家財を預かった敷地の奥の蔵

旧大徳呉服店向蔵は、茨城県土浦市中央1丁目にある明治時代前期(1868年から1882年)の土蔵で、2016年(平成28年)8月1日に登録有形文化財(建造物)として登録された。旧水戸街道の中城通りから奥へ入った敷地の南側、元蔵の南に、棟を東西方向にして建つ。建築面積は35平方メートル、土蔵造の2階建、屋根は瓦葺である。

出入口は北へ向けて開く。中庭を挟んで並ぶ手前の棟に対して口を開けており、母屋側から荷を運び入れる動線がそのまま形になっている。収めていたのは商品ではない。文化庁の解説によれば、もとは布団や食器類といった家財道具を納める蔵だった。

小屋組は登梁形式である。水平の梁の上に束を立てて棟を支えるのではなく、傾いた梁をそのまま屋根の勾配に沿わせる。小規模な蔵では材が少なくて済み、天井の高さも確保しやすい。旧大徳呉服店向蔵の内部を見上げる機会があれば、この斜めに走る材が屋根裏の骨格をつくっているのが分かる。

街路の調子を変える東の妻

旧大徳呉服店向蔵の登録番号は08-0289で、旧大徳呉服店の5棟のうち最も大きい番号にあたる。店蔵北棟(08-0285)、店蔵南棟(08-0286)、袖蔵(08-0287)、元蔵(08-0288)とともに、同じ日に登録有形文化財となった。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、所有者は土浦市である。

文化庁の解説がこの蔵について挙げているのは、東側の妻面の造作である。2階に窓を開き、そこに掛子塗の戸を吊る。掛子塗とは、戸と枠の合わせ目を段状に噛み合わせ、隙間を折れ曲がらせて火の粉と熱気の侵入を防ぐ仕上げをいう。蔵の建具に共通する工夫だが、外から見える位置にあると意匠としても働く。

その窓の上には、腕木で支える庇が付く。壁から水平に突き出た木材が屋根を受ける仕組みで、平坦な壁面に影の帯が一本入る。土蔵造の建物が続く街路に単調さが生じるのを、この小さな出っ張りが防いでいる、というのが登録時の見方である。景観への寄与という基準が、具体的にどの部分を指しているかが読み取れる例である。

旧大徳呉服店向蔵の見どころ

東の妻面を、少し離れた位置から順に見上げていきたい。1階の壁、2階の窓、掛子塗の戸、腕木、そして庇。上へ向かうにつれて要素が増えていき、いちばん上で影が生まれる。この積み上げが、35平方メートルという小さな建物に立体感を与えている。

北面の出入口では、戸前の壁の厚みを確かめたい。土蔵の扉まわりは壁がもっとも厚くなる場所で、開口の深さがそのまま防火の性能を示す。

敷地の奥まで進んだら、来た方向を振り返ってほしい。旧大徳呉服店向蔵から中城通りの側を見ると、棟の向きが交互に変わっているのが分かる。この棟は東西、手前の棟は南北。屋根の稜線が直交して重なる眺めは、通りからは見えない。

旧大徳呉服店向蔵の見学方法

旧大徳呉服店向蔵は、土浦市が土浦まちかど蔵「大徳」として公開している建物群に含まれ、敷地は開館時間中に自由に歩ける。開館は午前9時から午後6時、入館は無料。休館日は12月29日から1月3日である。問い合わせは館内に事務所を置く土浦市観光協会(電話029-824-2810)。

この棟は敷地の奥にあり、街道からは直接見えない。中城通りに面した店蔵北棟の格子戸から入り、建物のあいだを南へ抜けると到達する。日によって展示や貸出の状況が変わり、内部に入れないこともある。到着してから確かめるより、窓口でひと言尋ねてから奥へ進むほうが早い。撮影についても同様に窓口で確認したい。

JR常磐線土浦駅の西口から中城通りまでは徒歩10分ほど。中城通りをはさんだ向かい側には、同じく土浦市が公開する土浦まちかど蔵「野村」があり、こちらも国の登録有形文化財である。2つの敷地を行き来すると、旧水戸街道沿いに蔵が並んだ町の構造がつかめる。

Q&A

Q旧大徳呉服店向蔵は見学できますか。開館時間と料金は?
A土浦まちかど蔵「大徳」の敷地内にあり、開館時間中は外観を見られます。開館は午前9時から午後6時、入館は無料です。休館日は12月29日から1月3日で、問い合わせは土浦市観光協会(029-824-2810)です。
Q旧大徳呉服店向蔵には何が納められていたのですか。
A布団や食器類などの家財道具です。商品の呉服を収めた袖蔵とは役割が分かれており、大徳の敷地では蔵ごとに用途が決まっていました。
Q旧大徳呉服店向蔵はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A明治時代前期、1868年から1882年の間の建築です。2016年(平成28年)8月1日に登録番号08-0289で登録有形文化財となりました。平成12年(2000年)に改修を受けています。
Q旧大徳呉服店向蔵の掛子塗の戸とは何ですか。
A戸と枠の合わせ目を段状に噛み合わせ、隙間を折れ曲がらせる仕上げの建具です。火の粉や熱気が入りにくくなります。この蔵では東側の妻面の2階の窓に吊られています。
Q旧大徳呉服店向蔵はどこにありますか。
A茨城県土浦市中央1丁目914-5ほかで、土浦まちかど蔵「大徳」の敷地の奥にあたります。JR常磐線土浦駅の西口から中城通りまで徒歩10分ほどです。

基本情報

名称旧大徳呉服店向蔵
所在地茨城県土浦市中央1丁目914-5ほか
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0289
指定年2016年8月1日登録
員数1棟
寸法建築面積35平方メートル 土蔵造2階建、瓦葺
所有者土浦市
公開状況土浦まちかど蔵「大徳」として公開 午前9時から午後6時、入館無料、12月29日から1月3日休館

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧大徳呉服店向蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011054
土浦市 観光・名所の紹介
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/kanko-bunka-sports/kanko-matsuri-event/kanko/page001097.html
土浦市 広報つちうら 国登録有形文化財 土浦まちかど蔵「大徳」・「野村」
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1488350280_doc_159_1.pdf
土浦市観光協会 まちかど蔵
https://www.tsuchiura-kankou.jp/machikado_kura/

最終更新日: 2026.09.07