雪景色の中尊寺金色堂と岩手の名湯を巡る冬の旅|温泉ソムリエが教える心と体の癒し方
冬の岩手が教えてくれた、静寂と温もりの調和
こんにちは、観光協会の有馬大地です。温泉ソムリエの資格取得を目指しながら、日本各地の温泉文化を発信しています。今回は、私が実際に体験した岩手県の冬の魅力―雪に包まれた中尊寺金色堂と、体の芯から温まる名湯の数々をご紹介します。
岩手の冬は、正直言って寒いです。でも、その寒さがあるからこそ、金色堂の荘厳さがより際立ち、温泉の温もりが格別なものになるんです。去年の2月、私は3泊4日で平泉と花巻温泉郷を巡ってきました。その時の体験を、温泉の専門知識と合わせてお伝えしますね。
世界遺産・中尊寺金色堂|雪の静寂に包まれた黄金の輝き
冬だからこそ感じる、900年の時の重み
平泉駅から巡回バス「るんるん」で約10分。中尊寺の参道入口に降り立つと、まず驚くのは音の少なさです。雪が音を吸収するからでしょうか、普段より静かで、自分の足音と呼吸音だけが聞こえてきます。
月見坂と呼ばれる参道は、冬は雪で覆われていて、両脇の杉の大木に積もった雪が、まるで天然のアーチを作っているようでした。登りはゆっくりで約15分。滑り止めの付いた靴か、簡易アイゼンがあると安心です。実際、私は途中で2回ほど滑りそうになりました。地元の方が「雪の日は、足の裏全体で地面を踏むように歩くといいよ」と教えてくれて、それからは随分楽になりました。
金色堂の圧倒的な存在感
覆堂(おおいどう)に守られた金色堂は、外の寒さとは対照的に、温度管理された空間にあります。入った瞬間、金箔で覆われた堂内の輝きに息を呑みました。冬の柔らかい光が、夏とは違った陰影を作り出していて、螺鈿細工の一つ一つがきらきらと光っていました。
藤原清衡が建立したこの御堂は、極楽浄土を現世に表現したものだと言われています。私が特に印象的だったのは、須弥壇の下に安置されている藤原三代のミイラの存在です。900年前の人々が、この同じ空間で祈りを捧げていたかと思うと、時間の流れの不思議さを感じずにはいられませんでした。
拝観料は大人800円。覆堂内は撮影禁止ですが、その分、目に焼き付けようと必死に見入ってしまいます。平均滞在時間は20〜30分ですが、私は1時間近く居座ってしまいました。
岩手の名湯巡り|泉質の違いを楽しむ温泉ソムリエ流入浴法
花巻温泉郷|多彩な泉質のワンダーランド
中尊寺から車で約1時間。花巻温泉郷は、実は12の温泉地の総称なんです。それぞれに泉質が異なり、まさに温泉のテーマパークのような場所です。
私がまず訪れたのは「大沢温泉」。ここの魅力は、なんといっても混浴露天風呂「大沢の湯」です。といっても、女性専用時間帯(20:00〜21:00)もあるので、ご安心を。泉質はアルカリ性単純温泉で、pH8.3。肌がつるつるになる、いわゆる「美肌の湯」です。
入浴の手順をご説明しましょう:
- かけ湯:必ず体を洗ってから入浴。最初は足先から順に、お湯に体を慣らします(約1分)
- 半身浴:最初の5分は、みぞおちまでゆっくり浸かる
- 全身浴:慣れてきたら肩まで浸かる。ただし10〜15分が目安
- 休憩:一度上がって5分ほど休憩。水分補給を忘れずに
- 繰り返し:これを2〜3回繰り返す
大沢温泉の露天風呂は、豊沢川に面していて、冬は雪見風呂が楽しめます。私が入った日は、ちょうど雪が降っていて、頭に雪を乗せながらの入浴は、まさに極楽でした。温度は約42度。熱すぎず、長湯にもちょうどいい温度設定です。
鉛温泉・藤三旅館|日本一深い自噴天然岩風呂
花巻温泉郷の中でも特に個性的なのが、鉛温泉の藤三旅館です。ここの名物は、深さ約1.25mの立ち湯「白猿の湯」。底から自然に湧き出る源泉に、立ったまま入るという珍しいスタイルです。
泉質はアルカリ性単純温泉ですが、大沢温泉とは違った肌触り。少しとろみがあって、まるで化粧水に浸かっているような感覚でした。温度は約40度とぬるめなので、30分以上入っていても、のぼせません。
ここでの注意点:
- 混浴ですが、女性専用時間があります(7:00〜8:00、15:00〜16:00)
- 深いので、身長150cm以下の方は要注意
- 底が滑りやすいので、手すりをしっかり掴んで
私は男性なので通常時間に入りましたが、地元の常連さんと一緒になり、「ここの湯は腰痛に効くって、昔から言われてるんだ」と教えてもらいました。医学的根拠は別として、伝統的にそう信じられているというのは、興味深いですよね。
八幡平の秘湯|松川温泉と藤七温泉
岩手県北部の八幡平にも、素晴らしい温泉があります。松川温泉は、乳白色の硫黄泉で有名。硫化水素の香りが強烈ですが、これがまた温泉好きにはたまらないんです。
泉質は単純硫黄泉で、pH2.9の酸性。肌の弱い方は長湯に注意が必要ですが、殺菌効果が期待できると伝統的に言われています。私は15分ほどで上がりましたが、体がポカポカして、外気温マイナス5度でも寒さを感じませんでした。
藤七温泉は、標高1,400mにある東北最高地の温泉。ここの露天風呂からの眺めは格別で、岩手山を一望できます。泉質は単純硫黄泉ですが、松川温泉より硫黄臭は控えめ。底が泥になっていて、この泥を体に塗ると肌がすべすべになると言われています。
