日本聖公会郡山聖ペテロ聖パウロ教会聖堂:福島に佇むゴシック建築の至宝

福島県郡山市の中心部、麓山(はやま)の高台に静かに建つ日本聖公会郡山聖ペテロ聖パウロ教会聖堂は、昭和初期の東北地方における教会建築の傑作です。1932年(昭和7年)に完成した鉄筋コンクリート造のゴシック様式の聖堂は、約1世紀にわたり聖公会の信仰の場として使われ続けるとともに、地域の人々にも広く親しまれてきました。

2018年(平成30年)に国の登録有形文化財に登録され(登録番号第07-0197号)、その建築的・歴史的価値が正式に認められました。西洋ゴシック建築の伝統と日本の建築技術が融合した、戦前期の聖公会建築を代表する貴重な建造物です。

歴史的背景

郡山における聖公会の宣教活動は、1903年(明治36年)に郡山駅前に設けられた「郡山講義所」に始まります。その後、信徒の輪は着実に広がり、1923年(大正12年)には「郡山聖ペテロ聖パウロ教会」と正式に命名されました。

1926年(大正15年)には麓山の地に土地を取得し、木造の仮聖堂が建てられました。そして1931年(昭和6年)7月、ビンステッド主教の指導のもと、鉄筋コンクリート造・ゴシック型・建坪20坪の本格的な聖堂の建設が始まりました。翌1932年(昭和7年)2月24日、聖マッテヤの祝日に聖堂聖別が行われ、現在の聖堂が完成しました。

第二次世界大戦中の1942年(昭和17年)、宗教団体法の施行により、教会は「郡山聖十字教会」と改称を余儀なくされました。戦後、教会は元の名称を回復し、日本聖公会東北教区に復帰して現在に至っています。

2013年(平成25年)には聖堂に隣接して新しい教会会館が落成しました。そして2018年(平成30年)、聖堂は国の登録有形文化財として登録され、その建築的・歴史的価値が広く認知されることとなりました。

文化財としての価値

本聖堂が登録有形文化財に登録された理由は多岐にわたります。1930年代初頭に建設された鉄筋コンクリート造のゴシック様式教会堂として、東北地方では希少な存在です。外観には塔屋隅部やバットレス(控え壁)に柱形を表す洗練されたゴシック意匠が施されており、端正で堂々とした佇まいを見せています。

内部の小屋組(屋根構造)は特に注目に値します。シザーズトラス(鋏型トラス)とアーチ梁を併用した構造により、小規模ながらも天に向かって伸びやかに広がる優美な空間を実現しています。この独創的な構造手法は、当時の高い技術力と設計の巧みさを物語っています。

また、チェコスロバキア産のガラスを用いたステンドグラスも芸術的価値が高く、聖堂内部に温かみのある光を落としています。

本聖堂は、アメリカ人建築家ジョン・ヴァン・ウィー・バーガミニが基本設計を手がけ、日本人建築家・上林敬吉が実施設計を行うという日米協働の設計体制の成果であり、「モダン・アングリカンの標準化礼拝堂」と呼ばれる一連の聖公会建築群の集大成として位置づけられています。

建築の見どころ

聖堂は東西方向に長い鉄筋コンクリート造の切妻造で、北面東端に切妻造の玄関ポーチ、西端にノルマン風の頂部意匠を持つ塔屋が突出しています。この塔屋は4段の水切りを持つ控え壁に囲まれ、聖堂の最も特徴的なシンボルとなっています。

内部は単廊式の礼拝空間で、西端に内陣が配置されるという珍しい構成をとっています。露出したシザーズトラスとアーチ梁の屋根構造は、視線を天井へと導く劇的な視覚効果を生み出しており、建坪20坪という決して大きくはない空間に荘厳な雰囲気を与えています。

チェコスロバキア産ガラスのステンドグラスは、自然光を色彩豊かに変換し、聖堂内に静謐で神聖な空間を演出しています。建設当初から残る洗礼盤も、教会の大切な宝物のひとつです。

聖堂は麓山の高台に位置し、周囲は緑豊かな環境に囲まれています。隣接するセントポール幼稚園は60年以上の歴史を持ち、教会と地域のつながりを象徴する存在です。

設計者:上林敬吉

本聖堂の設計者は、東京の上林設計事務所を主宰した上林敬吉(うえばやし けいきち)です。聖公会の信徒であった上林は、外国人宣教師建築家のもとで研鑽を積み、戦前日本における聖公会建築の第一人者となりました。

アメリカ人建築家バーガミニの基本設計を基に、浦和諸聖徒教会、盛岡聖公会、秋田聖救主教会、福井聖三一教会など、各地の聖公会礼拝堂の実施設計を手がけました。郡山の聖堂は、これらの一連の「モダン・アングリカン標準化礼拝堂」の最終章に位置づけられる作品です。

