仁治2年再建の社殿 ― 国宝6棟と重要文化財6棟

厳島神社は、広島県廿日市市宮島町にある神社で、その建造物12棟が明治32年(1899年)4月5日に重要文化財に指定され、うち6棟が昭和27年(1952年)3月29日に国宝に指定された。所有は厳島神社である。

国宝6棟は、本社の本殿・幣殿・拝殿、本社祓殿、摂社客神社の本殿・幣殿・拝殿、摂社客神社祓殿、東廻廊、西廻廊である。重要文化財6棟は朝坐屋、反橋、長橋、揚水橋、能舞台などからなる。附として玉垣、左右内侍橋、高舞台、平舞台、左右楽房、左右門客神社本殿、棟札4枚が指定されている。

文化庁の解説は社殿の性格を簡潔に示す。古来より神聖視された宮島にあり、海上鎮護の神として崇敬された。現在は仁治2年(1241年)再建の社殿が基本であるが、平清盛の厚い庇護を受けて整えられた平安末期の構成を踏襲している。北の入り江に建ち、南奥の本社本殿と東の客社本殿は両流造形式で、拝殿や祓殿などの諸建築を回廊で連続した景観は、寝殿造の大邸宅を思わせる、と。

神社は平成8年(1996年)に世界遺産「厳島神社」として登録された。登録範囲には社殿と、背後の弥山原始林を含む区域が含まれる。

両流造と回廊 ― 寝殿造を思わせる構成

文化庁の解説が挙げる二つの特徴を順に見る。

両流造とは、屋根の前後両方を長く伸ばした形式をいう。通常の流造は正面側だけを伸ばすが、両流造は背面側も同じように伸ばして左右対称に近い断面をとる。本社本殿は桁行が正面八間、背面九間、梁間四間、一重、檜皮葺。摂社客神社本殿は桁行五間、梁間四間、一重、両流造、檜皮葺である。

回廊は、本社と客神社と陸をつなぐ。陸に近い方から本殿・幣殿・拝殿・祓殿が一直線に並び、さらに海側に高舞台と平舞台、左右の楽房が出る。この一群を東西の廻廊が抱えるように囲み、途中に摂社客神社が廻廊にまたがって建つ。

文化庁が「寝殿造の大邸宅を思わせる」と書くのは、この配置についてである。寝殿造は平安時代の貴族住宅の形式で、中央の寝殿から左右に対屋を出し、渡殿で結んで池に面する。厳島神社では池が海に、渡殿が回廊に置き換わっている。社殿の構成が住宅の形式を借りている点が、この神社の建築的な特徴になっている。

年代 ― 仁治2年と元亀2年

指定解説は「現在は仁治2年(1241年)再建の社殿が基本」と記すが、すべての棟が同じ年ではない。

平安末期、安芸国守に任じられた平清盛の援助を受け、神主佐伯景弘によって社殿が造営された。その社殿は承元元年(1207年)と貞応2年(1223年)の火災に遭い、貞応の火災のあと仁治2年に再建された。本社の幣殿・拝殿・祓殿、客神社の本殿・幣殿・拝殿・祓殿はこのときの建物である。

本社本殿だけが新しい。棟札から元亀2年(1571年)の再建と判明する。この建て替えは火災によるものではない。永禄12年(1569年)、毛利元就と対立した備後の和智兄弟が本殿に立て籠もって殺害される事件があり、社殿が血で穢れたとして建て替えられたものである。

したがって国宝6棟のうち、本社本殿は1571年、他は1241年を基本とする。中世の再建だが、規模や様式は平安時代末期のものを引き継いでいるとみなされている。文化庁が「平安末期の構成を踏襲している」と書くのは、建物の年代ではなく構成についての評価である。

12棟で一件である理由

本社本殿だけを見れば両流造の本殿である。東廻廊だけを見れば海上の廊下である。12棟を並べて初めて、入り江の水面に社殿群を配するという構想が読み取れる。

回廊が国宝に含まれている点が、その構想を示している。回廊は建物と建物をつなぐ通路にすぎないが、この神社では回廊そのものが景観を作る。文化庁が「諸建築を回廊で連続した景観」と書くように、連続していることが価値の中心にある。

附指定にも同じことがいえる。高舞台、平舞台、左右楽房、左右門客神社本殿は、それぞれ独立した建物でありながら附として扱われる。海側へ張り出す舞台と楽房がなければ、本社から海へ向かう軸が成立しない。

