空に浮かぶ雲のような楼閣-飛雲閣との出会い
京都駅から徒歩わずか15分。世界遺産・西本願寺の境内東南隅に、ひときわ優美な三層楼閣がたたずんでいます。国宝・飛雲閣(ひうんかく)-その名は、細い柱と多くの障子によって軽やかに見える姿が、まるで空に浮かぶ雲のようであることに由来します。
金閣・銀閣とともに「京の三名閣」と称される飛雲閣は、通常非公開のため、その存在を知らない観光客も少なくありません。しかし、この建築こそ、日本建築史上最も独創的で美しい楼閣の一つなのです。
聚楽第から継がれた桃山の美-飛雲閣の歴史
飛雲閣の起源については諸説ありますが、豊臣秀吉が京都に築いた壮麗な聚楽第(じゅらくだい)の遺構と伝えられています。秀吉は1591年に西本願寺を現在の地に移し、その後1595年の聚楽第破却の際、建物の一部が西本願寺に移築されたとされます。
ただし、1617年の西本願寺全焼の記録もあることから、現在の飛雲閣は江戸初期(元和~寛永年間)に再建されたものとする説も有力です。いずれにせよ、この建築が桃山時代から江戸初期にかけての建築技術と美意識の頂点を示していることに変わりはありません。
左右非対称の妙-建築の独創性
飛雲閣の最大の特徴は、その大胆な左右非対称(アシンメトリー)の構成にあります。三層の屋根は、初層が入母屋造りに唐破風と千鳥破風を配し、二層は寄棟造りに三方に軒唐破風、三層は寄棟造りと、実に変化に富んでいます。
しかも、二層、三層と上にいくほど建物は小さくなり、その中心軸も東に移動するという、通常の楼閣建築では考えられない構成を取っています。この一見不規則な形態が、かえって絶妙な調和を生み出し、見る角度によって異なる表情を見せる、まさに「動く建築」となっているのです。
舟で渡る楼閣-水辺の建築美
名勝・滴翠園(てきすいえん)の滄浪池に面して建つ飛雲閣は、もともと舟でしか渡れない構造でした。一階の「舟入の間」は、文字通り小舟を横付けして直接建物内に入る玄関の役割を果たしていました。現在は石橋が架けられていますが、当時の優雅な暮らしぶりが偲ばれます。
各階には趣の異なる座敷が配されています。一階の主室「招賢殿」と「八景の間」、後に増築された茶室「憶昔」、二階の「歌仙の間」には三十六歌仙の障壁画、そして三階の「摘星楼」と、それぞれが独自の世界観を持っています。
黄鶴台と蒸し風呂-贅を尽くした附属建築
飛雲閣から西に延びる渡り廊下で結ばれた「黄鶴台」(重要文化財)も見逃せません。柿葺寄棟造りの高床式建築で、その先には当時の最先端技術である蒸し風呂(サウナ)が設置されています。唐破風を持つ浴室では、窓や板戸の開閉により温度調節が可能という、驚くほど洗練された設備が整っていました。
特別拝観で体験する国宝の美
通常非公開の飛雲閣ですが、年に数回、特別拝観の機会があります。京都非公開文化財特別公開(春秋)、京の冬の旅、親鸞聖人の誕生日(5月21日)の宗祖降誕会などです。
また、THE THOUSAND KYOTOなど一部のホテルでは、宿泊者限定の特別拝観プラン(5,000円/人)も用意されています。僧侶の詳しい解説付きで、飛雲閣だけでなく、国宝の書院(対面所・白書院)や唐門も見学できる贅沢なプログラムです。
京都駅から徒歩圏内-抜群のアクセス
西本願寺は京都駅から徒歩約15~20分、市バスなら「西本願寺前」下車すぐという好立地にあります。東本願寺との間にある静かなエリアで、観光客の喧騒を離れて、ゆったりと参拝できるのも魅力です。
境内は無料で参拝でき、国宝の御影堂と阿弥陀堂の壮大な空間を体感できます。また、樹齢約400年の「逆さ銀杏」は、火災の際に水を噴き出したという伝説を持つ天然記念物で、秋には黄金色に輝く姿が見られます。
周辺の隠れた魅力-京都駅西側エリア
西本願寺周辺は、京都駅の西側に広がる落ち着いたエリアです。東本願寺、龍谷ミュージアム、京都水族館、京都鉄道博物館など、家族連れでも楽しめるスポットが点在しています。
ランチには、古民家カフェ「食と森」の京野菜おばんざいプレート、「FUKUNAGA901」の季節のフルーツパフェ、老舗の「竈炊き立てごはん土井」の京漬物ビュッフェなど、京都らしい食事が楽しめます。
新選組ファンには、西本願寺境内の太鼓楼(新選組屯所跡)も見どころの一つ。幕末の動乱期、境内で武芸の稽古や砲撃訓練を行っていた隊士たちの姿を想像してみてはいかがでしょうか。
Q&A
- なぜ飛雲閣は通常非公開なのですか?