周辺情報

教会が位置する麓山エリアは、郡山市の文化ゾーンとして知られ、徒歩圏内にさまざまな見どころがあります。

  • 麓山公園 – 文政7年(1824年)に造られた歴史ある公園。日本の歴史公園100選に選定されており、松林や池、安積疏水を記念して造られた「麓山の滝」が見どころです。
  • 21世紀記念公園 麓山の杜 – 麓山公園の向かいにある近代的な公園。四季折々の花や緑が楽しめる市民の交流拠点です。
  • 郡山市公会堂 – 1924年(大正13年)に郡山の市制施行を記念して建てられたルネサンス調の洋館。登録有形文化財に指定されており、時計塔が印象的です。
  • 郡山市中央図書館・歴史資料館 – 郡山の歴史や文化を学べる施設が近くにあります。
  • 安積疏水麓山の飛瀑 – 明治15年の安積疏水通水完成を記念して建設された滝。登録有形文化財であり、日本遺産「未来を拓いた『一本の水路』」の構成文化財にも認定されています。

拝観のご案内

教会は現在も活動中の礼拝の場ですが、見学者を歓迎しています。主日礼拝(聖餐式)は毎週日曜日10時30分から行われています。礼拝中の見学も可能ですが、聖堂の神聖な雰囲気を尊重してお静かにお過ごしください。

JR郡山駅からは、11番バス乗り場より麓山経由のバスで約10分、裁判所前バス停下車すぐです。徒歩の場合は約20〜25分です。お車の場合は、東北自動車道・郡山インターチェンジから約20分です。教会は郡山麓山郵便局の北側に位置しています。

Q&A

Q郡山聖ペテロ聖パウロ教会聖堂はいつ建てられましたか?
A1931年(昭和6年)7月にビンステッド主教の指導のもと着工し、翌1932年(昭和7年)2月24日、聖マッテヤの祝日に聖堂聖別が行われ完成しました。鉄筋コンクリート造のゴシック様式で、建坪は20坪です。
Q教会の中を見学することはできますか?
Aはい、見学は可能です。ただし現在も活動中の礼拝の場ですので、訪問の際には静かにお過ごしください。毎週日曜日10時30分から礼拝が行われています。礼拝時間外の見学をご希望の場合は、事前に教会へご連絡されることをおすすめします。
Q建築的にどのような点が評価されていますか?
A鉄筋コンクリート造のゴシック意匠を持つ教会建築として、塔屋隅部やバットレスに柱形を表す外観デザイン、シザーズトラスとアーチ梁を併用した独創的な小屋組、チェコスロバキア産ガラスのステンドグラスなどが高く評価されています。日米の建築家の協働による「モダン・アングリカン標準化礼拝堂」の集大成でもあります。
Q郡山駅からのアクセス方法を教えてください。
AJR郡山駅11番バス乗り場から麓山経由のバスに乗車し、裁判所前バス停で下車してすぐです(所要約10分)。徒歩の場合は約20〜25分です。お車の場合は、東北自動車道・郡山インターチェンジから約20分で到着します。
Q麓山エリアには他にどのような文化財がありますか?
A麓山エリアは郡山市の文化ゾーンで、大正13年築のルネサンス調洋館・郡山市公会堂、昭和4年築の日本基督教団郡山細沼教会、安積疏水麓山の飛瀑など、複数の登録有形文化財が集まっています。また、日本の歴史公園100選に選ばれた麓山公園も徒歩圏内です。

基本情報

名称 日本聖公会郡山聖ペテロ聖パウロ教会聖堂
文化財指定 国登録有形文化財(2018年登録、登録番号第07-0197号)
設計 上林敬吉(上林設計事務所)/基本設計:ジョン・ヴァン・ウィー・バーガミニ
竣工 1932年(昭和7年)
構造 鉄筋コンクリート造、ゴシック様式、切妻造
所在地 〒963-8876 福島県郡山市麓山二丁目235
所有者 宗教法人日本聖公会東北教区
アクセス JR郡山駅から11番バス乗り場よりバス約10分「裁判所前」下車/東北自動車道郡山ICより車約20分
公式サイト https://nskk-kooriyama.org/

参考文献

郡山聖ペテロ聖パウロ教会 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/郡山聖ペテロ聖パウロ教会
教会について | 郡山聖ペテロ聖パウロ教会
https://nskk-kooriyama.org/about-church/
日本聖公会郡山聖ペテロ聖パウロ教会聖堂 - 文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/379867
建造物めぐり㉜郡山聖ペテロ聖パウロ教会礼拝堂 – 二つの教会をめぐる石の物語
http://u-moa.jp/event/church2023/2666/index.html
福島県の教会・施設 | 日本聖公会 東北教区
https://nskk-tohoku.com/church/fukushima/

最終更新日: 2026.03.29