金銅獅子唐草文鉢:岐阜市唯一の国宝が眠る護国之寺の至宝

岐阜市長良の丘陵地に静かに佇む護国之寺(ごこくしじ)。この由緒ある真言宗の古刹には、岐阜市で唯一の国宝「金銅獅子唐草文鉢(こんどうししからくさもんはち)」が大切に守り伝えられています。奈良時代に制作されたこの精緻な金銅の鉢は、東大寺大仏の落慶法要にまつわる壮大な伝説とともに、千年以上の歴史を今に伝える貴重な文化遺産です。

鉢にまつわる伝説 — 日野金丸と東大寺大仏

この鉢にまつわる伝説は、護国之寺の建立そのものと深く結びついています。聖武天皇が東大寺の大仏を造立するため、優れた仏師を求めて全国に使者を派遣した折のこと。美濃国に赴いた使者が芥見(あくたみ、現在の岐阜市)の願成寺に滞在した際、夢の中で「明日の朝、最初に出会った人物こそ探し求める者である」とのお告げを受けました。

翌朝、使者が美濃国雄総(おぶさ、現在の岐阜市)で出会ったのは、川で牛を洗っていた日野金丸(ひのかねまろ)という童子でした。金丸はその場で粘土から見事な仏像を作り上げ、その才能に感銘を受けた使者は金丸を奈良へ連れていきます。金丸は大仏建立の責任者として大きな功績を残しました。

大仏の落慶法要の最中、突如として紫雲が現れ、空から天上の音楽が流れ始めました。そして空中から一つの鉢が降りてきたのです。「釈尊がこの大仏造立の功績をたたえ、釈尊由来の鉢を授ける」という声が天から聞こえ、聖武天皇は功績のあった金丸にこの鉢を授けました。金丸は故郷に戻り、この鉢を納めるために護国之寺を建立したと伝えられています。また、金丸は亡くなった後に十一面千手観世音菩薩となり、護国之寺の御本尊となったという伝説も残されています。

鉢の特徴と美術的価値

金銅獅子唐草文鉢は、奈良時代(710〜794年)の金工技術の粋を集めた逸品です。銅を打ち出して成形し、表面全体に鍍金(金メッキ)を施したもので、高さ約14.5センチメートル、径約27.5センチメートルの、いわゆる鉄鉢形をしています。

外面の装飾は圧巻です。口縁に沿って連珠文(れんじゅもん)が二条、胴部中央に三条配されて上下二段に分けられています。上段には四方に鬣(たてがみ)を振りなびかせて奔躍する四頭の獅子が表され、その間に飛雲と草花文が配置されています。背景には魚子(ななこ)と呼ばれる細密な点打ちが施され、精緻な質感を生み出しています。下段は底部中央に十七弁の蓮弁を刻み、そこから四方に唐草文が広がる構成で、こちらも魚子地となっています。

文化遺産データベースでは「雄偉な器形を獅子、唐草文様により飾った豊麗高雅な金銅鉢」と評されています。同時代に同形の無文の鉢は少なくないものの、これほど豊かな意匠を施した例はきわめて稀で、正倉院の壺や東大寺の壺に見られる類品があるのみです。本品は奈良時代の仏餉器(ぶしょうき=仏への供物を入れる器)の遺品として極めて貴重な存在です。

国宝指定の理由

金銅獅子唐草文鉢は、大正4年(1915年)3月26日に旧国宝(現行法の重要文化財に相当)に指定され、昭和30年(1955年)2月2日に文化財保護法に基づく国宝に格上げされました。国宝指定の背景には、以下のような価値が認められています。

  • 奈良時代の美意識を凝縮した卓越した芸術性 — 雄大な器形に豊麗かつ高雅な装飾を施した類まれな工芸品であること
  • 装飾を持つ仏鉢としての極端な希少性 — 同時代の無文の鉢は現存するものの、これほどの意匠を持つ例は正倉院や東大寺の遺品に限られること
  • 奈良時代の仏餉器としての歴史的価値 — 仏教儀式における供物容器の実態を伝える貴重な資料であること
  • 鉢にまつわる絵画や文献などの豊富な歴史的記録が残されていること

護国之寺と鉢の公開情報

護国之寺(ごこくしじ)は、岐阜県岐阜市長良雄総に位置する高野山真言宗の寺院です。山号は雄総山(ゆうそうざん)、千手院とも称されます。天平18年(746年)に聖武天皇の勅願により行基菩薩が開基したと伝えられ、美濃三十三観音霊場第十七番札所、美濃七福神(布袋尊)としても知られています。

天正18年(1590年)の兵火により焼失しましたが、良啓上人により再興され、現在の建物は元文〜宝暦年間(18世紀中頃)の建立です。堂々たる楼門(岐阜市指定文化財)をはじめ、多くの岐阜県・岐阜市指定重要文化財が所蔵されています。

