断崖絶壁に浮かぶ奇跡の建築
鳥取県の山深い場所に、建築の常識を覆す驚異的な建造物が存在します。三仏寺奥院、通称「投入堂(なげいれどう)」は、標高520メートルの断崖絶壁の窪みに、まるで宙に浮いているかのように建てられた木造建築です。この建物を初めて目にした人は誰もが「一体どうやって、誰が、このような場所に建てたのか」という疑問を抱かずにはいられません。
平安時代後期(1086年~1184年)に建立されたことが2001年の年輪年代測定によって判明しており、千年以上もの間、風雨や地震に耐えてきたその姿は、まさに奇跡と呼ぶにふさわしいものです。垂木の勾配は緩く、流造の母屋の両側に庇屋根をつけるなどの変化に富んだ構造は、平安時代の特徴を見事に表しています。
神秘の伝説と修験道の聖地
投入堂の名前の由来は、修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)が、法力を用いて建物を手のひらに乗るほど小さくし、断崖絶壁の岩窟に投げ入れたという伝説に由来します。この伝説は単なる物語ではなく、この場所が持つ神聖な力と、人知を超えた存在への畏敬の念を表現しています。
三徳山は706年に役行者が3枚の蓮の花びらを散らし、仏教に縁のある場所に落ちるように祈ったところ、その一枚がこの地に落ちたことから修験道の行場として開かれました。849年には慈覚大師によって阿弥陀如来・大日如来・釈迦如来の三尊が安置され、天台宗三徳山三仏寺として栄えました。
日本一危険な国宝への挑戦
投入堂は「日本一危険な国宝」とも呼ばれており、参拝には険しい山道を登る必要があります。しくいり橋を渡ると、輝石安山岩とその集塊岩の急な北斜面を利用した道が続き、鎖場や木の根を掴みながら登る箇所もあります。
参拝には適切な服装と靴が必要で、入山前に靴のチェックを受けます。不適切な場合は、伝統的なわらじ(700円)を購入することができます。また、安全のため一人での入山は禁止されており、必ず2人以上での参拝が必要です。
参拝登山の道中では「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えながら登ることで、心身を清める修行体験ができます。険しい道のりですが、その分達成感は格別で、精神的な成長を感じることができるでしょう。
建築美と自然の調和
投入堂の建築的特徴として、軽快な反りを持つ屋根と、堂を支える長短様々な柱の構成が挙げられ、建築美の観点からも優れた建物です。屋根は優雅な流造様式で造られ、檜皮葺きで覆われています。建物の上部には自然の岩が庇のように張り出しており、千年以上にわたって風雨から建物を守ってきました。
全体的に木割が細く、柱、桁、梁、垂木などには大きく面をとるなど、平安時代の建築様式の特徴がよく表れています。この繊細な建築が、険しい自然環境の中で千年以上も存続していることは、日本建築の技術の高さを物語っています。
四季折々の絶景と周辺環境
三徳山一帯は史跡名勝に指定されており、断崖絶壁や大岩窟が入り乱れ、四季折々の美しい景観を楽しめます。山には照葉樹林帯から冷温帯落葉広葉樹林帯まで、人工林で分断されることなく連続する県内でも貴重な原生的自然林が残っています。
春は新緑、夏は深い緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、季節ごとに異なる表情を見せる三徳山。全国森林浴の森百選にも選ばれており、豊かな自然の中での参拝は、都会の喧騒を忘れさせてくれる貴重な体験となるでしょう。
アクセスと参拝情報
JR山陰本線倉吉駅から「上吉原」方面行きバスで約40分、「三徳山参道入り口」で下車します。車の場合、関西方面からは中国自動車道「院庄IC」より国道179号線で約50分です。
参拝受付時間は8:00~15:00(本堂までは17:00)、入山料は本堂まで大人400円、小中学生200円。投入堂参拝は追加で大人800円、小中学生400円が必要です。雨天や積雪時は参拝登山ができず、例年12月から4月1日頃までは冬季閉鎖となります。
投入堂を間近で見るためには厳しい山道を辿る必要がありますが、ふもとの車道にある「投入堂遙拝所」から望遠鏡を使って遠望することも可能です。体力に自信のない方や、天候不良時にはこちらからの参拝もおすすめです。
Q&A
- 投入堂への参拝登山にはどのくらいの時間がかかりますか?
- 本堂から投入堂までの往復で約1時間半から2時間程度かかります。ただし、体力や混雑状況により前後します。険しい道のりですので、余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
- どのような服装と持ち物が必要ですか?
- 動きやすく両手が自由に使える服装が必須です。靴は滑りにくいものが必要で、入山前にチェックがあります。不適切な場合は伝統的なわらじ(700円)を購入できます。軍手、タオル、水分補給用の飲み物も準備しましょう。
- 一人でも参拝登山はできますか?
- いいえ、安全のため一人での入山は禁止されています。必ず2人以上でご参拝ください。また、雨天や積雪時は参拝登山ができません。
- 高齢者や子供でも参拝できますか?
- 参拝道は非常に険しく、鎖場や岩場を登る必要があるため、ある程度の体力と登山経験が必要です。小さなお子様や体力に自信のない方は、ふもとの遙拝所からの参拝をおすすめします。
- 写真撮影は可能ですか?
- はい、投入堂の撮影は可能です。ただし、参拝道は両手を使って登る箇所が多いため、カメラは首から下げるなど、両手が自由になるようにしてください。
参考文献
- 三徳山三佛寺 公式ホームページ
- https://www.mitokusan.jp/
- とっとり旅 【公式】鳥取県観光旅行情報サイト - 三徳山三佛寺
- https://www.tottori-guide.jp/tourism/tour/view/168
- 三仏寺奥院(投入堂) 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/123947
- Mount Mitoku Sanbutsuji & Nageiredo | Japan Experience
- https://www.japan-experience.com/all-about-japan/tottori/temples-shrines/sanbutsuji
- Mitokusan Sanbutsuji Temple | Travel Japan (JNTO)
- https://www.japan.travel/en/japans-local-treasures/mitokusan-sanbutsuji-temple/
基本情報
| 名称 | 三仏寺奥院(投入堂) |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県東伯郡三朝町三徳1010 |
| 建立年代 | 平安時代後期(1086年~1184年) |
| 文化財指定 | 国宝(1952年指定) |
| 建築様式 | 懸造(かけづくり)、流造 |
| 標高 | 約520メートル |
| 開山 | 慶雲3年(706年)- 役行者による |
| 宗派 | 天台宗 |
| 入山料 | 本堂まで400円、投入堂参拝追加800円 |
| 参拝時間 | 8:00~15:00(登山受付) |
| アクセス | JR倉吉駅からバス約40分 |
最終更新日: 2026.01.14