下野から安房へ渡った鐘

梵鐘(元亨元年在銘)は、千葉県安房郡鋸南町元名の日本寺に伝わる鎌倉時代の銅鐘で、元亨元年(1321年)の銘をもち、昭和51年(1976年)6月5日に国の重要文化財に指定された。総高117.5センチ、口径62.0センチある。

作者は下野国の鋳物師、甲斐権守卜部助光である。文化庁の解説は、助光を天命(下野国佐野)の鋳物師卜部氏の系統とし、この鐘をその系統の在銘の作として最も古い例と位置づけている。

銘文がたどる鐘の旅

銘文によれば、鐘はもともと下野国佐野庄堀籠郷の応竜山天宝禅寺のために造られた。のちに永徳2年(1382年)の年紀とともに鎌倉の浄妙寺の名が追刻されており、鎌倉へ移ったことがわかる。そして江戸湾を渡り、日本寺の鐘となった。

日本寺の公式サイトも、天宝寺の鐘として寄進され、60年を経て鎌倉五山の浄妙寺の鐘となり、海を渡って日本寺の鐘になったという鐘銘の内容を紹介している。一つの鐘が下野から相模、さらに安房へと移った道筋が、鐘そのものに刻まれている。

鎌倉時代の鐘の姿

3段に分けて鋳上げられ、乳(いぼ状の突起)は4段4列、上帯と下帯は文様のない素文である。池の間の4区にわたって銘文が刻まれ、撞木があたる2個の撞座は蓮華文になっている。

文化庁の解説によれば、鐘身は肩からゆるい曲線で広がり、中帯の上から垂直に下る。竜頭は高く、中央に蓮台と火焔宝珠を頂く。文化庁は、鎌倉時代の特色が強く、資料としても貴重なものと評価している。

見学について

日本寺によれば、2019年9月の台風で鐘楼が修復できないほどの被害を受けたため、梵鐘は現在「法堂鐘」として法堂の中で保管されている。法堂の中の鐘を拝観できるかどうかは、寺の案内で確かめたい。

日本寺は鋸山の南斜面に境内が広がる寺で、拝観時間は午前9時から午後4時(最終入場は午後3時)、拝観料は大人700円である。境内は山のため階段が多い。JR内房線の浜金谷駅から鋸山ロープウェーの山麓駅まで歩いて約8分で、ロープウェーを使って境内へ向かう経路がある。

Q&A

Q日本寺の梵鐘(元亨元年在銘)は見られますか。
A2019年9月の台風で鐘楼が被災したため、現在は法堂の中で保管されています。拝観できるかは日本寺に確認してください。
Q日本寺の梵鐘(元亨元年在銘)はいつ造られたのですか。
A元亨元年(1321年)です。下野国の鋳物師、甲斐権守卜部助光の作です。
Q日本寺の梵鐘(元亨元年在銘)はもともとどこの鐘だったのですか。
A下野国佐野庄の天宝禅寺の鐘として造られ、永徳2年(1382年)ごろ鎌倉の浄妙寺に移り、その後日本寺の鐘となりました。
Q日本寺の梵鐘(元亨元年在銘)の大きさは。
A総高117.5センチ、口径62.0センチです。
Q日本寺の拝観時間と拝観料は。
A午前9時から午後4時(最終入場は午後3時)で、拝観料は大人700円です。梵鐘は2019年から法堂内で保管されています。

基本データ

名称梵鐘(元亨元年在銘)(ぼんしょう)
所在地千葉県安房郡鋸南町元名184(日本寺)
指定区分重要文化財(工芸品)
指定年昭和51年(1976年)6月5日指定
員数1口
寸法総高117.5センチメートル、口径62.0センチメートル
所有者日本寺
公開状況法堂内で保管(鐘楼は2019年の台風で被災)

参考文献

最終更新日: 2026.09.26