- 飛雲閣は極めて繊細な建築物で、金銀装飾や障壁画などの保存状態を維持するため、温湿度管理が必要です。また、池に面した特殊な立地や、建物内部の狭い階段など、大人数での見学には適さない構造のため、限定的な公開となっています。年に数回の特別公開や、事前予約制の拝観プランをご利用ください。
- 金閣・銀閣と比べて飛雲閣の特徴は何ですか?
- 金閣は金箔の豪華さ、銀閣は簡素な美しさで知られますが、飛雲閣は左右非対称の独創的なデザインが最大の特徴です。また、金閣・銀閣が禅宗寺院の建築であるのに対し、飛雲閣は浄土真宗の寺院にある住宅建築として、舟入の間や茶室、浴室なども備えた複合的な楼閣である点も独特です。
- 特別拝観の予約方法と料金を教えてください。
- 京都非公開文化財特別公開(春秋)は当日受付で大人1,000円程度です。ホテル宿泊者限定プランは5,000円で事前予約制、僧侶の解説付きで約1時間の拝観となります。宗祖降誕会(5月20-21日)では、5,000円以上の志納金で飛雲閣内での茶席券がいただけます。最新情報は西本願寺公式サイトでご確認ください。
- 西本願寺へのアクセスで一番便利な方法は?
- 京都駅から市バス9・28・75番で「西本願寺前」下車(約10分、230円)が最も便利です。徒歩なら約15-20分で、道も分かりやすく、途中で東本願寺も見学できます。タクシーは約700円ですが、距離が近いので徒歩かバスがおすすめです。駐車場は北境内地にあり無料ですが、満車の場合もあります。
- 飛雲閣以外の西本願寺の見どころは?
- 国宝の御影堂(日本最大級の木造建築)と阿弥陀堂、豪華な装飾の唐門(日暮門)は必見です。特別公開時には、対面所の鴻の間(203畳の大広間)、白書院、現存最古の能舞台も見学できます。また、樹齢400年の逆さ銀杏は秋の紅葉時期が特に美しく、新選組屯所跡の太鼓楼も歴史ファンに人気です。
参考文献
- 飛雲閣 | 観る|龍谷山 本願寺【お西さん(西本願寺)】
- https://www.hongwanji.kyoto/see/hiunkaku.html
- 国宝-建築|西本願寺 飛雲閣[京都] | WANDER 国宝
- https://wanderkokuho.com/102-01815/
- 京都・京の三閣(金閣・銀閣・飛雲閣)
- https://kyototravel.info/sankaku
- 聚楽第 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/聚楽第
- 世界遺産「西本願寺」の観光・見どころ|THE THOUSAND KYOTO
- https://www.keihanhotels-resorts.co.jp/the-thousand-kyoto/sight/kyoto-kawaramachi/nishihongwanji.html
- 第58回 京の冬の旅 非公開文化財特別公開
- https://kyoto-design.jp/event/58214
基本情報
| 名称 | 本願寺飛雲閣(ほんがんじひうんかく) |
|---|---|
| 通称 | 飛雲閣 |
| 所在地 | 京都府京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町 |
| 建立 | 桃山時代~江戸初期(元和~寛永年間) |
| 構造 | 三重、柿葺(こけらぶき) |
| 規模 | 南北面25.8m、東面11.8m、西面12.5m |
| 文化財指定 | 国宝(1951年6月9日指定) |
| 所有者 | 浄土真宗本願寺派(西本願寺) |
| 拝観 | 通常非公開(特別公開時のみ) |
| アクセス | JR京都駅より徒歩約15分 |