突き当たりに建つので、噴水広場を抜けて正面から近づく道筋がいちばん形をつかみやすい。屋根の輪郭は、離れて見るほどよく読める。
Q&A
- 旧東京帝室博物館本館は見学できますか。観覧料と開館時間は。
- 東京国立博物館本館として公開されています。東博コレクション展の観覧料は一般1,000円、大学生500円で、高校生以下・満18歳未満・満70歳以上は無料です。開館時間は午前9時30分から午後5時まで(金曜・土曜は午後8時まで)、入館は閉館の30分前まで。月曜日は休館です。
- 旧東京帝室博物館本館と東京国立博物館本館は同じ建物ですか。
- 同じ建物です。平成13年(2001年)の重要文化財指定は「旧東京帝室博物館本館」という歴史的名称で行われており、博物館側は館内表示や刊行物で「本館(日本ギャラリー)」と呼んでいます。
- 旧東京帝室博物館本館の「帝冠様式」とはどういう意味ですか。
- 近代的な鉄筋コンクリートの躯体に、和風の瓦屋根を冠のように載せる昭和10年代の建築手法を指す呼び名です。この建物の設計競技では「日本趣味を基調とした東洋式」が条件とされ、一等当選した渡辺仁案は鉄骨鉄筋コンクリート造に本瓦葺の屋根を載せる形でこれに応えました。
- 旧東京帝室博物館本館の館内で写真を撮ってもよいですか。
- 東博コレクション展(平常展)では個人利用にかぎって撮影できます。撮影禁止マークのある作品は除きます。フラッシュ、追加照明、一脚・三脚、自撮り棒は使用できず、館内でのライブ配信も控えるよう求められています。特別展会場は原則として撮影禁止です。
- 旧東京帝室博物館本館へは上野駅からどう行けばよいですか。
- JR上野駅公園口または鶯谷駅南口から徒歩約10分です。東京メトロ銀座線・日比谷線の上野駅、千代田線根津駅、京成上野駅からはいずれも徒歩15分ほど。来館者用の駐車場はありません。
基本情報
| 名称 | 旧東京帝室博物館本館 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都台東区上野公園13番9号 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) 指定番号02393 基準(一)意匠的に優秀なもの/(三)歴史的価値の高いもの |
| 指定年 | 平成13年(2001年)6月15日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄骨鉄筋コンクリート造、建築面積6,601.8平方メートル、二階建、地下二階、本瓦葺、正面玄関ポーチ付 |
| 所有者 | 文化庁データベースの記載は独立行政法人国立博物館(現在は独立行政法人国立文化財機構) |
| 公開状況 | 東京国立博物館本館として公開。午前9時30分から午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)。一般1,000円。月曜日休館 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 旧東京帝室博物館本館
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3699
- 文化遺産オンライン — 旧東京帝室博物館本館
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/187846
- 東京国立博物館 — 交通・料金・開館時間
- https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=113
- 東京国立博物館 — お客様へのお願い
- https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=127
- 東京国立博物館 — 館の歴史
- https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=143
最終更新日: 2026.08.22