国宝の金銅獅子唐草文鉢は通常非公開で、年に2回、1月18日と8月18日のみ一般に公開されます。この特別公開日には、本堂近くの室内に鉢が安置され、間近で奈良時代の至宝を拝観できる貴重な機会となります。また、岐阜市歴史博物館の特別展で展示されることもあります。

特別公開日以外でも、境内には美しい庭園が広がり、予約をすれば庭を眺めながら精進料理を味わうこともできます。毎月最終金曜日には「金の御朱印」が授与され、鉢のデザインをあしらった美しい限定御朱印が人気を集めています。

周辺の観光スポット

護国之寺は岐阜市の人気観光エリアに位置しており、周辺には魅力的なスポットが数多くあります。

  • 岐阜城・金華山 — 護国之寺から数キロメートル南に位置する岐阜市のシンボル。標高329メートルの金華山山頂にそびえる岐阜城は、戦国武将・織田信長ゆかりの城として知られています。ロープウェーで山頂まで約3分。展望台からは長良川や北アルプスの壮大な眺望を楽しめます。
  • 長良川鵜飼 — 5月から10月にかけて行われる、1,300年以上の伝統を持つ古典的な漁法。鵜匠が手綱を操りながら鵜を使って鮎を獲る幻想的な光景は必見です。
  • 岐阜公園 — 金華山の麓に広がる公園で、織田信長公居館跡や長良川うかいミュージアムがあり、歴史と自然を同時に楽しめるスポットです。
  • 長良天神神社 — 護国之寺からバスで約15分。学問の神様を祀る神社で、合格祈願に訪れる参拝者が多い人気スポットです。

Q&A

Q国宝の鉢はいつ見られますか?
A金銅獅子唐草文鉢は通常非公開で、毎年1月18日と8月18日の年2回のみ護国之寺にて一般公開されます。また、岐阜市歴史博物館の特別展に出品されることもあります。公開日の詳細は事前にお寺にご確認ください。
Q護国之寺へのアクセス方法は?
AJR岐阜駅(13番乗り場)または名鉄岐阜駅(4番乗り場)から岐阜バス「N41おぶさ」行きに乗車し、終点「おぶさ」で下車、徒歩約1分です。所要時間は約30分、運賃は片道約250円で、約30分間隔で運行しています。お車の場合は、東海北陸自動車道 岐阜各務原ICから約20分です。
Q拝観料はかかりますか?
A護国之寺の境内拝観は無料です。国宝公開日も別途料金はかかりません。拝観時間は午前9時から午後5時までです。精進料理をご希望の場合は事前予約が必要です(電話:058-231-3539)。
Qこの鉢と東大寺の大仏にはどのような関係がありますか?
A寺伝によると、東大寺大仏の落慶法要の際に天から鉢が降ってきたとされ、仏餉器(仏への供物を入れる器)として使用されたと伝わっています。聖武天皇が大仏建立に貢献した岐阜出身の日野金丸にこの鉢を授け、金丸が鉢を納めるために護国之寺を建立したという伝説が残されています。
Q金の御朱印とは何ですか?
A護国之寺では毎月最終金曜日(プレミアムフライデー)限定で、金色をあしらった特別な御朱印「金の御朱印」を授与しています。国宝の鉢のデザインが描かれた美しい御朱印で、御朱印集めをされている方に大変人気があります。受付時間は午前9時から午後5時です。

基本情報

名称 金銅獅子唐草文鉢(こんどうししからくさもんはち)
指定区分 国宝(工芸品)— 昭和30年(1955年)2月2日指定
時代 奈良時代(710〜794年)
材質 銅製鍍金(金メッキ)
寸法 高さ14.5cm、胴径27.0〜27.6cm
所有者 護国之寺(ごこくしじ)
所在地 〒502-0017 岐阜県岐阜市長良雄総194-1
一般公開 毎年1月18日・8月18日の年2回のみ
拝観時間 9:00〜17:00
拝観料 無料
アクセス JR岐阜駅(13番乗り場)から岐阜バス「N41おぶさ」行き約30分、「おぶさ」下車徒歩1分
電話 058-231-3539
宗派 高野山真言宗
山号 雄総山(ゆうそうざん)
本尊 十一面千手観世音菩薩

参考文献

金銅獅子唐草文鉢 - 文化遺産データベース
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/188996
国宝-工芸|金銅獅子唐草文鉢[護国之寺/岐阜] | WANDER 国宝
https://wanderkokuho.com/201-00461/
護国之寺 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%B7%E5%9B%BD%E4%B9%8B%E5%AF%BA
護国之寺|観光スポット|岐阜県観光公式サイト「岐阜の旅ガイド」
https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_7131.html
護国之寺|観光スポット - 岐阜市観光コンベンション協会
https://www.gifucvb.or.jp/sightseeing/detail_kankou.php?eid=00033
護国之寺 国宝・金銅獅子唐草文鉢のページ
https://www.ne.jp/asahi/gifu/gokokushiji/page-bunkazai.htm

最終更新日: 2026.03.20