国宝が6棟に絞られたのは、その6棟が仁治2年の再建に由来する中核だからである。反橋や能舞台は後世の建立で、重要文化財にとどまる。

参拝

昇殿参拝は午前6時30分から午後6時まで(時期により午後5時または午後5時30分まで)。昇殿料は大人300円、高校生200円、小中学生100円。宝物館との共通券もある。

潮位によって見え方が変わる。満潮時には社殿が水上に浮かび、干潮時には大鳥居の足元まで歩いて近づける。どちらを見たいかで訪問時刻が決まるので、宮島観光協会が公開する潮位表を事前に確認したい。大鳥居まで歩けるのは潮位がおおむね100センチメートル以下のときである。

回廊は板張りで、板と板の間に隙間がある。高潮時に床下から水が抜けるための構造で、雨天時は滑りやすい。歩きやすい靴で訪れてほしい。

交通はJR山陽本線の宮島口駅からフェリーで約10分、宮島桟橋から徒歩約12分。フェリーはJR西日本宮島フェリーと宮島松大汽船の2社が運航する。宮島訪問税が別途かかる。

Q&A

Q厳島神社の社殿はどのように指定されていますか。
A12棟が明治32年(1899年)4月5日に重要文化財に指定され、うち6棟が昭和27年(1952年)3月29日に国宝に指定されました。国宝は本社の本殿・幣殿・拝殿、本社祓殿、摂社客神社の本殿・幣殿・拝殿、同祓殿、東廻廊、西廻廊です。平成8年に世界遺産に登録されました。
Q厳島神社の社殿はいつ建てられたものですか。
A承元元年(1207年)と貞応2年(1223年)の火災のあと、仁治2年(1241年)に再建されたものが基本です。ただし本社本殿だけは元亀2年(1571年)の再建で、棟札から判明します。永禄12年に本殿で殺害事件があり、血で穢れたとして建て替えられました。
Q両流造とは何ですか。
A屋根の前後両方を長く伸ばした形式です。通常の流造は正面側だけを伸ばしますが、両流造は背面側も同じように伸ばします。厳島神社では本社本殿と摂社客神社本殿がこの形式で、文化庁の解説も両者を並べて挙げています。
Qなぜ回廊まで国宝なのですか。
A回廊そのものが景観を作っているためです。文化庁は「拝殿や祓殿などの諸建築を回廊で連続した景観は、寝殿造の大邸宅を思わせる」と評しており、建物が連続していることが価値の中心にあります。高舞台・平舞台・左右楽房は附として指定されています。
Q厳島神社の昇殿料と時間は。潮位はどう確認しますか。
A昇殿参拝は午前6時30分からで、閉門時刻は時期により異なります。昇殿料は大人300円、高校生200円、小中学生100円。満潮時は社殿が水上に浮かび、干潮時は大鳥居まで歩けます。潮位表を宮島観光協会のサイトで事前に確認してください。

基本情報

名称厳島神社(いつくしまじんじゃ)
所在地広島県廿日市市宮島町1-1
指定区分国宝(本社本殿ほか6棟)、重要文化財(朝坐屋・反橋・長橋・揚水橋・能舞台など6棟)/世界遺産「厳島神社」
指定年1899年(明治32年)4月5日 12棟を重要文化財に指定/1952年(昭和27年)3月29日 6棟を国宝に指定
員数12棟/附 玉垣、左右内侍橋、高舞台、平舞台、左右楽房、左右門客神社本殿、棟札4枚
寸法本社本殿 桁行正面8間・背面9間、梁間4間、一重、両流造、檜皮葺、1571年/本社幣殿・拝殿・祓殿および摂社客神社 1241年/摂社客神社本殿 桁行5間、梁間4間、一重、両流造、檜皮葺
所有者厳島神社
公開状況昇殿参拝は午前6時30分から、閉門は時期により異なる。昇殿料は大人300円、高校生200円、小中学生100円。潮位により社殿の見え方が変わる

参考文献

文化遺産オンライン 厳島神社 本社本殿、幣殿、拝殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/148361
文化遺産オンライン 厳島神社 摂社客神社本殿、幣殿、拝殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/191003
文化遺産オンライン 厳島神社 廻廊(東廻廊)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/157705
文化庁 国指定文化財等データベース 厳島神社
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3164
厳島神社 公式サイト
https://www.itsukushimajinja.jp/

最終更新日: 2026.09.03

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