1基の石塔 ― 1954年に重要文化財

九重塔は、大分県臼杵市野津町大字王子字中馬場3089番地にある鎌倉時代前期の建造物で、1954年(昭和29年)9月17日に重要文化財に指定された。国宝ではなく、重要文化財としての指定である。

員数は1基である。明王院五重塔、水晶五輪塔、鉄宝塔、黒漆螺鈿礼盤と同じ数え方になる。

ふりがなの欄は、きゅうじゅうのとうである。九を「きゅう」と読む。年代の欄は鎌倉前期/1267年である。

所有者が、集落の名と個人名の二通りで記される

誰のものかが、記録によって書き方を変える。

文化遺産オンラインは、所有者名を水地部落とする。集落そのものの名である。

一方、当サイトの記録は、川野岳人・外25名とする。個人の名を挙げ、そのほかに25名がいるという書き方になる。

合わせて26名の共同所有ということになる。

旧筑後川橋梁(筑後川昇開橋)では、大川市と諸富町という二つの自治体が所有していた。福田家住宅では所有者名の欄が空だった。

本件は個人が26名で共有している。しかも一方の記録はそれを集落の名でまとめている。同じ所有の実態を、共同体として書くか、人数として書くかで分かれている。

名称の構造の欄に、欠けている部分が書かれる

失われた部分が、構造の記載に含まれている。

構造の欄は、石造九重塔(相輪を欠く)である。

相輪は塔の頂に立てる金属製の部分をいう。それがないことが、括弧で添えられている。

小桜韋威鎧では、栴檀板・鳩尾板は欠失している、と解説文のなかで述べられていた。沃懸地獅子文毛抜形太刀では、足革が残欠であるとされた。

いずれも解説や品質・形状の欄での記述である。本件は構造の欄そのものに、欠けていることが組み込まれている。

九重の塔でありながら、頂部を欠いた姿で記録されていることになる。

ト書に、刻まれた年月日が写される

塔に彫られた文字が、記録に引かれている。

ト書の欄は、起立文永四年大歳丁卯卯月八日の刻銘がある、とする。

文永四年は1267年である。大歳丁卯は干支による年の示し方、卯月八日は四月八日にあたる。

年代の欄の1267年は、この刻銘によっている。桑実寺本堂や来迎寺本堂では年代が範囲で示されていた。本件は年月日まで分かる。

ト書の欄の使われ方は、これで五通りになる。延喜式の奥書、六祖恵能伝の中国の元号、青白磁円硯の伝来、鎏金獣帯鏡の出土地、そして本件の刻銘である。

解説文の欄は空である。桑実寺本堂に続く2件目になる。物の姿は構造とト書の欄から読み取ることになる。

参拝

所在は大分県臼杵市野津町大字王子字中馬場3089番地である。番地まで示される屋外の石造物になる。

九重塔という名称の重要文化財は、ほかにもある。文化遺産オンラインには、旧浄土寺九重塔、満願寺九重塔、大谷寺九重塔が並ぶ。

それらは寺名が冠されている。本件は九重塔とのみ記される。

来迎寺本堂では、同じ名称の物件が三つあり、いずれも所在地が付いていなかった。本件は名称に何も付かない例になる。

屋外に建つ石塔であり、外観は近くまで行けば見ることができる。地域の共有物であるため、周辺への配慮が求められる。訪問前に確認したい。

Q&A

Q九重塔はいつ指定されましたか。
A1954年(昭和29年)9月17日に重要文化財へ指定されました。国宝ではなく重要文化財で、員数は1基です。
Q誰が所有しているのですか。
A記録によって書き方が違います。文化遺産オンラインは「水地部落」と集落名で記し、当サイトの記録は「川野岳人・外25名」と個人名で記します。26名の共同所有です。
Q完全な姿で残っていますか。
Aいいえ。構造の欄は「石造九重塔(相輪を欠く)」とします。塔の頂に立てる相輪がないことが、構造の記載に含まれています。
Qいつ建てられたのですか。
Aト書の欄に「起立文永四年大歳丁卯卯月八日の刻銘がある」とあります。文永四年は1267年で、年月日まで刻まれています。
Q同じ名の塔は他にもありますか。
Aあります。旧浄土寺九重塔、満願寺九重塔、大谷寺九重塔などが重要文化財です。それらは寺名が冠されますが、本件は九重塔とのみ記されます。

基本情報

名称九重塔(きゅうじゅうのとう)/寺名などが冠されず、名称は九重塔のみ
所在地大分県臼杵市野津町大字王子字中馬場3089番地
指定区分重要文化財(建造物・近世以前その他)/国宝ではない
指定年1954年(昭和29年)9月17日 重要文化財
員数1基
寸法構造の欄は「石造九重塔(相輪を欠く)」とし、9重の塔でありながら欠けている部分が構造の記載に含まれる。ト書の欄に「起立文永四年大歳丁卯卯月八日の刻銘がある」とあり、年代の欄は鎌倉前期/1267年。解説文の欄は空
所有者文化遺産オンラインは水地部落、当サイトの記録は1名の個人名に外25名を添えた形とする
公開状況屋外に建つ石塔で、外観は近くまで行けば見ることができる

参考文献

文化遺産オンライン 九重塔
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/148811
臼杵市 歴史
https://www.city.usuki.oita.jp/docs/2014021300153/
臼杵市観光情報協会
https://www.usuki-kanko.com/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.10