旧蔵内家住宅とは

旧蔵内家住宅は、福岡県築上郡築上町大字上深野に残る炭鉱経営者・蔵内家の本家住宅で、明治20年(1887年)の主屋を核に大正期に増築された12棟が、平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財に登録されている。現地では「旧藏内邸」(藏は蔵の旧字体)の名で公開されており、築上町の案内でもこの表記が使われる。

敷地は周防灘に面した平野から山手へ入りかけた田園のなかにある。東を正面にした主屋を中心に、大玄関棟・応接間棟・茶室・座敷棟・大広間棟が庭園に向かって雁行し、西の奥に宝蔵、南側に米倉と倉が屋敷の輪郭をつくる。炭鉱主の邸宅は筑豊の飯塚や直方にも残るが、旧蔵内家住宅は産炭地から離れた一族の故郷に建てられた点で性格が違う。

建築年代については資料の間に食い違いがある。文化庁の国指定文化財等データベースは主屋と応接間棟を竣工写真に基づいて明治20年(1887年)とするが、築上町の案内は主屋・応接間棟と庭園の造営を明治39年(1906年)頃としている。本サイトでは各棟の記事で両説を併記している。

蔵内家と炭鉱経営

築上町の解説によると、蔵内家は中世に豊前国を治めた宇都宮氏(城井氏)の家臣の家筋とされ、宇都宮氏の滅亡後は深野村で帰農した。屋敷に隣接する貴船神社には、享保6年(1721年)の燈籠と明和7年(1770年)の鳥居に一族の名が刻まれている。

弘化4年(1847年)生まれの蔵内次郎作は、明治18年(1885年)に田川郡後藤寺で炭坑の採掘に着手し、養子の保房とともに峰地坑・大峰坑などへ事業を広げた。大正5年(1916年)に蔵内鉱業株式会社が設立されて保房が社長に就き、大正8年(1919年)には石炭産出高が全国6位に達したとされる。屋敷の大増築はこの会社設立と同じ時期に始まり、大正9年(1920年)の大玄関棟で主要部がそろった。

保房は邸宅が落成した大正10年(1921年)に59歳で、次郎作はその翌々年の大正12年(1923年)に77歳で亡くなった。その後は次郎兵衛が経営を継ぎ、昭和14年(1939年)に炭鉱を譲渡して大分県の尾平鉱山など金属鉱業に転じたが、昭和34年(1959年)の尾平鉱山閉山で蔵内家の鉱業経営は終わった。

屋敷の構成と歩く順序

来訪者はまず、屋敷の南側に開いた入口から敷地に入る。入口脇の小さな便所は、自然木の丸柱と丸窓をもつ数寄屋風の建物で、見落とされやすいが12棟のうちの1棟である。正面には東向きの大玄関棟が構え、その北東に立つ中門が、玄関前のアプローチと北側の庭園とを仕切っている。

受付は大玄関棟にある。玄関から先は、主屋、応接間棟、茶室、座敷棟、大広間棟と、庭園に面した座敷を順にたどる動線になる。大正期の増築では、明治期の庭の視点場だった応接間に加え、どの座敷からも池と石組が異なる角度で見えるよう、建物をずらしながら並べたと築上町は説明している。

主屋の西側には炊事場棟が、その奥の屋敷西面中央には桁行10間の宝蔵が建つ。南側の道路沿いには米倉と倉が連なり、倉の南面中央には作業用の通用門が開く。接客の座敷を東と北に、家政と収蔵を西と南にまとめた配置は、屋敷を一周すると読み取りやすい。

大正期増築の大工棟梁は山田村(現在の豊前市)の中江九壽、庭師は浦野弥平、石工は長野熊太郎と伝わる。参道の石垣や石橋、庭石には地元の花崗岩が使われている。

登録・指定の状況

建物12棟は、平成14年(2002年)2月14日付で登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は40-0019から40-0030までの連番で、登録基準は棟ごとに「国土の歴史的景観に寄与しているもの」「造形の規範となっているもの」「再現することが容易でないもの」に分かれる。

屋敷の庭園は「旧藏内氏庭園」として平成27年(2015年)3月10日に国の名勝に指定され、平成29年(2017年)2月9日には貴船神社・参道・銅像広場の範囲が追加指定された。築上町の資料では、住宅は福岡県指定の建造物でもあるとされる。

見学案内

旧藏内邸は築上町が公開施設として運営しており、開館時間は午前9時30分から午後4時30分まで(入場は午後4時まで)である。休館日は毎週水曜日(祝日の場合は開館)と、12月28日から1月4日までの年末年始。入場料は一般(高校生以上)310円、小学生・中学生100円で、20名以上の団体は一般250円、小中学生80円になる。受付は大玄関を入ったところにあり、別料金300円で煎茶と菓子のサービスも用意されている。

鉄道ではJR日豊本線の築城駅が最寄りで、駅からタクシーまたは路線バスで約10分かかる。バスは寒田線の上深野バス停で降り、徒歩数分。本数が少ないため、時刻は旧藏内邸へ問い合わせるよう町は案内している。車の場合は東九州自動車道の築城インターチェンジから約6分で、県道沿いの専用駐車場(無料)と、そこから220メートルほど入った第2駐車場がある。

文化財建築のため館内はバリアフリーではなく、建物内で車椅子は使えない。入口にはバリアフリー仕様の公衆トイレがある。敷地内は火気厳禁で喫煙もできない。館内での写真撮影の扱いは公式の案内に明記がないため、受付で確かめてから撮るとよい。

参考文献

国指定文化財等データベース「旧蔵内家住宅主屋」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002702
国指定文化財等データベース「旧蔵内家住宅大広間棟」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002705
旧藏内邸(福岡県築上町)
https://www.town.chikujo.fukuoka.jp/map2/060/kyukurauchitei.html
ご利用案内|旧藏内邸(築上町歴史散歩ホームページ)
https://www.chikujo-rekishi.jp/guide/kyukurauchitei/k001.html
施設の紹介|旧藏内邸(築上町歴史散歩ホームページ)
https://www.chikujo-rekishi.jp/guide/kyukurauchitei/k002.html
藏内家の歴史|旧藏内邸(築上町歴史散歩ホームページ)
https://www.chikujo-rekishi.jp/guide/kyukurauchitei/k003.html

最終更新日: 2026.09.26

基本情報

名称旧蔵内家住宅
所在地福岡県築上郡築上町大字上深野396
指定登録有形文化財 12件
座標33.63669, 130.99450