照島ウ生息地:太平洋に浮かぶ国指定天然記念物
福島県いわき市の小名浜沖、海岸から約250メートルの太平洋上にそびえ立つ照島(てるしま)は、何世紀にもわたりウミウの越冬地として知られてきた孤島です。凝灰質砂岩からなる高さ約31メートルのこの断崖絶壁の小島は、日本沿岸部における代表的なウミウの生息地として、1945年(昭和20年)2月22日に国の天然記念物に指定されました。
有名な観光地だけでなく、日本の自然遺産との本物の出会いを求める旅行者にとって、照島は地質学的な驚異と野生生物保護が交差する貴重な体験を提供してくれます。この島は、ウミウの太平洋側における繁殖地・越冬地としては南限に近く、生態学的に極めて重要な意味を持っています。
ウミウ:日本文化に深く根付いた鳥
ウミウ(海鵜、学名:Phalacrocorax capillatus)は、ウ科ウ属に分類される海鳥で、日本では伝統的な漁法である「鵜飼い」に用いられることで広く知られています。岐阜県長良川をはじめとする各地で、鵜飼いは今なお受け継がれる貴重な文化遺産となっています。
照島には毎年10月から11月頃にかけて北方の繁殖地からウミウが飛来し、島の断崖を冬の住処として過ごします。そして翌年の3月から4月頃に再び北へと帰っていきます。かつては冬季のピーク時に300羽を数えたこともありましたが、島の浸食に伴い近年は個体数が減少傾向にあります。
照島にはウミウのほかにも、ヒメウ、アビ、ウミスズメなどの海鳥も飛来し、冬季には多様な鳥類コミュニティが形成されます。また、一部のウミウは一年を通じて照島に留まる留鳥となり、少数ではありますがこの緯度では珍しく島で繁殖する個体も確認されています。
天然記念物に指定された理由
照島が国の天然記念物に指定された背景には、科学的・保全的に重要な複数の要因があります。この島は、天然記念物の指定基準における第3項「自然環境における特有の動物又は動物群聚」に該当します。
周辺海域は海洋生物が非常に豊富です。ウミウの飛来時期は、彼らの主要な餌となるカタクチイワシの回遊時期と一致しており、効率的な採餌環境が整っています。島の断崖や岩棚はウミウの休息や営巣に理想的な場所を提供し、また周囲を海に囲まれた31メートルの垂直の断崖は、陸上の外敵から鳥たちを守る天然の要塞となっています。
日本国内でウミウの生息地または渡来地として国の天然記念物に指定されているものは3物件のみであり、照島はその貴重な保護区域のひとつです。太平洋沿岸における最南端の越冬地として、ウミウの年間移動パターンにおいて重要な中継地点となっています。
地質学的成り立ちと自然史
照島の劇的なシルエットは、数百万年にわたる地質学的変遷の物語を伝えています。この島は第三紀の凝灰質砂岩で構成されており、比較的柔らかい堆積岩が太平洋の波の絶え間ない作用によって形作られてきました。
もともと照島は海岸の崖と陸続きでした。長い年月をかけて波の浸食が接続部分の岩を削り取り、島を本土から分離させ、現在私たちが目にする海食柱(シースタック)を形成しました。近くの本土側の崖は同じ地質組成と同程度の高さを持っており、この分離過程の視覚的な証拠となっています。
かつて島の南側には東西に貫通する海食洞がありましたが、継続的な浸食により現在は崩壊して消失しています。島は今も形を変え続けており、2009年6月の高潮時には西側の崖が25メートルの高さから大規模に崩落しました。さらに2011年の東北地方太平洋沖地震とその約1ヶ月後に発生した直下型地震により、照島は先端部が大きく崩れ落ちました。
これらの地震により、島の形状は従来の縦長の寸胴状から三角形状へと変化しました。専門家によると、1945年の天然記念物指定当時と比較して、島の大きさは半分以下になってしまったとされており、海岸地形のダイナミックな性質を物語っています。
見どころと観察のベストタイミング
照島でウミウを観察するのに最適な季節は、10月下旬から4月上旬までで、特に12月が個体数のピークとなります。早朝と夕方が最も良い観察機会を提供してくれます。ウミウは日の出とともに活動を始め、島の周囲2〜6キロメートルの範囲で採餌行動を行い、日暮れとともに照島へ帰島します。
最もアクセスしやすい観察ポイントは、小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブの敷地内です。高台に位置するこのホテルからは照島を見渡すことができます。敷地内の展望エリアにアクセスする際は、事前にホテルのフロントにお声がけください。ゴルフコース自体も照島の素晴らしい眺望を楽しめ、いくつかのホールからは太平洋を背景にした島のパノラマを望むことができます。
照島は「小名浜八景」のひとつにも選ばれており、その自然美で知られる地域の名所です。荒々しい島の姿、躍動感あふれる海鳥の動き、広大な海の眺望が組み合わさり、自然愛好家や写真家にとって忘れられない体験を提供してくれます。
比較的大型のウミウは島の頂部に、小型のヒメウは島の垂直な岩壁に留まり、興味深い空間的な住み分けが見られます。かつてはウミウが島の頂部に多く留まり、「いがぐり頭」のように見えたと伝えられています。
保全の課題と保護への取り組み
照島の継続的な浸食は、重大な保全上の課題となっています。島の面積が縮小するにつれて、越冬するウミウが利用できる生息地も減少しています。日本野鳥の会いわき支部が毎年12月上旬の早朝に実施している定点観測によると、1996年には150羽、2002年には102羽が確認されていたウミウの数は、2009年には35羽まで急激に減少しました。
2011年の震災後の調査では、早朝の時間帯にわずか5羽しか確認できませんでしたが、夕方になると30〜70羽が観察されました。これは、生息地の減少に適応して鳥たちの行動パターンが変化していることを示唆しています。
文化庁や地元関係機関では、島の基部周辺に消波ブロックを設置して浸食を遅らせるなどの保護対策が検討されています。しかし、いかなる介入も、保全目標とこの保護区域を特徴づける自然のプロセスの保存との間で慎重なバランスを取る必要があります。
