物部国光が鋳た鎌倉時代の鐘

梵鐘(弘安九年在銘)は、千葉県館山市出野尾の小網寺に伝わる鎌倉時代の銅鐘で、弘安9年(1286年)に鋳造され、昭和36年(1961年)6月30日に国の重要文化財に指定された。総高107.5センチ、口径62.1センチある。

作者は鋳物師の物部国光である。館山市によれば、国光の鐘は神奈川県海老名市の国分寺、横浜市の称名寺、鎌倉市の円覚寺にも残っており、当代一流の鋳物師だったことがわかる。千葉県は、長柄町の眼蔵寺の梵鐘とともに、県内の名鐘の一つとしている。

陀羅尼を鋳出した鐘

3段に分けて鋳上げられ、乳(いぼ状の突起)は4段4列に並ぶ。上帯には飛雲文と日月を、下帯には密教法具の三鈷杵の文様を高く浮き出させている。撞座は2つで、竜頭の向きと平行に置かれ、蓮華文は八葉の複弁である。

池の間には、梵字の大随求陀羅尼が2区にわたって鋳出されている。大随求陀羅尼は、唱えれば災厄を逃れ、聞くだけでも罪障が消えるとされた呪文で、古くから書き写して守り札とされてきた。千葉県は、鐘の音そのものが衆生を救う響きと考えられたのだろうとしている。

銘文に残る寺の旧名

銘文には、小網寺の旧名とされる「金剛山大荘厳寺」の名が刻まれている。大願主は金剛仏子隆尊、大檀那は矢作助定と大田末延で、鋳造したのは大工大和権守物部国光であることも記されている。

寺の古い名と、鐘を発願し支えた人々、鋳造した職人の名が一つの鐘にそろって残っていることになる。

見学について

館山市観光協会によれば、梵鐘(弘安九年在銘)は小網寺の境内の鐘楼に掛かっている。拝観料や公開時間についての案内は見当たらない。寺の行事や法要の妨げにならないよう、訪ねる際は配慮したい。

小網寺は館山市出野尾859にある。館山から白浜方面へ向かう県道86号線の岡田口バス停のあたりで山側に入り、小網坂と呼ばれる急な坂を上った先に本堂がある。

Q&A

Q小網寺の梵鐘(弘安九年在銘)は見られますか。
A館山市観光協会によれば、小網寺の境内の鐘楼に掛かっています。拝観料や公開時間の案内は見当たりません。
Q小網寺の梵鐘(弘安九年在銘)はいつ誰が造ったのですか。
A弘安9年(1286年)に、鎌倉を中心に活躍した鋳物師の物部国光が鋳造しました。
Q小網寺の梵鐘(弘安九年在銘)の大きさは。
A総高107.5センチ、口径62.1センチです。
Q小網寺の梵鐘(弘安九年在銘)の池の間には何がありますか。
A梵字の大随求陀羅尼が2区にわたって鋳出され、寺の旧名「金剛山大荘厳寺」や願主・作者の名が刻まれています。
Q小網寺の梵鐘(弘安九年在銘)はいつ重要文化財になったのですか。
A昭和36年(1961年)6月30日に国の重要文化財(工芸品)に指定されました。

基本データ

名称梵鐘(弘安九年在銘)(ぼんしょう)
所在地千葉県館山市出野尾859(小網寺)
指定区分重要文化財(工芸品)
指定年昭和36年(1961年)6月30日指定
員数1口
寸法総高107.5センチメートル、口径62.1センチメートル
所有者小網寺
公開状況境内の鐘楼に懸かる

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)梵鐘(小網寺)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/6790
千葉県 梵鐘(弘安九年在銘)
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/n141-011.html
館山市【国指定重要文化財】梵鐘(弘安九年在銘)
https://www.city.tateyama.chiba.jp/syougaigaku/page022207.html
館山市観光協会 小網寺
https://tateyamacity.com/archives/2616
安房国札観音霊場巡り 第三十二番 小網寺
https://awa-junrei.jp/history/32koamiji/

最終更新日: 2026.09.26