瓶子家住宅とは

瓶子家住宅は、福島県福島市森合字台にある大規模な農家の屋敷で、明治前期(1868〜1882年)に建った主屋と長屋門を核に、昭和前期までに整った6棟が平成28年(2016年)11月29日に登録有形文化財となった。読みは「へいしけじゅうたく」で、文化庁の国指定文化財等データベースと福島市の文化財一覧はいずれも瓶子を「へいし」と読ませている。

屋敷が建つのは福島市街地の北部、福島交通飯坂線の美術館図書館前駅のすぐ南東にあたる。周囲はいまでは住宅地だが、敷地の中央に桁行13間の主屋を据え、南を長屋門で閉じ、北と西に蔵や小社を配した構えは、かつての豪農の屋敷の姿をよく残している。所有は個人である。

6棟は同じ日に、第85回の登録として一括で登録された。登録番号は07-0169から07-0174までの連番で、主屋・離れ・文庫蔵・穀蔵・長屋門・氏神社の順に振られている。

建てられた順に見る屋敷の歩み

瓶子家住宅の6棟は一度に建てられたものではない。文化庁の記録をもとに年代順に並べると、半世紀以上をかけて屋敷が整っていった過程が見えてくる。

最も古いのは主屋と長屋門で、どちらも明治前期、西暦でいえば1868年から1882年の間の建築とされる。屋敷の中心と表構えが最初に据えられたことになる。主屋の梁には蚕棚を架けた跡が残り、この家が養蚕を営んでいたことが建物そのものから確かめられる。

明治21年(1888年)には、敷地の北西に氏神社が祀られた。大正に入ると住まいと蔵の充実が進む。大正2年(1913年)に文庫蔵が建ち、大正前期(1912〜1918年)には主屋の背後に2階建の離れが加わった。離れの2階座敷は床・棚・付書院を備え、銘木を用いた上質な造りで、客を迎えるための空間を新たに設けたものと読める。

穀蔵は昭和前期(1926〜1945年)の建築で、昭和59年(1984年)に現在の北西隅へ移された。氏神社も同じ年に移築されている。登録の30年以上前に行われた工事であり、家の側で敷地の北西部を整えた際に、2棟をあわせて動かしたものと考えられる。

主屋は昭和前期に改修を受けている。明治の骨格に昭和の手が加わり、大正の離れと蔵が並ぶ。瓶子家住宅は、時代ごとの暮らしの必要に応じて建物を足し、手を入れ続けてきた屋敷である。

敷地の配置と6棟の登録

瓶子家住宅の敷地は南を正面とする。南辺に桁行7間半の長屋門が建ち、その中央の門口が屋敷への入口になる。門口の東は牛小屋、西は物置として使われた。

門を入った敷地の中心に主屋が建つ。主屋の背面、つまり北側に離れがあり、主屋と渡廊下でつながる。離れの西隣には文庫蔵が並ぶ。さらに北西の隅に穀蔵、その南に東を向いて氏神社が置かれている。主屋を中心に、住まいの奥へ向かって離れと蔵が連なり、いちばん奥の隅に屋敷の神を祀る。農家の屋敷構えとして筋の通った配置である。

  • 主屋(明治前期、昭和前期改修/登録番号 07-0169)
  • 離れ(大正前期/登録番号 07-0170)
  • 文庫蔵(大正2年/登録番号 07-0171)
  • 穀蔵(昭和前期、昭和59年移築/登録番号 07-0172)
  • 長屋門(明治前期/登録番号 07-0173)
  • 氏神社(明治21年、昭和59年移築/登録番号 07-0174)

登録の基準は棟によって異なる。主屋だけが「造形の規範となっているもの」として登録され、残る5棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」による登録である。文化庁は主屋を地域に残る希少な大規模農家建築と評価し、穀蔵については豪農の屋敷構えを伝えるものとしている。一棟ずつの価値に加えて、6棟が揃って残っていることが、この屋敷の登録の意味といえる。

見学とアクセス

瓶子家住宅は個人の屋敷で、一般公開はされていない。文化庁と福島市の資料のいずれにも、公開日や見学受け付けの案内は見当たらない(2026年10月1日確認)。6棟とも内部に入ることはできず、見られるのは敷地の外から眺める外観に限られる。

敷地の外から最も分かりやすいのは、南辺に建つ長屋門である。屋敷の表構えにあたり、門と主屋の大屋根の位置関係もこちら側からつかみやすい。離れ・文庫蔵・穀蔵・氏神社は敷地の奥にあり、外からはほとんど見通せない。

撮影について、外観の撮影を禁じる案内は確認できなかった。ただし個人の住まいであるため、門の内側や敷地内に向けて長くカメラを構えるのは控えたい。敷地に立ち入らないことは言うまでもない。

最寄り駅は福島交通飯坂線の美術館図書館前駅で、屋敷はその南東、直線で100メートル余りの位置にある。福島駅から飯坂温泉方面の電車で2駅目、乗車時間は3〜4分ほど。大人運賃は180円である(2025年5月17日改定の運賃表による)。飯坂線の福島駅は阿武隈急行と駅舎を共用し、JR福島駅とは連絡改札でつながっている。見学者向けの駐車場の案内はない。

所在地は文化庁のデータベースで福島市森合字台35-1と記載されている。各棟の造りと見どころは、それぞれの棟のページで紹介している。

参考文献

国指定文化財等データベース 瓶子家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011247
国指定文化財等データベース 瓶子家住宅離れ(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011248
国指定文化財等データベース 瓶子家住宅文庫蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011249
国指定文化財等データベース 瓶子家住宅穀蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011250
国指定文化財等データベース 瓶子家住宅長屋門(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011251
国指定文化財等データベース 瓶子家住宅氏神社(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011252
文化遺産オンライン 瓶子家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/273402
福島市 福島市の文化財 登録有形文化財(建造物)66件
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/soshiki/7/1032/2/1/3/725.html
福島交通 飯坂電車 運賃表
https://ii-den.jp/fare/
福島交通 飯坂電車 時刻表
https://ii-den.jp/time/

最終更新日: 2026.10.01

基本情報

名称瓶子家住宅
所在地福島県福島市森合字台35-1
指定登録有形文化財 6件
座標37.76646, 140.45637