木橋のふりをしたコンクリート橋

三朝橋は、鳥取県東伯郡三朝町の三徳川に架かる昭和9年(1934年)竣工の鉄筋コンクリート橋で、平成17年(2005年)7月12日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。橋長69メートル、幅員5.5メートル、桁高を抑えたT形桁を七連並べる。

年代を知らずに渡ると、これがコンクリートだと気づかないこともある。

細部まで手が込んでいる。橋脚は4本の円柱を貫でつなぎ、その上に肘木を置く。貫も肘木も日本の木造建築の部材名である。桁は意図的に薄く見せ、床版が板一枚のように見えるよう抑えてある。床版の両端には一定の間隔で目地が切られ、板を並べた床のように見せる。高欄には擬宝珠が並び、橋上には春日燈籠が据えられている。

三徳川は三朝温泉街を東西に貫いて流れ、この橋が町の要になっている。両岸に旅館が並び、県道273号がここを渡る。地元では三朝川と呼ぶ。夏の夕方には、川石に棲むカジカガエルの澄んだ声が谷いっぱいに響く。

「造形の規範」という登録理由

登録有形文化財の登録基準は三つある。三朝橋が該当したのはその第二、「造形の規範となっているもの」である。多くの登録建造物が該当する景観への寄与という基準よりも範囲が狭く、建物の古さではなく、つくり手の意図の質を評価する項目だ。

その意図を理解するには前史がいる。地元に伝わるところでは、ここには明治18年(1885年)架設の大岩橋という木橋があり、大正7年(1918年)の大水害で流失した。以後10年ほど仮橋が架かっていたという。恒久橋を架けるとなれば、すでに一度橋を壊している川に対して鉄筋コンクリートを選ぶのは工学的に当然の判断である。問題は意匠のほうだった。古い木造旅館の風情で成り立っている温泉町の中央に、素っ気ないコンクリート桁を落とすわけにはいかない。

設計者をめぐって

設計は京都帝国大学の武田五一(1872年から1938年)によるとされる。「関西建築界の父」と称された建築家で、山口県庁舎および県会議事堂(国の重要文化財)を手がけ、生涯に二十件ほどの橋梁を設計したと伝えられる。ただし二点、注意が要る。文化庁の国指定文化財等データベースの記載には設計者名がなく、この帰属は地元資料と二次資料に依拠している。またその資料間で名前の表記が揺れている(「五一」と「伍一」)。地元に定着した伝承を地方紙の報道が裏づけている、という程度に受け止めておくのが正確だろう。

施工に関わる細部にも、国のデータベースには載らない地元の記録がある。高欄の石材は鳥取県東部の若桜産の御影石とされる。親柱の橋名は臨済宗相国寺派の管長・橋本独山の筆、橋銘板は倉吉の鋳物師・斎江家の鋳造によると伝わる。斎江家の用具および製品は、それ自体が国の重要有形民俗文化財に指定されている。

功績の配分がどうであれ、結果は課題に応えている。新しい材料を隠すのではなく、コンクリートを使って木橋の比例を再現した。しかもその比例は、三徳川を相手に木造では維持できない精度で保たれている。町は流されない橋を得て、街並みを損なわずに済んだ。

橋を見る、橋の下に入る

三朝橋は現役の公共インフラである。門も開橋時間も料金もなく、いつでも歩けるし、渡れるし、撮影もできる。歩道は両側にある。全体を撮るなら下流側の河原からがよい。七連の桁と橋脚のリズムが読み取れる。橋の上では、床版の端に切られた目地を見下ろし、燈籠の据わり方を見上げるとよい。夜間はライトアップされる。

東詰の真下には河原風呂がある。三徳川の河原に大きな石を組んでつくった露天風呂で、無料、24時間、混浴、目隠しは部分的でしかない。橋の脇の階段を降りる前に知っておいたほうがよい点だ。水着での入浴は認められておらず、入る人はタオルを持参する。隣接して足湯「河原の湯」があり、こちらも無料・通年24時間だが、奇数日の午前中は清掃で使えない。橋と風呂のあいだには、昭和4年(1929年)に当地で撮影された映画「三朝小唄」の記念モニュメントが立っている。主人公の男女が三朝橋で寄り添う姿のブロンズ像である。

日本遺産のなかの三朝橋

三朝橋は、平成27年(2015年)の第一回認定で選ばれた日本遺産ストーリー第012番「六根清浄と六感治癒の地」の構成文化財のひとつである。ストーリーは、上流の三徳山と三朝温泉を結ぶ。三徳山には三仏寺奥院の投入堂があり、断崖の窪みに嵌め込まれたこの国宝は「日本一危ない国宝」と呼ばれる。参詣者は登る前に三朝の湯で身を清めた、と伝えられてきた。

三朝温泉の湯は世界でも屈指のラドン含有量を持ち、長期滞在して湯を使う湯治の慣習が根づいてきた。共同浴場は河原風呂のほか、温泉発祥の地とされる株湯、橋のたもとのたまわりの湯などがある。白壁土蔵群の残る倉吉までは車で20分ほどで、鳥取県中部を回る拠点として使いやすい。

Q&A

Q三朝橋は自由に見学できますか。料金はかかりますか。
A自由に見学できます。三朝橋は鳥取県道273号の現役の道路橋で、24時間通行可能、無料、撮影の制限もありません。両側に歩道があり、夜間はライトアップされます。
Q三朝橋はいつ架けられ、いつ文化財に登録されましたか。
A竣工は昭和9年(1934年)です。登録有形文化財(建造物)としての登録年月日は平成17年(2005年)7月12日、登録番号は31‐0092、告示は同年8月2日です。所有者は鳥取県です。
Q三朝橋を設計したのは誰ですか。
A京都帝国大学の建築家・武田五一によるとされています。ただし文化庁の国指定文化財等データベースには設計者の記載がなく、地元資料や報道に基づく伝承として扱うのが正確です。資料によって「伍一」と表記される場合もあります。
Q三朝橋の下にある河原風呂はどんな温泉ですか。
A三徳川の河原に石を組んだ無料の露天風呂です。橋の脇の階段から下ります。24時間利用可、混浴で、目隠しは部分的です。水着での入浴は認められていません。併設の足湯「河原の湯」も無料ですが、奇数日の午前中は清掃のため入れません。
Q三朝橋へは公共交通機関でどう行けばよいですか。
AJR山陰本線の倉吉駅から三朝温泉行きの路線バスで約20分です。橋は温泉街の中心にあり、バス停からも主要な旅館からも徒歩圏内にあります。

基本情報

名称三朝橋(みささばし)
所在地鳥取県東伯郡三朝町三朝
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号31‐0092
指定年平成17年(2005年)7月12日登録、同年8月2日告示(第46回登録)
員数1基
寸法鉄筋コンクリート造桁橋、橋長69メートル、幅員5.5メートル、七連、高欄及び燈籠付
所有者鳥取県
公開状況常時通行可・無料(現役の県道橋)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「三朝橋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004817
文化遺産オンライン「三朝橋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/117897
文化庁 日本遺産ポータルサイト「三朝橋(三朝温泉)」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/1044/
文化庁 日本遺産ポータルサイト ストーリー012「六根清浄と六感治癒の地」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story012/
三朝温泉公式サイト「三朝橋・映画『三朝小唄』の像」
https://misasaonsen.jp/sightseeings/sightseeing-986/
三朝温泉公式サイト 足湯「河原の湯」
https://misasaonsen.jp/sightseeings/sightseeing-1080/

最終更新日: 2026.08.21