桑折西山城跡:伊達氏の栄光が始まった地
福島県桑折町の高館山に静かに佇む桑折西山城跡は、日本を代表する戦国大名・伊達氏の発祥の地として知られる国指定史跡です。のちに仙台藩を築き、「独眼竜」の異名で知られる伊達政宗を輩出した伊達家が、その勢力を拡大していった原点がまさにこの地にあります。
復元された天守閣が観光客を集める城とは異なり、桑折西山城は戦国時代の姿をそのまま残す山城遺跡です。土塁や空堀、石積みといった防御施設が当時の姿で保存されており、歴史愛好家や城郭ファンにとっては、まさに宝物のような存在といえるでしょう。かつて武将たちが歩いた山道を辿りながら、戦国の息吹を肌で感じることができる貴重な場所です。
歴史の舞台:辺境の砦から陸奥守護の居城へ
桑折西山城の歴史は、1189年(文治5年)に遡ります。源頼朝の奥州合戦に従軍して功績を挙げた常陸入道念西(のちの伊達朝宗)が、恩賞として伊達郡を拝領し、この地に居を構えたのが始まりとされています。以来、伊達氏は「伊達」の姓を名乗り、東北地方における大勢力へと成長していきました。
城が最盛期を迎えたのは、伊達氏第14代当主・伊達稙宗の時代です。1532年(天文元年)頃、稙宗は居城を梁川城から桑折西山城に移し、大規模な改修を行いました。この時すでに稙宗は陸奥国守護に任じられており、西山城は名実ともに奥州の政治的中心地となりました。1536年(天文5年)には、分国法「塵芥集」がこの城で制定されています。これは戦国大名による法令集として非常に体系的なもので、織田信長の政策を30年も先取りしていたと評価されています。
しかし、西山城の歴史で最も劇的な出来事は「天文の乱」です。1542年(天文11年)、稙宗と嫡男・晴宗の対立が激化し、晴宗は父を西山城内に幽閉するという事件が発生。この争いは伊達家を二分し、さらには南東北の諸大名をも巻き込んだ大規模な内乱へと発展しました。約7年にわたる争いの末、将軍足利義輝の仲裁により和睦が成立。稙宗は丸森城に隠居し、晴宗は米沢城へ移転。西山城は廃城となりました。
国史跡に指定された理由
桑折西山城跡は1990年(平成2年)2月19日、国の史跡に指定されました。その理由として、いくつかの重要な価値が挙げられます。
まず、その規模の壮大さです。東西約1.3キロメートル、南北約1キロメートルにわたる城域は、戦国時代の山城としても際立った大きさを誇ります。本丸、二ノ丸、中館、西館といった複数の曲輪から構成される複郭式の縄張りは、伊達氏の権勢を如実に物語っています。
また、発掘調査により、本丸には稙宗が政治や儀式、接待を行った中心建物の遺構が確認されています。柱跡の位置を示す展示がなされており、往時の様子を想像することができます。
さらに、石塁、空堀、枡形状虎口など、戦国時代の軍事的防御施設が良好な状態で残されていることも大きな価値です。これらの遺構は、当時の築城技術や軍事思想を理解する上で貴重な資料となっています。
そして何より、伊達氏発祥の地としての文化的・歴史的意義は計り知れません。ここから伊達氏は東北の覇者へと駆け上がり、その歴史は今日の宮城・福島両県の地域アイデンティティに深く根付いています。
見どころ・魅力
桑折西山城跡では、いくつかの見どころを巡ることができます。
本丸は標高193メートルの高館山山頂に位置しています。ここには伊達稙宗が政務を執った中心建物の跡が展示されており、柱位置を示すポールが往時の建物規模を伝えています。本丸からは福島盆地を一望でき、東北新幹線や東北本線、国道4号線、桑折町の街並みが眼下に広がります。この眺望を見れば、奥州街道と羽州街道の分岐点という交通の要衝にこの城が築かれた理由がよく分かるでしょう。
本丸の西側に広がる中館・西館エリアには、戦国時代末期に改修された高度な防御施設が残されています。敵を誘い込んで四方から攻撃する枡形状虎口や、深く掘られた空堀は、当時の築城技術の粋を集めたものです。
登城前には、「万正寺の大カヤ」で知られる老人福祉センター「大かや園」に併設された桑折西山城跡ガイダンス施設の見学をお勧めします。出土品の展示や解説パネルがあり、城跡探訪の予備知識を得ることができます。
四季折々の自然も魅力の一つです。春の桜、夏の緑陰、秋の紅葉、冬の雪景色と、季節ごとに異なる表情を見せる城跡は、歴史散策と自然観賞の両方を楽しめる場所となっています。
周辺情報
桑折町には城跡以外にも多くの見どころがあります。伊達氏発祥の地として、伊達朝宗の墓所をはじめ、ゆかりの寺社や史跡が点在しています。明治時代に建てられた旧伊達郡役所は、美しい洋風建築として一見の価値があります。また、奥州街道と羽州街道が分かれる「追分」は、かつての交通の要衝を物語る歴史スポットです。
桑折町は「献上桃の郷」としても全国的に有名です。1994年(平成6年)以来、毎年この町の桃「あかつき」が皇室に献上されており、日本最高品質の桃として高い評価を受けています。糖度12度以上の厳選された桃は、7月から8月にかけて町内の直売所や農協で購入可能です。阿武隈川沿いに広がる桃畑は、春には一面ピンクの花で覆われ、「桃源郷」さながらの絶景となります。
城跡から車で約20分の場所には、東北有数の温泉地・飯坂温泉があります。1,200年以上の歴史を持つこの名湯で、城跡散策の疲れを癒すのも良いでしょう。松尾芭蕉も「奥の細道」の旅で立ち寄ったとされる由緒ある温泉です。
さらに足を延ばせば、伊達市の梁川城跡や、1189年の奥州合戦の舞台となった阿津賀志山防塁など、歴史ファン必見のスポットが点在しています。
おすすめの訪問時期
春(4月〜5月)は気候が穏やかで、城跡の桜も美しい季節です。夏(7月〜8月)は桃の最盛期と重なり、城跡探訪と桃狩りを組み合わせることができます。秋(10月〜11月)は紅葉が城跡を彩り、最も人気の高いシーズンの一つ。冬は雪に覆われた城跡が幻想的ですが、一部の登山道が通行困難になる場合があります。
毎年秋には「桑折西山城まつり」が開催され、歴史ファンで賑わいます。2021年には「全国山城サミット桑折大会」が開催され、全国から城郭愛好家が集まりました。NHK BSプレミアム「英雄たちの選択」でも特集され、注目を集めています。
Q&A
- 見学にはどのくらい時間がかかりますか?
