中里のカンデッコあげ行事:満月の夜に願いを込める秋田の小正月行事

秋田県仙北市西木町の山間集落・中里地区で、旧暦1月15日の満月の夜に行われる「中里のカンデッコあげ」は、五穀豊穣・子孫繁栄・災厄退散を願う小正月行事です。男たちが手作りの奉納物「カンデッコ」を神木の桂の木に投げ上げるこの行事は、昭和61年(1986年)に国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され、平成3年(1991年)には秋田県指定無形民俗文化財にも指定されています。農村の祈りの原風景ともいえる貴重な伝統行事です。

歴史的背景

カンデッコあげ行事の発祥がいつ頃であるかは、文献が残っておらず定かではありません。行事が行われる中里の塞の神は、檜木内川がかつて現在よりも西側を流れていた時代に、大洪水で桂の大木が沢から流れ出てこの地に根を下ろしたことに由来するとされています。また、応永年間(1394年~1427年)に戸沢家盛公が一揆を鎮圧し、その帰陣の折に塞の神を奉斎したとも伝えられています。

現在、塞の神堂には八衝比古(やちまたひこ)大神、八衝比売(やちまたひめ)大神、久那斗(くなど)大神の三神が祀られており、道の分岐点を守り邪気を払う境界の神として信仰されています。

文化財指定の理由

この行事は、五穀豊穣や子孫繁栄を願う小正月行事の特徴的な要素を色濃く残している点が高く評価されました。農耕具であるクワ(鍬)の模型と男性器を象った木彫りを組み合わせた奉納物を神木に投げ上げるという形態は、豊穣多産を願う日本の農村信仰の原初的な姿を今に伝えるもので、全国的にも珍しい行事です。中里カンデッコあげ保存会による継続的な伝承活動も評価の一因となっています。

「カンデッコ」とは?

「カンデッコ」とは、朴(ほお)の木で作った長さ約50センチの小型の鍬の模型のことです。これと胡桃(くるみ)の木で作った約20センチの男根をかたどった木彫りを、長さ約150センチのしめ縄の両端に結んで一対の奉納物とします。地元ではこの鍬の模型を「カンデッコ」と呼ぶことから行事の名前がつきました。なお、地元の方言では「カンデャッコ」と発音しますが、現在は呼びやすい「カンデッコ」に統一されています。かつては、行事の日まで男たちが家族に内緒で夜遅くにこっそりと作ったとされています。

行事の見どころ

旧暦1月15日の夜、集落の男性たちが塞の神堂にカンデッコを供えて参拝した後、神木である桂の木にカンデッコを投げ上げます。一回で枝にうまく掛かるとその年は豊作になるといわれ、参加者は真剣な面持ちで腕を振るいます。投げるにはコツが必要で、初めての人はなかなかうまく掛けられないのも面白いところです。

カンデッコあげの後には、近くの田んぼで稲わらを燃やす「虫焼き」が行われ、害虫や雑草を焼き払って豊作を祈願します。晴れた夜には、満月の光の下で桂の木にたわわに下がるカンデッコが、まるで実った果実のように見える幻想的な光景を楽しむことができます。

翌日、地面に落ちたカンデッコを拾って家にある栗や柿などの果樹に掛けておくと、その木が豊かに実を結ぶとも伝えられています。また、かつては女性も恋占いや厄払いのために桂やミズキの木で「カギ」の形を作り、サイカチの御神木の枝に掛けたという言い伝えも残っています。

アクセス・訪問情報

カンデッコあげ行事は毎年旧暦1月15日に行われ、現在の暦では2月中旬~3月上旬頃にあたります。開始時刻は18時30分頃からで、天候により多少前後する場合があります。かつては集落の男性のみの行事でしたが、現在は一般の方の見学・参加も歓迎されています。

会場は国道105号線沿いにあり、最寄り駅は秋田内陸縦貫鉄道の羽後中里駅で、駅から徒歩約2分です。角館駅から秋田内陸線で約40分の道のりで、車窓からは秋田の美しい山間風景を楽しむことができます。行事以外の時期でも、国道沿いに立つ神木の桂の木はいつでも見ることができます。

周辺の観光情報

カンデッコあげ行事の観覧と合わせて、仙北市周辺の魅力的な観光地もお楽しみいただけます。角館は「みちのくの小京都」と称され、江戸時代の武家屋敷通りが美しく保存されています。春にはシダレザクラの並木が見事で、桧木内川堤の約2キロにわたるソメイヨシノのトンネルも圧巻です。

田沢湖は水深423.4メートルと日本一の深さを誇る湖で、神秘的なコバルトブルーの湖水と伝説の美少女たつこ姫の像が有名です。乳頭温泉郷では、雪に囲まれた露天風呂で乳白色の温泉を楽しむことができ、冬の祭り見物の後に体を温めるのに最適です。

西木地区内では、八津・鎌足のカタクリ群生地が約20ヘクタールの規模を誇り、国内最大級のカタクリの花の絨毯が春に広がります。また、西木温泉クリオンは日帰り入浴が可能で、地域の文化イベント情報の発信拠点としても親しまれています。

Q&A

Qカンデッコあげ行事はいつ行われますか?
A毎年旧暦1月15日の夜に行われます。現在の暦では2月中旬から3月上旬頃にあたり、18時30分頃から始まります。
Q観光客も参加できますか?
Aはい、現在は一般の方も見学・参加が可能です。かつては集落の男性のみの行事でしたが、現在は広く開放されています。
Q会場へのアクセス方法は?
A秋田内陸縦貫鉄道の羽後中里駅から徒歩約2分です。角館駅から秋田内陸線で約40分の所要時間です。会場は国道105号線沿いにあります。
Q「カンデッコ」とは何ですか?
A朴の木で作った小型の鍬の模型のことです。これと胡桃の木で作った男根の木彫りをしめ縄の両端に結び、奉納物として桂の神木に投げ上げます。
Q冬のこの地域で他に楽しめる観光はありますか?
A雪景色の角館武家屋敷通りの散策や、乳頭温泉郷での雪見露天風呂が人気です。また、秋田内陸縦貫鉄道の車窓から見る冬の山間風景も見どころです。

基本情報

名称 中里のカンデッコあげ行事
文化財指定 国記録選択無形民俗文化財(昭和61年12月17日選択)/秋田県指定無形民俗文化財(平成3年3月19日指定)
所在地 秋田県仙北市西木町檜木内字中島
開催日 毎年旧暦1月15日(現在の暦で2月~3月頃)18時30分頃~
保存団体 中里カンデッコあげ保存会
アクセス 秋田内陸縦貫鉄道 羽後中里駅より徒歩約2分
お問い合わせ 西木町観光協会 電話:0187-42-8480

参考文献

中里のカンデッコあげ行事 - 文化庁広報誌 ぶんかる
https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/matsuri/matsuri_026.html
中里のカンデッコあげ行事 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/159448
中里のカンデッコあげ(県指定無形民俗文化財) - 仙北市観光情報
https://www.city.semboku.akita.jp/sightseeing/spot/06_kandekko.html
中里のカンデッコあげ - 西木温泉クリオン
https://www.kurion.co.jp/event/%E4%B8%AD%E9%87%8C%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%B3%E3%81%82%E3%81%92/
中里のカンデッコあげ イベント情報 - 仙北市
https://www.city.semboku.akita.jp/event/event.php?id=779

最終更新日: 2026.04.09