日蓮が描いた二体の明王

愛染不動感見記〈日蓮筆〉は、千葉県安房郡鋸南町吉浜の妙本寺に伝わる、日蓮が建長6年(1254年)に記した2幅の古文書で、昭和43年(1968年)4月25日に国の重要文化財に指定された。千葉県の解説によれば、日蓮が感得した愛染明王と不動明王の姿を自ら描き、弟子に授けたものである。

2幅は「愛染感見記」と「不動感見記」と呼ばれる。大きさは愛染感見記が縦31センチ、横50センチ、不動感見記が縦31.3センチ、横50センチで、どちらも横長の紙の中央に明王の姿を描き、その左右に文字を書き添えている。

書き添えられた文字

愛染感見記の右側には、正月一日の日食のときに生身(しょうじん)の愛染明王を拝見したと記されている。不動感見記の右側には、十五日から十七日にかけて生身の不動明王を拝見したとある。

左側には2幅とも、大日如来から日蓮まで23代にわたって正しく受け継がれてきたこと、建長6年6月25日に授与したことが記される。授与の相手は、千葉県の解説では「新仏」、文化庁データベースの記載では「進仏」と表記されている。

建長6年は、日蓮が宗旨を開くことを宣言した翌年にあたる。千葉県は、日蓮の壮年期の筆跡として希少なものと評価している。明王の図像を密教の相承の形で授けたこの文書は、日蓮の思想と密教との関わりを考える手がかりとして、学術論文でも取り上げられてきた。

妙本寺と感見記

愛染不動感見記を伝える妙本寺は、日蓮の孫弟子にあたる日郷が開いた寺である。千葉県の解説は、開基を康永年間(1342〜1345年)としている。

寺は房総半島の南西部、東京湾に面した鋸南町の吉浜にある。妙本寺に伝わる聖教類や古文書の一群は、千葉県の文化財にも指定されている。愛染不動感見記は、それらとともに寺に伝わってきた寺宝の一つである。

見学について

愛染不動感見記は妙本寺の寺宝で、常時公開されてはいない。鋸南町の保田歴史散歩マップは、妙本寺の寺宝類が10月の虫干しの際に公開されると紹介しているが、愛染不動感見記が毎年その場に出されるかどうかは確認できていない。同じマップは、寺社の彫刻作品などの見学には許可が必要だとしており、問い合わせ先は鋸南町教育委員会(電話0470-55-2120)である。

妙本寺の所在地は鋸南町吉浜453-1で、JR内房線の保田駅が最寄りの駅になる。公開の際の撮影の可否は、当日の寺の案内に従ってほしい。

Q&A

Q愛染不動感見記は見られますか。
A常時公開はされていません。鋸南町によれば妙本寺の寺宝類は10月の虫干しで公開されますが、感見記が毎年出されるかは確認できていません。事前に鋸南町教育委員会などへ問い合わせてください。
Q愛染不動感見記はいつ書かれたのですか。
A建長6年(1254年)です。日蓮が宗旨を開くことを宣言した翌年にあたります。
Q愛染不動感見記には何が描かれていますか。
A2幅のうち一方の中央に愛染明王、もう一方の中央に不動明王が描かれ、左右に明王を拝見したときのことや相承、授与の年月日が記されています。
Q愛染不動感見記の大きさは。
A愛染感見記が縦31センチ・横50センチ、不動感見記が縦31.3センチ・横50センチです。
Q愛染不動感見記はいつ重要文化財になったのですか。
A昭和43年(1968年)4月25日に国の重要文化財(古文書)に指定されました。

基本データ

名称愛染不動感見記〈日蓮筆〉(あいぜんふどうかんけんき)
所在地千葉県安房郡鋸南町吉浜453-1(妙本寺)
指定区分重要文化財(古文書)
指定年昭和43年(1968年)4月25日指定
員数2幅
寸法愛染感見記 縦31センチメートル・横50センチメートル、不動感見記 縦31.3センチメートル・横50センチメートル
所有者妙本寺
公開状況非公開(寺宝類は10月の虫干しで公開されることがある)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)愛染不動感見記〈日蓮筆/〉
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/9202
千葉県 愛染不動感見記
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/n171-004.html
千葉県 妙本寺聖教類及び関係資料
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p141-014.html
鋸南町 保田歴史散歩マップ
https://www.town.kyonan.chiba.jp/uploaded/life/2963_2949_misc.pdf
J-STAGE 高森大乗「日蓮遺文『不動愛染感見記』小考」(印度學佛教學研究 50巻1号)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ibk1952/50/1/50_1_98/_article/-char/ja/

最終更新日: 2026.09.26