観応元年の年紀をもつ短刀 ― 1957年に国宝
短刀〈銘筑州住行弘/観応元年八月日〉は、茨城県土浦市中央1-15-18の土浦市立博物館が保管する南北朝時代の短刀で、1957年(昭和32年)2月19日に国宝に指定された。それに先立つ1941年(昭和16年)7月3日には重要文化財となっている。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00207。
文化庁は年代を観応元、西暦1350とする。銘に年月が刻まれているため、製作年が確定している。
銘の位置も記される。目釘穴の上から表に長銘、裏に年紀がある。表に「筑州住行弘」、裏に「観応元年八月日」が入る形である。
「だけであろう」という書き方
文化庁の解説は、この短刀の位置づけを次のように述べる。
筑前国左文字派の行弘の作。行弘有銘の作は極めて少なく、その上年紀のあるものはこの短刀だけであろう。地刃健全であり、左一門の研究資料としても貴重である。
「だけであろう」という推定形が使われている。唯一であると断定せず、そう考えられるという書き方にとどめている。公的記録が慎重な表現を採っている例である。
行弘の銘のある作品自体が極めて少なく、そのうえ年紀まで入っているものはこれだけらしい、という二段の限定になる。銘があること、年紀があることが、それぞれ別の希少さにあたる。
評価は「左一門の研究資料としても貴重」と結ばれる。個々の作品の出来だけでなく、流派を調べるための基準としての価値が挙げられている。
作者欄は「左」である
文化庁の作者欄には「左」と記される。銘の「行弘」ではない。
流派の名が作者欄に入っている。左文字派は筑前国の刀工の一門で、行弘はその一人にあたる。個人名ではなく一門の名で記録されていることになる。
同じ左文字派の作としては、愛媛県美術館が保管する短刀〈銘国弘作〉がある。行弘と国弘は同じ一門に属する。
所有は土浦市、保管は土浦市立博物館、管理団体は財団法人日本美術刀剣保存協会である。所有・保管・管理団体が三者とも異なる。
内反という姿
文化庁は姿を「平造、三つ棟、内反、尋常の姿である」と記す。寸法は身長23.5センチメートル、元幅2.2センチメートル。
内反は、刃のある側へわずかに反る形をいう。多くの刀は棟の側へ反るので、逆向きの反りにあたる。短刀に見られる形式である。
刃文は湾れに互の目が交じり、足が入る。物打の上で特に逆がかるとされる。物打は切先寄りの部分で、そこで刃文の傾きが変わることを示す。
帽子は乱れ込んで突き上げ、尖る。裏はわずかにうつむきごころがある。表と裏で帽子の向きが異なることになる。
茎は生ぶ栗尻、鑢目は大筋違、目釘穴は一つ。茎に手が加えられていないため、長銘と年紀が残っている。
鑑賞
所有は土浦市で、土浦市立博物館が保管する。常設展示とは限らず、展示の有無と時期は博物館の予定による。
刀剣は展示替えの対象になりやすく、光や湿度の管理のため公開期間が限られることが多い。実物を目当てにする場合は、出陳の有無を必ず確かめたい。
見どころは表の長銘と裏の年紀である。目釘穴の上から刻まれているため、茎を見せる展示でなければ確かめられない。
土浦市立博物館は茨城県土浦市中央1-15-18にある。開館時間と観覧料は変更されることがあるため、訪問前に確認したい。
Q&A
- この短刀はいつ国宝に指定されましたか。
- 1957年(昭和32年)2月19日です。それに先立つ1941年(昭和16年)7月3日に重要文化財となっています。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00207。文化庁は年代を観応元、西暦1350とします。
- なぜ貴重とされるのですか。
- 文化庁は「行弘有銘の作は極めて少なく、その上年紀のあるものはこの短刀だけであろう」と記します。銘があること、年紀があることがそれぞれ別の希少さにあたります。「だけであろう」という推定形で、断定はされていません。
- 作者は誰ですか。
- 銘は「筑州住行弘」ですが、文化庁の作者欄は「左」と記します。左文字派という筑前国の刀工の一門の名で、個人名ではなく一門の名で記録されています。同じ一門の作に、愛媛県美術館が保管する短刀〈銘国弘作〉があります。
- どのような姿ですか。
- 文化庁は「平造、三つ棟、内反、尋常の姿である」とし、身長23.5センチメートル、元幅2.2センチメートルとします。内反は刃のある側へわずかに反る形で、多くの刀が棟の側へ反るのとは逆向きです。
- どこで見られますか。
- 所有は土浦市で、土浦市立博物館が保管します。常設展示とは限らず、展示の有無と時期は博物館の予定によります。刀剣は光や湿度の管理のため公開期間が限られることが多いので、出陳の有無を確かめてください。
基本情報
| 名称 | 短刀〈銘筑州住行弘/観応元年八月日〉(たんとう めいちくしゅうのじゅうゆきひろ かんのうがんねんはちがつひ) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県土浦市中央1-15-18 土浦市立博物館 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/指定番号00207 |
| 指定年 | 1941年(昭和16年)7月3日 重要文化財/1957年(昭和32年)2月19日 国宝 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 身長23.5センチメートル、元幅2.2センチメートル。平造、三つ棟、内反、尋常の姿。刃文は湾れに互の目が交じり、物打の上で特に逆がかる。茎は生ぶ栗尻、目釘穴は1つ。目釘穴の上から表に長銘、裏に年紀がある。1350年 |
| 所有者 | 土浦市(管理団体は財団法人日本美術刀剣保存協会) |
| 公開状況 | 常設展示とは限らず、展示の有無と時期は博物館の予定による |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 短刀〈銘筑州住行弘/観応元年八月日〉
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/503
- 文化遺産オンライン 短刀〈銘筑州住行弘/観応元年八月日〉
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/148588
- 文化遺産オンライン 土浦市立博物館
- https://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12024
- 文化庁 文化財の紹介
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/
最終更新日: 2026.09.04