7巻・18冊・6通 ― 2023年に重要文化財
三藐院記/附 関白宣下は、京都府京都市右京区宇多野上ノ谷町1-2にある記録で、2023年(令和5年)6月27日に重要文化財に指定された。所有は公益財団法人陽明文庫である。
員数は7巻、18冊、6通である。巻・冊・通という三つの単位が並ぶ。作者は近衛信尹(1565年から1614年)と記録され、紙本墨書とされる。
2023年の指定は、ここまで扱った物件のなかで最も新しい部類にあたる。萬福寺の2024年に次ぐ。指定が新しいだけあって、記録も詳しい。
寸法欄に「法量等省略」と書かれている
三藐院記/附 関白宣下の寸法の欄に、これまで見なかった書き方がある。
法量等省略、とある。法量は寸法をいう。空欄ではなく、省略したと明記されている。
ここまで扱った物件では、寸法欄が空欄のことが多かった。空欄の場合、記録されていないのか、記録する必要がないと判断されたのかは分からない。
本件は違う。省略という語によって、書かなかったことが示されている。7巻18冊6通あり、それぞれ大きさが違うため、一つの値で示せないからと考えられる。
金剛場陀羅尼経のト書は「云々」で終わっていた。読めるが全部は写さないという印である。省略という語も、書けるが書かないことを示す。記録は、書かない理由を語で区別している。
本記より別記のほうが量が多い
三藐院記/附 関白宣下の構成についても、はっきり書かれている。
同記録は、日次記である本記と、件別に記録された別記からなるが、別記の方が詳細で、量も本記にまさっている、とある。
日次記は日付順に書く日記である。別記は事柄ごとにまとめたものをいう。
日付順の記録より、テーマ別の記録のほうが多い。書き手が何に注意を向けたかが、量の配分に現れている。
文化庁はさらに踏み込む。別記は、信尹が関心を寄せる内容ごとにまとめた記録であり、信尹の関心の所在を明らかにしうる記録でもある、とある。
何を書き残したかが、その人が何に関心をもったかを示す。記録の内容ではなく、記録の作り方が史料になる、という見方である。
附が原文書、本体がその筆写である
三藐院記/附 関白宣下における附指定の関係にも特徴がある。
本体に含まれる「関白宣下記」について、文化庁は次のように記す。信尹に対する関白宣下に際して、朝廷より下された一連の文書(附指定「関白宣下」)を似寄りの料紙をあつらえて筆写したものである。
附指定されている「関白宣下」が、朝廷から下された原文書である。本体に含まれる「関白宣下記」は、それを写したものにあたる。
紙本著色当麻曼荼羅縁起では、本体が鎌倉時代で附の添書が1793年と、附のほうが新しかった。本件は逆で、附が原文書、本体がその写しになる。
似寄りの料紙をあつらえて、という一句も注意を引く。写すにあたって、原文書に近い紙を用意している。内容だけでなく、見た目まで写そうとしたことになる。
閲覧
三藐院記/附 関白宣下の所有は公益財団法人陽明文庫で、京都府京都市右京区にある。文庫が所蔵する記録であり、常設で公開される性格のものではない。
紙に書かれたものは光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。7巻18冊6通のすべてが一度に見られる状態にあるとは考えにくい。
文化庁は、安土桃山時代から江戸時代初期に至る政治史、文化史のみならず、配流中の薩摩での記事等九州地域史の動向をも伺い知ることができる史料であり、たいへん価値が高い、とする。
閲覧や調査については文庫の定める手続きによる。訪問前に確認したい。
Q&A
- 三藐院記はいつ指定されましたか。
- 2023年(令和5年)6月27日に重要文化財に指定されました。員数は7巻、18冊、6通、所有は公益財団法人陽明文庫です。作者は近衛信尹と記録されています。
- 寸法は分かりますか。
- 寸法欄には「法量等省略」とあります。空欄ではなく、省略したと明記されています。7巻18冊6通それぞれ大きさが違うため、一つの値で示せないからと考えられます。
- どのような構成ですか。
- 文化庁は「日次記である本記と、件別に記録された別記からなるが、別記の方が詳細で、量も本記にまさっている」と記します。日付順の記録より、事柄ごとにまとめた記録のほうが多くなっています。
- 附指定は何ですか。
- 「関白宣下」で、朝廷から下された一連の原文書です。本体に含まれる「関白宣下記」は、それを似寄りの料紙をあつらえて筆写したものと記されます。附が原文書、本体がその写しという関係です。
- 何が評価されているのですか。
- 文化庁は「安土桃山時代から江戸時代初期に至る政治史、文化史のみならず、配流中の薩摩での記事等九州地域史の動向をも伺い知ることができる史料であり、たいへん価値が高い」と記します。
基本情報
| 名称 | 三藐院記/附 関白宣下(さんみゃくいんき) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市右京区宇多野上ノ谷町1-2 |
| 指定区分 | 重要文化財(歴史資料/書跡・典籍/古文書)/「関白宣下」が附指定 |
| 指定年 | 2023年(令和5年)6月27日 重要文化財 |
| 員数 | 7巻、18冊、6通 |
| 寸法 | 寸法欄には「法量等省略」とあり、空欄ではなく省略と明記される。紙本墨書。作者は近衛信尹(1565年から1614年)。時代は安土桃山から江戸 |
| 所有者 | 公益財団法人陽明文庫 |
| 公開状況 | 文庫が所蔵する記録で、常設の公開ではない。閲覧は文庫の定める手続きによる |
参考文献
- 文化遺産オンライン 三藐院記 附 関白宣下
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/589776
- 文化庁 国指定文化財等データベース 同物件
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/00012008
- 公益財団法人陽明文庫
- https://ymbk.sakura.ne.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.05