- 本丸往復の基本コースで約1時間(駐車場からの徒歩20分含む)です。中館・西館まで足を延ばす場合は2〜3時間を見込んでください。じっくりと全ての遺構を見学したい方は半日程度の時間を確保することをお勧めします。
- 車でどこまで行けますか?
- 城内にも車道はありますが、道幅が狭く急坂が多いため、観音寺駐車場または「うぶかの郷」駐車場に車を停めて徒歩で登城されることをお勧めします。いずれの駐車場からも本丸まで徒歩約20分です。
- 御城印(ごじょういん)はありますか?
- はい、桑折西山城では御城印を販売しています。2種類のデザインがあり、町内の指定販売所でお求めいただけます。また、攻城団とのコラボチラシも配布されています。詳細は桑折町のウェブサイトをご確認ください。
- ボランティアガイドはいますか?
- 桑折町ではボランティアガイドによる案内を行っています。事前予約制となっておりますので、桑折町生涯学習課(024-582-2408)までお問い合わせください。ガイドの案内を受けることで、遺構の見方や歴史的背景をより深く理解することができます。
- 服装や持ち物の注意点はありますか?
- 山道を歩くため、履き慣れた運動靴やトレッキングシューズがおすすめです。夏場は水分補給用の飲み物、帽子、虫除けスプレーをお持ちください。雨天時や雨上がりは足元が滑りやすくなりますのでご注意ください。
基本情報
| 名称 | 桑折西山城跡(こおりにしやまじょうあと) |
|---|---|
| 別名 | 西山城、高館、赤館 |
| 指定 | 国指定史跡(平成2年2月19日指定) |
| 築城年代 | 文治5年(1189年)頃に創建、天文元年(1532年)頃に大改修 |
| 築城者 | 伊達稙宗(伊達氏第14代当主、仙台藩祖・政宗の曽祖父) |
| 廃城年 | 天文17年(1548年) |
| 城郭構造 | 複郭式平山城 |
| 標高 | 193メートル(高館山山頂) |
| 主な遺構 | 曲輪、石積土塁、空堀、枡形状虎口 |
| 所在地 | 〒969-1651 福島県伊達郡桑折町大字万正寺 |
| アクセス(電車) | JR東北本線 桑折駅から徒歩約20分で観音寺登城口、そこから本丸まで徒歩約20分 |
| アクセス(車) | 東北自動車道 福島飯坂ICから約20分、または伊達桑折ICから約3分 |
| 駐車場 | 観音寺駐車場または「うぶかの郷」駐車場を利用(無料、約20台) |
| 料金 | 見学自由(無料) |
| 所要時間 | 1〜3時間(コースによる) |
| お問い合わせ | 桑折町教育文化課 生涯学習係 TEL: 024-582-2408 |
参考文献
- 桑折西山城跡 - 文化遺産オンライン(文化庁)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/160708
- 桑折西山城跡 - ふくしまの旅
- https://www.tif.ne.jp/jp/entry/article.html?spot=891
- 桑折西山城とは - 桑折町公式ウェブサイト
- https://www.town.koori.fukushima.jp/kankou/sightseeing/4/yamajirosummit2021_inKoori/about_nishiyama_castle.html
- 歴史の小径 - 桑折町公式ウェブサイト
- https://www.town.koori.fukushima.jp/kankou/activity/2/2050.html
- 桑折西山城 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/桑折西山城
- 桑折西山城 - 攻城団
- https://kojodan.jp/castle/829/
- 献上桃の郷こおり - 桑折町公式ウェブサイト
- https://www.town.koori.fukushima.jp/kooripeach/index.html
最終更新日: 2026.01.13
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