旧上里家住宅主屋:沖縄の伝統的暮らしを今に伝える文化財

おきなわワールドの「琉球王国城下町」エリアに佇む旧上里家住宅主屋は、昭和9年(1934年)頃に沖縄県伊是名村で建てられた伝統的な沖縄民家です。平成7年(1995年)に現在地へ移築され、平成20年(2008年)には国の登録有形文化財に登録されました。沖縄戦で多くの伝統的建造物が失われた中、貴重な昭和初期の民家建築として、沖縄の住文化を今に伝えています。

登録有形文化財としての価値

旧上里家住宅主屋が国の登録有形文化財に登録された理由は、その建築的価値にあります。文化庁の登録基準では「国土の歴史的景観に寄与しているもの」「造形の規範となっているもの」「再現することが容易でないもの」のいずれかに該当する建造物が登録対象となりますが、本住宅はこれらの条件を満たす貴重な建造物として認められました。

建物は桁行約12メートル、梁間約7.6メートルの規模を持ち、寄棟造本瓦葺の木造平屋建てです。間取りは東面表側に北から一番座、二番座、板間、台所土間を配し、西側には裏座3室を設けています。北面から東面の板間まで縁側を通し、一番裏座の西面を除いた四周に雨端(あまはじ)をまわした、沖縄の伝統的民家の典型的なつくりを今に残しています。

沖縄伝統民家の建築的特徴

旧上里家住宅主屋を理解するためには、亜熱帯気候と台風が頻繁に襲来する環境の中で育まれた沖縄独自の建築様式を知ることが大切です。

雨端(アマハジ):沖縄建築を象徴する空間

沖縄民家の最も特徴的な要素が「雨端(あまはじ)」です。これは軒が外に向かって大きく張り出し、庇のような空間を作り出す構造のことです。雨端柱と呼ばれる自然木の柱が屋根を支え、その下に半屋外の空間が生まれます。この空間は、強い直射日光を遮り、横殴りの雨が室内に入り込むのを防ぐ実用的な役割を果たすと同時に、来客との接客の場としても機能しました。内と外を明確に区切らず、緩やかにつなぐこの空間は、おおらかな沖縄の住文化を象徴しています。

間取りに見る沖縄の価値観

沖縄の伝統的民家の間取りには、その家族の価値観や社会慣習が反映されています。一番座(いちばんざ)は家の南東の最も日当たりの良い場所に位置し、お客様をもてなす客間として使われました。これは客人を大切にする沖縄の文化の表れです。隣接する二番座(にばんざ)には仏壇が置かれ、先祖を敬う家族の精神的な中心となりました。裏側に配された裏座は、窓も小さく簡素な造りで、家族の寝室や貴重品を置く場所として使用されました。このように、表と裏で機能を分け、おもてなしの心と家族のプライバシーを両立させる知恵が込められています。

伊是名島からの移築

旧上里家住宅主屋は、もともと沖縄本島の北西約27キロメートルに浮かぶ伊是名島に建っていました。伊是名島は、琉球王国の第二尚氏王統を開いた尚円王の生誕地として知られる歴史的に重要な島です。現在でも赤瓦の家並み、珊瑚の石垣、防風林のフクギなど、昔ながらの沖縄の原風景が残されています。

平成7年(1995年)、この貴重な民家を保存し、より多くの人々に沖縄の伝統建築を体験してもらうため、おきなわワールドへの移築が行われました。職人たちによって丁寧に解体され、部材一つひとつが南城市の現在地へ運ばれ、往時の姿そのままに再建されました。この移築事業により、離島を訪れなくても本格的な沖縄伝統民家を間近で見学できるようになりました。

現在の活用と見どころ

現在、旧上里家住宅主屋は、おきなわワールド「琉球王国城下町」の中で様々な形で活用されています。各種体験講座やイベントの会場として使用されるほか、伝統的な琉球挙式の会場としても人気を集めています。沖縄の伝統建築の中で永遠の愛を誓う特別な結婚式は、多くのカップルに選ばれています。

また「ゆくい処(休憩所)」としても開放されており、園内散策の途中で一休みすることができます。雨端の下に腰を下ろし、城下町の風景を眺めながらゆったりとした時間を過ごせば、かつての沖縄の人々の暮らしぶりに思いを馳せることができるでしょう。夏でも風通しの良い伝統建築の涼しさを体感できるのも魅力です。

琉球王国城下町の文化財群

旧上里家住宅主屋は、おきなわワールド内に移築・保存されている5つの登録有形文化財の一つです。「首里城の城下町」というコンセプトのもと、王家を支えてきた庶民たちの生活や文化、町並みが再現されています。

他の登録有形文化財として、太平洋戦争の砲弾痕が柱に残る旧喜屋武家住宅主屋(現在は紅型工房)、御殿の資材を用いて建てられた旧田場家住宅主屋(現在は紙すき工房)、伊是名村から移築された旧伊礼家住宅主屋(現在は藍染め工房)、そして沖縄の養豚文化を伝える旧知念家住宅フールがあります。それぞれの建物が異なる歴史と特徴を持ち、沖縄の多様な暮らしの姿を今に伝えています。

