天保13年という年号をもつ蔵

旧大徳呉服店元蔵は、茨城県土浦市中央1丁目にある天保13年(1842年)建築の土蔵で、2016年(平成28年)8月1日に登録有形文化財(建造物)として登録された。旧水戸街道の中城通りに面する店蔵の列から奥へ入り、店蔵南棟の南に中庭をはさんで建つ。建築面積は20平方メートル。旧大徳呉服店として登録された5棟のなかで最も小さく、そして最も古い。

棟は南北方向に通り、屋根は切妻造の2階建で瓦葺。北を正面として庇を設け、2階にも窓を開いて掛子塗の戸を吊る。掛子塗は、戸と枠の合わせ目を段状に噛み合わせて隙間を折れ曲がらせる仕上げで、火の粉が直進して入り込むのを防ぐ。

小屋組は登梁形式である。水平の梁の上に束を立てるかわりに、傾けた梁を屋根の勾配に沿わせて棟まで届かせる。20平方メートルという規模では、この組み方のほうが材も手間も少なくて済む。文化庁の解説は、旧大徳呉服店元蔵をあえて「比較的小規模な蔵」と断ったうえで、それでも価値があると続けている。

大火をくぐり抜けた遺構として

旧大徳呉服店元蔵の登録番号は08-0288、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。店蔵北棟(08-0285)、店蔵南棟(08-0286)、袖蔵(08-0287)、向蔵(08-0289)と同じ日に登録有形文化財となった。所有者は土浦市である。

この蔵の評価がほかの4棟と違うのは、そこに年代の裏づけがある点にある。土浦の城下は天保年間の大火で焼けており、中城通りに並ぶ土蔵造の町並みは、その後に立て直されたものが多い。旧大徳呉服店元蔵はその火をくぐり抜けた。建築年が天保13年とはっきりしていて、なおかつ大火より前にさかのぼる土蔵の遺構は、土浦城下では数が少ない。

登録有形文化財の制度は、意匠の優劣だけを測るものではない。年代の確かな建物が1棟残っているという事実そのものが、周囲の建物の年代を推し量る物差しになる。20平方メートルの蔵が5棟のなかで独自の位置を占めているのは、そのためである。

旧大徳呉服店元蔵の見どころ

中庭に立って北正面と向き合いたい。手前の店蔵南棟と旧大徳呉服店元蔵のあいだにあるこの空きが、単なる余白ではないことに気づく。蔵は隣の建物と壁を接すると、片方が燃えたときに熱が伝わる。中庭は通路であると同時に、火のあいだに置かれた距離でもある。

正面の庇の下に立ち、2階の窓を見上げてみたい。戸の縁が段になっているのが、下からでも輪郭で分かる。閉めたときにその段が枠と噛み合い、隙間が一直線にならない。

壁の隅にも目を向けたい。土蔵の角は塗りが厚くなり、面が丸みを帯びる。木造の建物の角が見せる鋭い線とは、影の落ち方がまるで違う。天保13年から数えて180年を越える壁が、いまも同じ形で角を保っている。

旧大徳呉服店元蔵の見学方法

旧大徳呉服店元蔵は、土浦市が土浦まちかど蔵「大徳」として公開する建物群に含まれ、開館時間中は敷地内から外観を見られる。開館は午前9時から午後6時、入館は無料。休館日は12月29日から1月3日である。問い合わせは館内に事務所を置く土浦市観光協会(電話029-824-2810)。

この蔵は敷地の奥にあるため、中城通りからは見えない。街道に面した店蔵北棟の格子戸を入り、建物のあいだを南へ抜けると中庭に出る。内部の公開状況は日によって変わるので、窓口で尋ねてから進みたい。撮影の可否についても公式の案内がないため、あわせて確認するとよい。

JR常磐線土浦駅の西口から中城通りまでは徒歩10分ほど。中城通りには県指定文化財の矢口家住宅など江戸期以来の町家が点在しており、旧大徳呉服店元蔵が建てられた頃の街道筋の密度を、歩きながら想像できる。

Q&A

Q旧大徳呉服店元蔵は見学できますか。開館時間と料金は?
A土浦まちかど蔵「大徳」の敷地内にあり、開館時間中は外観を見られます。開館は午前9時から午後6時、入館は無料です。休館日は12月29日から1月3日で、問い合わせは土浦市観光協会(029-824-2810)です。
Q旧大徳呉服店元蔵はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A天保13年(1842年)の建築です。2016年(平成28年)8月1日に登録番号08-0288で登録有形文化財となりました。平成11年(1999年)に改修を受けています。
Q旧大徳呉服店元蔵はなぜ価値があるとされるのですか。
A建築年が明らかで、しかも天保年間の大火より前にさかのぼるためです。文化庁の解説は、土浦城下では希少な、年代の明らかな土蔵の遺構として価値があるとしています。
Q旧大徳呉服店元蔵の大きさと構造を教えてください。
A建築面積20平方メートル、土蔵造2階建、瓦葺です。棟を南北方向に通した切妻造で、北を正面に庇を設け、2階の窓には掛子塗の戸を吊ります。旧大徳呉服店の5棟では最小です。
Q旧大徳呉服店元蔵はどこにありますか。
A茨城県土浦市中央1丁目914-5ほかで、店蔵南棟の南に中庭をはさんで建ちます。JR常磐線土浦駅の西口から中城通りまで徒歩10分ほどです。

基本情報

名称旧大徳呉服店元蔵
所在地茨城県土浦市中央1丁目914-5ほか
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0288
指定年2016年8月1日登録
員数1棟
寸法建築面積20平方メートル 土蔵造2階建、瓦葺
所有者土浦市
公開状況土浦まちかど蔵「大徳」として公開 午前9時から午後6時、入館無料、12月29日から1月3日休館

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧大徳呉服店元蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011053
土浦市 観光・名所の紹介
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/kanko-bunka-sports/kanko-matsuri-event/kanko/page001097.html
土浦市 名所・史跡の紹介
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/kanko-bunka-sports/kanko-matsuri-event/kanko/page001098.html
土浦市 広報つちうら 国登録有形文化財 土浦まちかど蔵「大徳」・「野村」
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1488350280_doc_159_1.pdf
土浦市観光協会 まちかど蔵
https://www.tsuchiura-kankou.jp/machikado_kura/

最終更新日: 2026.09.07