周辺観光スポット
照島が位置するいわき市小名浜地区は、福島県を代表する観光エリアであり、様々な魅力的なスポットが点在しています。
小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブは、照島温泉(天然温泉)をはじめとする充実したリゾート施設を備えています。太平洋を眺めながら天然のミネラル温泉に浸かる贅沢なひとときを楽しめます。露天風呂からは絶景のオーシャンビューが広がり、朝夕の美しい海景色は格別です。ホテルのシーサイドゴルフコースは、米国ゴルフダイジェスト誌の「Best Golf Resorts in Asia」にも選出されています。
車で約15分の距離にある環境水族館アクアマリンふくしまは、福島県を代表する水族館です。暖流の黒潮と寒流の親潮が出会う「潮目の海」をテーマに、800種類以上の海洋生物を展示しています。釣り体験やバックヤードツアーなど、体験型のプログラムも充実しています。
小名浜港にある観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」では、新鮮な海産物を使った食事やお土産の購入、遊覧船の乗船が楽しめます。三崎公園は海上46メートルの台地に広がり、いわきマリンタワーからの360度のパノラマ、芝生公園、自然遊歩道、潮見台などが整備されています。
さらに足を延ばせば、塩屋埼灯台、いわき湯本温泉(日本でも屈指の歴史を持つ温泉地)、そして平安時代後期の阿弥陀堂建築を代表する国宝・白水阿弥陀堂など、見どころが豊富です。
Q&A
- 照島ウ生息地を訪れるのに最適な時期はいつですか?
- ウミウの観察に最適な時期は10月下旬から4月上旬で、特に12月が個体数のピークとなります。早朝(日の出頃)と夕方(日没前)が、鳥たちの島への出入りを観察するのに最も良いタイミングです。
- 照島に上陸することはできますか?
- いいえ、照島への上陸は許可されていません。島全体が国の天然記念物に指定されており、ウミウの生息地と営巣地を保護するためアクセスが制限されています。観察は本土側から、特に小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブの敷地内から行うことができます。
- 照島ウ生息地へのアクセス方法を教えてください。
- お車の場合:常磐自動車道いわき勿来ICから約20分。電車の場合:JR常磐線泉駅からタクシーで約15分。見学の際は、小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブに事前にお声がけいただくようお願いします。
- 照島ではウミウ以外にどのような鳥が見られますか?
- ウミウのほかに、ヒメウ、アビ、ウミスズメなどの海鳥が飛来します。比較的大型のウミウは島の上部に、小型のヒメウは垂直な岩壁に留まる傾向があり、興味深い住み分けが見られます。
- 照島ウ生息地の見学に入場料はかかりますか?
- 公共エリアからの照島の観察は無料です。ただし、小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブの敷地内から最適な眺望ポイントにアクセスしたい場合は、事前にホテルへご連絡ください。日帰り入浴でホテルの温泉施設を利用すれば、海を眺めながらの入浴も楽しめます(有料)。
基本情報
| 名称 | 照島ウ生息地(てるしまウせいそくち) |
|---|---|
| 指定区分 | 国指定天然記念物 |
| 指定年月日 | 1945年(昭和20年)2月22日 |
| 所在地 | 福島県いわき市泉町下川字大畑260 |
| 島の高さ | 海上約31メートル |
| 海岸からの距離 | 約250メートル沖合 |
| 地質 | 第三紀凝灰質砂岩 |
| 主な生息種 | ウミウ(海鵜、Phalacrocorax capillatus) |
| ウミウの飛来時期 | 10月〜11月頃に飛来、3月〜4月頃に北方へ帰る |
| 車でのアクセス | 常磐自動車道いわき勿来ICから約20分 |
| 電車でのアクセス | JR常磐線泉駅から車で約15分 |
| お問い合わせ | いわき市文化振興課 TEL:0246-22-7546 |
| 見学について | 小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブへ事前にお声がけください |
参考文献
- 照島ウ生息地 - ふくしまの旅(福島県観光情報サイト)
- https://www.tif.ne.jp/jp/entry/article.html?spot=1236
- 照島ウ生息地 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/照島ウ生息地
- いわきの『今むがし』Vol.74『照島』 - いわき市役所
- https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1499739530823/index.html
- 福島遺産百選(15)照島とウの生息地 - 福島民友新聞
- https://www.minyu-net.com/tourist/f-isan/130115/hyakusen.html
- 照島温泉 - 小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブ
- https://www.accordiahotel.com/onahama/hot-spring/
- 環境水族館アクアマリンふくしま
- https://www.aquamarine.or.jp/
最終更新日: 2026.01.29
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