1巻の書 ― 1951年に国宝
古今和歌集巻第廿(高野切本)は、高知県立高知城歴史博物館(高知県高知市追手筋2-7-5)にある平安時代後期の書で、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。指定番号は00016、所有は高知県である。
文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ずに国宝へ指定されている。これまで扱った中で22件目にあたる。
寸法は26.4×262.2センチメートル、員数は1巻とされる。料紙は鳥子雲母引、時代は平安時代後期の11世紀である。
所有者が県である
所有者の欄は、高知県とする。
前に扱った土偶/青森県八戸市風張1遺跡出土の所有は八戸市だった。市に続いて、都道府県が現れる。
ここまで所有者には、寺社、宗教法人、個人、公益財団法人、国、独立行政法人、株式会社、大学共同利用機関法人、国立大学法人が現れた。色絵藤花文茶壺では宗教法人の世界救世教だった。
自治体が所有する例が二件続いたことになる。保管は高知県立高知城歴史博物館が行う。
指定番号は00016である。番号が小さいことは、書の分野で早くに登録されたことを示す。国宝となった1951年6月9日は、二つの曜変天目茶碗、太刀〈銘三条〉、姫路城の渡櫓と同じ日である。
断片の名が、完存する巻の呼び名になっている
高野切という名の由来が記録される。
その一部が高野山に伝来したことから「高野切」と呼ばれる、とある。
切は切り離された断片をいう。高野山に伝わった断片から、この呼び名が生まれた。
ところが本件は巻第廿であり、1巻として完存している。切り離されていない巻が、断片に由来する名で呼ばれていることになる。
関連作品には、古今和歌集巻第一断簡(高野切)、古今和歌集巻十九断簡(高野切)、手鑑「藻塩草」古今和歌集巻第二断簡(高野切)といった名が並ぶ。こちらは実際の断簡である。
和漢朗詠集(雲紙)でも、法輪寺切や太田切といった断簡が多数記録されていた。本件は断簡の名が、断簡でないものにまで及んでいる。
一人と伝えられてきたが、三人の手が混じる
筆者についての記述が、伝承と推定に分かれる。
紀貫之(?から946年)筆と伝承されてきたが、実際には三種の書風が混在し、十一世紀中頃の寄合書と推定されている、とある。
寄合書は複数の人が分担して書くことをいう。一人の名で伝わってきたものが、三人の手によるとされている。
和漢朗詠集(雲紙)では、作者欄が伝藤原行成、解説が源兼行と推定していた。太刀〈銘光世作〉では、一人の作者に光世・三池典太・大典太という三つの呼び名があった。
本件は逆で、一つの名で伝わったものが複数の人に分かれる。
三人には番号が付く。山内家伝来の巻第廿は「第一種」と呼ばれる書風を示す、とある。人を名ではなく番号で呼んでいる。
鑑賞
所在は高知県立高知城歴史博物館で、所有は高知県である。館が保管する書であり、常設で公開される性格のものではない。紙に書かれたものは光に弱く、公開期間が限られる。
評価も記される。高野切は古今集の写本としては現存最古であり、かつ平安時代の仮名書の完成形を示す書跡として古来より名高い、とある。
本件の書きぶりについては、抑制のきいた端正な書きぶりは、高野切の筆者三名の中で、もっとも格の高い人物の手になるものとされる、と記される。三人のうちの一人を、他の二人と比べている。
なお公益財団法人徳川ミュージアムにも「高野切」の名の物件があり、こちらは手鑑に収められた一葉で、時代を鎌倉時代とする。同じ名で時代の記載が違う。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。
Q&A
- 古今和歌集巻第廿(高野切本)はいつ国宝に指定されましたか。
- 1951年(昭和26年)6月9日です。指定番号は00016、所在は高知県立高知城歴史博物館、所有は高知県です。重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ていません。
- 「高野切」という名の由来は何ですか。
- 文化庁は「その一部が高野山に伝来したことから『高野切』と呼ばれる」と記します。切は切り離された断片をいい、断片に由来する名が、完存する巻第廿にも用いられています。
- 誰が書いたものですか。
- 文化庁は「紀貫之筆と伝承されてきたが、実際には三種の書風が混在し、十一世紀中頃の寄合書と推定されている」と記します。一人の名で伝わってきたものが、三人の手によるとされています。
- 「第一種」とは何ですか。
- 三種の書風のうちの一つを指す呼び方です。文化庁は「山内家伝来の巻第廿は『第一種』と呼ばれる書風を示す」とし、「筆者三名の中で、もっとも格の高い人物の手になるものとされる」と記します。
- 何が評価されているのですか。
- 文化庁は「高野切は古今集の写本としては現存最古であり、かつ平安時代の仮名書の完成形を示す書跡として古来より名高い」と記します。
基本情報
| 名称 | 古今和歌集巻第廿(高野切本)(こきんわかしゅうまきだいにじゅう こうやぎれぼん) |
|---|---|
| 所在地 | 高知県立高知城歴史博物館 高知県高知市追手筋2-7-5 |
| 指定区分 | 国宝(書)/指定番号00016/重要文化財を経ずに国宝へ指定 |
| 指定年 | 1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1巻 |
| 寸法 | 26.4×262.2センチメートル。料紙は鳥子雲母引の紙本。三種の書風が混在し、本件は「第一種」と呼ばれる書風を示す。時代は平安時代後期の11世紀 |
| 所有者 | 高知県 |
| 公開状況 | 館が保管する書で、常設の公開ではない。紙に書かれたものは光に弱く、公開期間が限られる |
参考文献
- 文化遺産オンライン 古今和歌集巻第廿(高野切本)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/284850
- 文化遺産オンライン 高野切(徳川ミュージアム)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/278866
- 高知県立高知城歴史博物館
- https://www.kochi-johaku.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.05