金屋の道端に建つ、大正5年の土蔵

駒井正篤家住宅土蔵は、青森県平川市金屋中松元にある大正5年(1916年)建築の土蔵で、平成17年(2005年)12月26日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。所有は個人で、いまも住宅の敷地内にある。

建物は敷地の北側、道路に面して建つ。桁行3間、梁間2間半、切妻造、鉄板葺の置屋根をのせた平入の土蔵造二階建で、建築面積は33平方メートル。外壁は漆喰塗、腰は人造石仕上げで、その仕上げ面に亀甲模様が入る。南側の蔵前は壁で囲われている。

置屋根というのは、土壁で組んだ蔵本体の上に、独立した軸組で屋根をもう一段かける方式をいう。屋根と土壁のあいだに隙間ができるので、湿気が抜け、雨や雪が壁に当たりにくい。雪の多い津軽では理にかなった造りで、金屋一帯の蔵はおおむねこの形をとる。

りんごが建てさせた蔵と、左官の腕

登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。一棟の建築的完成度というより、金屋という土地の景観を成り立たせている一員として評価されたということだ。実際、この蔵は単独で建っているわけではない。

平川市観光協会は、旧尾上町にあたる尾上地域に334棟の蔵が現存し、その94パーセントが農家の所有で、なかでも金屋地区に78棟が集まり、うち39棟が国の登録有形文化財になっていると説明する。別の資料は蔵を約300棟、登録を40棟とするなど数字に幅があるが、農家の蔵が群をなしているという事実は動かない。

なぜこれほど蔵が建ったのか。平川市の資料は、りんご栽培によって農家の経済力が上がり、富の象徴として競うように蔵を建てたと記している。米作地帯にりんごが加わった明治以降の蓄積が、そのまま白壁の数になった。

競争は意匠に出た。駒井正篤家住宅土蔵では、二階北面の窓枠飾に唐草絵様の鏝絵をつけ、軒下に黒漆喰塗の鉢巻きをめぐらせている。鏝絵は左官が鏝の先で漆喰を盛り上げてつくる浮彫で、型に流すのではなく現場で手を動かして仕上げる。腰の亀甲模様も同じ発想だ。人造石で固めれば済むところに、六角形を連ねる手間をかけている。

登録日についてはやや注意がいる。文化庁のデータベースは登録年月日を平成17年12月26日、告示年月日を翌27日と記すのに対し、青森県教育委員会の一覧は12月27日を登録年月日として掲載している。

見学するには、どうすればよいか

まず前提として、この蔵は非公開である。個人の住宅の敷地にあり、勝手に立ち入ることはできない。青森県教育委員会は公開状況を「非公開」とし、見学はNPO法人尾上蔵保存利活用促進会への申込みが必要と案内している。問い合わせ先は平川市教育委員会の郷土資料館と同法人。事前連絡なしに訪ねるのは避けたい。

蔵そのものは道路に面して建つので、公道から外観を眺めることはできる。撮影する場合も公道の範囲にとどめ、住んでいる人の生活を妨げないこと。金屋の蔵並みは観光施設ではなく、いまも人が暮らす集落である。

年に一度、金屋中松元一帯で一夜限りの農家蔵ライトアップが開かれている。例年1月下旬の実施で、雪の白壁が行灯の明かりに浮かぶ。日程は毎年変わるため、平川市観光協会などで確認するとよい。

交通は車が現実的だ。最寄り駅は弘南鉄道弘南線の津軽尾上駅だが、金屋中松元までは徒歩で30分を超える。津軽尾上駅の周辺には猿賀神社や名園の盛美園があり、蔵並みと合わせて一日の行程が組める。

Q&A

Q駒井正篤家住宅土蔵は見学できますか?
A非公開です。個人所有の住宅の敷地内にあり、青森県教育委員会は見学にNPO法人尾上蔵保存利活用促進会への申込みが必要としています。問い合わせ先は平川市教育委員会の郷土資料館と同法人です。外観は道路に面しているため公道から眺められますが、敷地内には入らず、住民の生活に配慮してください。
Q駒井正篤家住宅土蔵はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A建築は大正5年(1916年)です。国の登録有形文化財(建造物)への登録は、文化庁のデータベースによれば平成17年(2005年)12月26日、告示は翌27日で、登録番号は02-0030です。青森県の一覧は登録年月日を12月27日と記載しています。
Q駒井正篤家住宅土蔵の構造や大きさを教えてください。
A桁行3間、梁間2間半の平入で、切妻造・鉄板葺の置屋根をのせた土蔵造二階建です。員数は1棟、建築面積は33平方メートル。外壁は漆喰塗、腰は亀甲模様を入れた人造石仕上げで、南側の蔵前を壁で囲んでいます。
Q駒井正篤家住宅土蔵のある金屋地区には、蔵がどれくらい残っていますか?
A平川市観光協会は、旧尾上町にあたる尾上地域に334棟の蔵が現存し、うち94パーセントが農家所有、金屋地区には78棟が集まり、39棟が国の登録有形文化財になっていると説明しています。資料により約300棟、登録40棟とする記述もあります。
Q駒井正篤家住宅土蔵の「鏝絵」や「置屋根」とは何ですか?
A鏝絵は、左官が鏝で漆喰を盛り上げてつくる浮彫の装飾です。この蔵では二階北面の窓枠飾に唐草の絵様が施されています。置屋根は、土壁でできた蔵本体とは別の軸組で屋根をもう一段かける方式で、湿気を逃がし、雨雪から土壁を守ります。

基本情報

名称駒井正篤家住宅土蔵(こまいせいとくけじゅうたくどぞう)
所在地青森県平川市金屋中松元35-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成17年(2005年)12月26日登録、告示12月27日/登録番号 02-0030
員数1棟
寸法土蔵造2階建、鉄板葺、建築面積33平方メートル(桁行3間、梁間2間半)
所有者個人
公開状況非公開(見学はNPO法人尾上蔵保存利活用促進会へ要申込み。問い合わせは平川市教育委員会郷土資料館ほか)

参考文献

国指定文化財等データベース ― 駒井正篤家住宅土蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005081
駒井正篤家住宅土蔵(青森県教育委員会 文化財保護課)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kyoiku/e-bunka/torokuyukei_30.html
文化遺産オンライン ― 駒井宏家住宅土蔵(同じ金屋地区の登録蔵/文化庁)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/196099
市のあゆみ(平川市)
https://www.city.hirakawa.lg.jp/jouhou/shoukai/shinoayumi.html
郷土資料館(平川市)
https://www.city.hirakawa.lg.jp/bunka/bunka/kyoudoshiryoukan.html
津軽尾上駅(弘南鉄道)
https://konantetsudo.jp/station/station-konan/station-konan08/

最終更新日: 2026.08.19