おきなわワールドの見どころ

旧上里家住宅主屋が位置するおきなわワールドは、東京ドーム約4個分の広大な敷地を持つ沖縄最大級の観光テーマパークです。約30万年の歳月をかけて形成された玉泉洞は、全長約5キロメートル(公開部分890メートル)を誇る国内最大級の鍾乳洞で、100万本以上の鍾乳石が織りなす神秘的な地底世界を体験できます。

熱帯フルーツ園では、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツなど約100種450本の熱帯果樹を栽培しており、季節ごとの珍しい花や果実を観察できます。ハブ博物公園では沖縄の毒蛇について学べるほか、スーパーエイサーショーでは迫力ある沖縄伝統芸能を毎日4回上演しています。城下町エリアでは、紅型染め、琉球ガラス、陶芸、紙すきなど、沖縄の伝統工芸体験も楽しめます。

アクセスと訪問のポイント

おきなわワールドは沖縄本島南部に位置し、那覇空港から車で約30分でアクセスできます。公共交通機関を利用する場合は、那覇バスターミナルから54番(前川線)または83番(玉泉洞線)に乗車し、玉泉洞前バス停で下車してください。ただしバスの本数は限られているため、レンタカーの利用が便利です。

園内は広いため、文化財巡りと玉泉洞、熱帯フルーツ園などを含めて、少なくとも3〜4時間の見学時間を確保することをお勧めします。沖縄らしい亜熱帯の気候に備え、歩きやすい靴と暑さ対策をお忘れなく。伝統民家の中は風通しが良く涼しいので、休憩スポットとして活用するのもおすすめです。

Q&A

Q旧上里家住宅主屋はいつ建てられた建物ですか?
A昭和9年(1934年)頃に、沖縄本島の北西に位置する離島・伊是名島で建築されました。平成7年(1995年)におきなわワールドに移築され、平成20年(2008年)4月18日に国の登録有形文化財に登録されました。
Q雨端(アマハジ)とは何ですか?
A雨端は沖縄民家特有の建築要素で、軒が外に向かって大きく張り出した庇のような空間のことです。強い日差しや横殴りの雨を防ぎ、来客との接客の場としても機能しました。内と外を緩やかにつなぐ、沖縄らしいおおらかな住空間を象徴しています。
Q旧上里家住宅主屋の中に入ることはできますか?
Aはい、建物内に入って見学することができます。現在は体験講座やイベント会場、琉球挙式の会場として使用されているほか、「ゆくい処(休憩所)」として開放されており、園内散策の途中で休憩することもできます。
Q伊是名島とはどのような島ですか?
A伊是名島は沖縄本島北部から北西約27キロメートルに位置する離島で、琉球王国の第二尚氏王統を開いた尚円王の生誕地として知られています。赤瓦の家並み、珊瑚の石垣、フクギの防風林など、沖縄の原風景が今も残る貴重な島です。
Qおきなわワールドではどのくらい時間をかけて見学すればよいですか?
A琉球王国城下町の文化財巡りに加え、玉泉洞や熱帯フルーツ園なども含めると、少なくとも3〜4時間は見学時間を確保されることをおすすめします。午前中から入園すると、ゆとりを持って園内を回ることができます。

基本情報

正式名称 おきなわワールド旧上里家住宅主屋
文化財指定 国登録有形文化財(平成20年4月18日登録)
建築年 昭和9年(1934年)頃
移築前所在地 沖縄県伊是名村字伊是名
移築年 平成7年(1995年)
構造 木造平屋建、寄棟造本瓦葺
建築面積 127㎡(約38坪)
現在地 沖縄県南城市玉城字前川1336(おきなわワールド内)
所有者 株式会社南都
おきなわワールド営業時間 9:00〜17:30(最終受付16:00)
入園料 大人2,000円 / 小人(4歳〜14歳)1,000円
アクセス 那覇空港から車で約30分 / 那覇バスターミナルより54番・83番バスで玉泉洞前下車
お問い合わせ 098-949-7421(おきなわワールド)

参考文献

おきなわワールド旧上里家住宅主屋 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/187063
国・登録有形文化財の古民家紹介 - おきなわワールド公式サイト
https://www.gyokusendo.co.jp/okinawaworld/culturalproperties/
沖縄古民家 ミニ辞典 - おきなわ物語
https://www.okinawastory.jp/feature/kominka/kominka_jiten
伊是名島 - おきなわ物語
https://www.okinawastory.jp/spot/1316
おきなわワールド内の旧民家4棟とフール一基 - 南城市役所
https://www.city.nanjo.okinawa.jp/movie_library/movie_ja/1579046288/1579232062/
登録有形文化財(建造物) - 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html

最終更新日: 2026.01.02

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