室町中期の禅宗様仏堂 ― 1951年に国宝
円覚寺舎利殿は、神奈川県鎌倉市山ノ内の円覚寺にある室町時代中期の仏堂で、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。それに先立つ1899年(明治32年)4月5日には、古社寺保存法に基づく特別保護建造物となっている。員数は1棟。構造及び形式は桁行三間、梁間三間、一重もこし付、入母屋造、こけら葺。所有は円覚寺である。
文化庁の解説は簡潔である。円覚寺は弘安5年(1282年)に北条時宗によって創建された寺で、舎利殿は室町時代中頃に建立されたものと考えられている。禅宗とともに伝来した宋の建築様式・唐様を採用した仏堂として日本最古のものであり、かつ最も純粋な姿を示すものである。
唐様は禅宗様ともいい、鎌倉時代に禅宗とともに輸入された北宋の建築様式をいう。最古であることと最も純粋であることの二点が、この建物の評価にあたる。神奈川県で唯一の国宝建造物でもある。
もこし ― 屋根は二層でも内部は一階
外から見ると屋根が二層に重なるが、内部は一階建てである。下の屋根は「もこし」と呼ばれ、装飾と風雨よけを兼ねた庇にあたる。
文化庁の記載にある「一重もこし付」がこれを指す。一重は建物が一層であることを表し、そこにもこしが付く。層の数と屋根の数が一致しないという点は、外観から誤解されやすい。
禅宗様の特徴は各所に現れる。扇垂木は垂木を放射状に配する手法、粽柱は柱の上下を細く削る形、花頭窓は上部を火炎形に象った窓である。軒先の反りも禅宗様の特徴とされる。
内部は床を張らない土間である。和様の仏堂が板敷や畳敷とするのに対し、禅宗様は土間を用いる。床を張らないという選択も、様式の一部にあたる。
太平寺から移された建物
この建物は円覚寺のために建てられたものではない。
かつては円覚寺の創建当初の建築と見られていたが、現在では室町時代に太平寺の仏殿を移したものと考えられている。太平寺は西御門にあった尼寺で、源頼朝が池ノ禅尼への報恩のために建立したと伝わる。室町時代後期に廃寺となり、仏殿は円覚寺へ、本尊の聖観音は東慶寺へ移された。
文化庁が建立年代を「室町時代中頃」とし、年代欄を1393年から1466年という幅で示すのは、この経緯による。円覚寺の創建は1282年だが、建物はそれより後のものである。寺の創建年と建物の年代は別であり、混同されやすい。
舎利殿は円覚寺の塔頭である正続院の内にある。正続院は開山の無学祖元の塔所で、建武2年(1335年)に夢窓疎石によって現在地へ移されたと伝わる。
仏舎利を納める
舎利殿の名は、内部に仏舎利を安置することによる。源実朝が中国の宋から請来した仏舎利で、釈迦の歯と伝わることから仏牙舎利と呼ばれる。
内陣にはこの仏舎利を納めた水晶塔が安置され、左右に観音菩薩像と地蔵菩薩像が祀られている。
舎利殿の後ろには、開山の無学祖元坐像を奉安する開山堂がある。こちらは非公開である。
拝観 ― 年に数回、外観のみ
舎利殿は通常非公開である。塔頭の正続院は雲水の修行道場であり、原則として拝観できない。
特別公開は例年3回程度で、正月三が日、5月の連休中の数日、11月上旬の宝物風入の期間である。いずれも公開されるのは建物の外観のみで、内部には入れない。
公開時には、円覚寺の拝観料とは別に舎利殿の拝観料が必要である。実施の有無と日程は年により変わるため、訪問前に円覚寺へ確認したい。
円覚寺の拝観時間は午前8時から午後4時30分まで、12月から2月は午後4時までである。交通はJR横須賀線の北鎌倉駅から徒歩約1分。総門から正続院までは徒歩約5分、約300メートルである。
Q&A
- 円覚寺舎利殿はいつ建てられ、いつ国宝に指定されましたか。
- 文化庁は室町時代中頃の建立とし、年代を1393年から1466年の幅で示します。1899年(明治32年)4月5日に特別保護建造物、1951年(昭和26年)6月9日に国宝へ指定されました。神奈川県で唯一の国宝建造物です。
- 円覚寺舎利殿が国宝に指定された理由は何ですか。
- 文化庁は、禅宗とともに伝来した宋の建築様式である唐様を採用した仏堂として日本最古のものであり、かつ最も純粋な姿を示すものと評価しています。最古であることと最も純粋であることの二点が根拠です。
- 屋根が二層に見えるのに一階建てなのはなぜですか。
- 下の屋根が「もこし」と呼ばれる庇で、装飾と風雨よけを兼ねているためです。文化庁の記載にある「一重もこし付」がこれを指します。層の数と屋根の数が一致しないため、外観から誤解されやすい点です。
- 円覚寺の創建は1282年ですが、建物も同じ頃のものですか。
- いいえ。かつては創建当初の建築と見られていましたが、現在では室町時代に太平寺の仏殿を移したものと考えられています。太平寺は西御門にあった尼寺で、室町時代後期に廃寺となり、仏殿は円覚寺へ、本尊の聖観音は東慶寺へ移されました。
- 円覚寺舎利殿は拝観できますか。
- 通常は非公開です。特別公開は例年3回程度で、正月三が日、5月の連休中の数日、11月上旬の宝物風入の期間です。いずれも外観のみで内部には入れず、円覚寺の拝観料とは別に料金が必要です。日程は年により変わるため事前に確認してください。
基本情報
| 名称 | 円覚寺舎利殿(えんがくじしゃりでん) |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県鎌倉市山ノ内409 円覚寺塔頭 正続院 |
| 指定区分 | 国宝(建造物)/神奈川県で唯一の国宝建造物 |
| 指定年 | 1899年(明治32年)4月5日 特別保護建造物/1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行3間、梁間3間、一重、もこし付、入母屋造、こけら葺。内部は床を張らない土間。扇垂木、粽柱、花頭窓。室町時代中期 |
| 所有者 | 円覚寺 |
| 公開状況 | 通常非公開。特別公開は例年3回程度(正月、春の連休中、秋の宝物風入)で外観のみ。円覚寺の拝観料とは別に料金が必要 |
参考文献
- 文化遺産オンライン 円覚寺舎利殿
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/188443
- 日本交通公社 全国観光資源台帳 円覚寺舎利殿
- https://tabi.jtb.or.jp/res/140358-
- あっとよこはま 円覚寺 舎利殿
- https://www.at-yokohama.net/spots/722
- 円覚寺 公式サイト
- https://www.engakuji.or.jp/
最終更新日: 2026.09.03