旧野村さとう店煉瓦蔵とは
旧野村さとう店煉瓦蔵は、茨城県土浦市中央1丁目の野村家屋敷の北奥に建つ明治中期の煉瓦造の蔵で、平成28年(2016年)8月1日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。平屋建、瓦葺、建築面積28平方メートル。同じ敷地に登録された4棟のうち、煉瓦を積んだのはこの1棟だけである。
土浦の旧城下の町並みは土蔵造の蔵で成り立っている。土と漆喰でできた白い壁が続くなかに、焼いた煉瓦の赤い壁が1棟だけ立つ。文化庁の国指定文化財等データベースは、この対比を旧野村さとう店煉瓦蔵の評価の中心に置いている。
建つ位置は店舗兼主屋の北方、敷地の奥である。棟は南北に通る。建ちが高く、現在は平屋建だが、もとは2階建であったと伝わる。
建築年代は明治中期、西暦では1883年から1897年の間とされる。土浦市観光協会は、この蔵を明治25年(1892年)に煉瓦で造られたものと紹介している。平成14年(2002年)と平成24年(2012年)に改修が加えられた。
イギリス積とアーチ
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、登録番号は08-0293である。
煉瓦の積み方はイギリス積である。長手だけを並べた段と、小口だけを並べた段を、1段ずつ交互に重ねる積み方をいう。壁面には、長方形が横に連なる段と、正方形に近い小口が細かく並ぶ段とが交互に現れる。日本の明治期の官庁・工場・倉庫で広く使われた積み方で、フランス積と呼ばれる交互配置に比べて強度が出しやすい。
開口部の上にはアーチが架かる。煉瓦は引っ張りに弱いため、窓や戸の上を水平の梁でまたぐことができない。楔形に並べた煉瓦を互いに押し合わせ、荷重を横へ逃がすアーチが要る。この構造上の必然が、そのまま壁面の意匠になっている。
商家の屋敷に煉瓦造の蔵が建つのは、明治の土浦が新しい材料を受け入れていた証しである。同じ敷地の店舗兼主屋・袖蔵・文庫蔵も同じ日に登録され、木造と土蔵造と煉瓦造という3種の構法が1つの屋敷に並ぶ状態のまま登録有形文化財となった。土浦市は令和6年(2024年)12月25日、これらを含む旧野村さとう店を歴史的風致形成建造物の第4号に指定している。
見どころ
まず壁に近づいて、目地を見てほしい。煉瓦1個の長さと幅の比率、目地の太さ、段ごとに切り替わる長手と小口の並び。この3つを追うだけで、積み方の規則が読み取れる。積み替えや補修の跡があれば、煉瓦の色の違いとして残る。
建ちの高さも見どころである。平屋建でありながら壁が高いのは、もとが2階建だったという伝えと符合する。屋根の位置と壁の高さの釣り合いが、ふつうの平屋とは違って見える。
旧野村さとう店煉瓦蔵は現在、喫茶店として使われている。煉瓦の壁と天井に囲まれた室内で、席に着いたまま構造を眺められる。壁の内側は塗り込めずに煉瓦を見せているため、外から見た積み方の続きが、そのまま内側にある。
敷地の表側から順にたどると、木造の店舗兼主屋、その東の土蔵造の袖蔵、奥へ進んで文庫蔵、そして旧野村さとう店煉瓦蔵。材料と工法が建物ごとに切り替わっていく並びは、1つの屋敷の中で明治という時代の幅を見せている。
旧野村さとう店煉瓦蔵の見学方法
旧野村さとう店煉瓦蔵は、土浦まちかど蔵「野村」の喫茶店として公開されている。施設全体の開館は午前9時から午後6時まで、休館日は12月29日から1月3日まで、入館は無料である。
喫茶の営業時間は施設の開館時間より短い。土浦市観光協会によれば、平日は午前10時30分から午後4時30分まで、土曜・日曜・祝日は午前10時から午後5時までで、予約は受け付けていない。全席禁煙である。内部をゆっくり見るなら、喫茶の営業時間内に訪ねることになる。
徒歩ならJR常磐線土浦駅の西口から10分ほど。車を使う場合は、常磐自動車道の桜土浦インターチェンジ、あるいは土浦北インターチェンジで下りて約10分の道のりになる。
撮影の可否について公式サイトに明示の記載はない。営業中の店内は他の客がいるため、席や人が入らない角度を選ぶか、店員にひとこと断りたい。
Q&A
- 旧野村さとう店煉瓦蔵の中に入れますか。営業時間は?
- 喫茶店として使われており、その営業時間内に入れます。平日は午前10時30分から午後4時30分まで、土曜・日曜・祝日は午前10時から午後5時までです。予約は受け付けていません。
- 旧野村さとう店煉瓦蔵の煉瓦はどう積まれていますか?
- イギリス積です。長手だけの段と小口だけの段を1段ずつ交互に重ねます。開口部の上にはアーチが架かります。
- 旧野村さとう店煉瓦蔵は何階建てですか?
- 現在は平屋建です。ただし建ちが高く、もとは2階建であったと伝わります。
- 旧野村さとう店煉瓦蔵はいつ建てられましたか?
- 文化庁のデータベースは明治中期、西暦では1883年から1897年とします。土浦市観光協会は明治25年(1892年)の建設と紹介しています。
- 旧野村さとう店煉瓦蔵へは土浦駅からどう行きますか?
- 土浦駅(JR常磐線)の西口を出て中城通りまで約10分。煉瓦の建物は敷地の奥にあります。車では桜土浦・土浦北のどちらのインターチェンジからも約10分です。
基本情報
| 名称 | 旧野村さとう店煉瓦蔵(きゅうのむらさとうてんれんがぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県土浦市中央1丁目950・952合併 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0293 |
| 指定年 | 2016年8月1日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積28平方メートル 煉瓦造、平屋建、瓦葺 |
| 所有者 | 土浦市 |
| 公開状況 | 土浦まちかど蔵「野村」の喫茶店として公開。施設の開館は午前9時から午後6時まで、休館は12月29日から1月3日まで、入館無料 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧野村さとう店煉瓦蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011058
- 土浦市 歴史的風致形成建造物指定制度について
- https://www.city.tsuchiura.lg.jp/kankyo-kotsu-machizukuri/toshikeikaku-machizukuri/keikan/fuuchi-keisei-kenzoubutsu.html
- 土浦市 歴史的風致形成建造物指定台帳 第4号 旧野村さとう店
- https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1742370004_doc_34_0.pdf
- 土浦市 名所・史跡の紹介
- https://www.city.tsuchiura.lg.jp/kanko-bunka-sports/kanko-matsuri-event/kanko/page001098.html
- 土浦市 広報つちうら「土浦まちかど蔵『大徳』・『野村』が国の登録有形文化財に登録されました」
- https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1488350280_doc_159_1.pdf
- 土浦市観光協会 まちかど蔵
- https://www.tsuchiura-kankou.jp/machikado_kura/
- 観光いばらき(茨城県) 土浦まちかど蔵「野村」
- https://www.ibarakiguide.jp/spot.php?mode=detail&code=1568
最終更新日: 2026.09.07