冬の岩手を満喫する、おすすめ湯めぐりモデルコース
1泊2日で巡る、世界遺産と温泉の旅
実際に私が体験して良かったコースをご紹介します:
1日目
- 9:00 盛岡駅出発
- 10:30 中尊寺到着、金色堂拝観(約2時間)
- 12:30 平泉レストハウスで前沢牛のランチ
- 14:30 花巻温泉郷へ移動
- 15:30 大沢温泉チェックイン、露天風呂を満喫
- 18:00 夕食(地元の食材を使った和食膳)
- 20:00 女性専用時間に合わせて再入浴
- 21:30 湯上がりに瓶入りコーヒー牛乳で一息
2日目
- 6:00 朝風呂(朝の澄んだ空気の中での入浴は格別)
- 8:00 朝食
- 10:00 チェックアウト、鉛温泉へ移動
- 10:30 藤三旅館で立ち湯体験
- 12:00 花巻市内でわんこそばに挑戦
- 14:00 盛岡へ向けて出発
- 15:30 盛岡駅到着
このコースなら、世界遺産も温泉も無理なく楽しめます。冬場は日が短いので、早めの行動がポイントです。
温泉ソムリエが教える、安全で快適な入浴のコツ
冬の温泉で気をつけたいこと
温度差によるヒートショックを防ぐため、以下の点にご注意ください:
- 脱衣所で体を慣らす:すぐに服を脱がず、2〜3分待つ
- かけ湯は念入りに:特に心臓から遠い場所から始める
- 水分補給:入浴前後で合計500mlは飲む
- 飲酒は控えめに:入浴前の飲酒は危険です
タトゥーがある方へ
残念ながら、今回ご紹介した温泉施設は、基本的にタトゥー不可です。ただし、以下の対策があります:
- 小さなものなら、防水シールで隠す
- 貸切風呂を利用する(料金は高めですが)
- 事前に施設に相談する(柔軟に対応してくれることも)
湯上がりの一杯と、岩手の地元グルメ
温泉の後の楽しみといえば、やっぱり湯上がりの一杯ですよね。私のおすすめは:
- 瓶入りコーヒー牛乳:定番ですが、これが一番
- 地サイダー:花巻には「マルカンサイダー」という地元の炭酸飲料が
- 岩手の地酒:「南部美人」の冷酒を、少しだけ
食事では、以下がおすすめ:
- 前沢牛:とろけるような霜降り肉
- わんこそば:花巻が発祥の地
- じゃじゃ麺:盛岡三大麺の一つ
- 南部煎餅:お土産にも最適
まとめ|冬の岩手で見つけた、日本の美しさ
3泊4日の旅を終えて盛岡駅に戻ったとき、体は温泉でリフレッシュし、心は中尊寺の荘厳さに満たされていました。岩手の冬は確かに寒いけれど、その寒さがあるからこそ、温泉の温もりや、人の優しさがより一層身に沁みるんです。
温泉ソムリエとして各地の温泉を巡っていますが、岩手の温泉の魅力は、その多様性にあります。同じ県内でも、これほど泉質が違い、それぞれに個性があるのは珍しい。しかも、どの温泉も地元の人に愛され、大切に守られている。
中尊寺金色堂の黄金の輝きと、温泉の湯けむり。900年前から続く祈りの場所と、太古から湧き出る温泉。岩手の冬の旅は、日本の歴史と自然の恵みを同時に体験できる、贅沢な時間でした。
皆さんも、ぜひ冬の岩手を訪れてみてください。寒さを恐れず、むしろその寒さを楽しみに変える―それが、日本の冬の旅の醍醐味だと、私は思います。
FAQ
Q1. 冬の岩手旅行に必要な持ち物は? A. 防寒具はもちろん、滑り止め付きの靴や簡易アイゼンがあると安心です。温泉用には、髪留めゴムと水分補給用の飲み物を。また、タオルは旅館で借りられますが、マイタオルがあると便利です。
Q2. 温泉初心者でも大丈夫? A. もちろんです!各施設に入浴方法の説明があり、分からないことは従業員の方が親切に教えてくれます。最初は大浴場から始めて、慣れてきたら露天風呂へ。無理せず、自分のペースで楽しんでください。
Q3. 車なしでも回れる? A. 可能です。盛岡駅から平泉へは電車で約1時間半、花巻温泉郷へは新花巻駅からバスが出ています。ただし、本数が限られるので、事前の時刻表確認は必須です。レンタカーがあると、より自由に動けます。
Q4. 最適な訪問時期は? A. 雪景色を楽しむなら1月下旬〜2月。ただし、積雪により交通に影響が出ることも。12月や3月前半なら、雪も少なめで動きやすいです。各施設の冬季営業時間も事前に確認しましょう。
Q5. 予算はどのくらい必要? A. 1泊2日で一人3〜5万円が目安。宿泊費(1泊2食付き)が15,000〜25,000円、交通費が往復1万円前後、その他食事や入浴料で5,000〜10,000円。日帰り入浴なら500〜1,500円で楽しめます。
参考サイト
- 中尊寺公式サイト:https://www.chusonji.or.jp/
- 花巻温泉公式サイト:https://www.hanamakionsen.co.jp/
- 大沢温泉:http://www.oosawaonsen.com/
- 藤三旅館:https://www.fujisan-ryokan.jp/
- 岩手県観光協会:https://www.iwate-kankou.jp/
- いわて花巻空港:https://iwate-hanamaki-airport.jp/