文亀2年の墨書を持つ拝殿
白山神社拝殿は、岐阜県山県市東深瀬にある室町時代後期の神社建築で、文亀2年(1502年)に建てられ、昭和31年(1956年)6月28日に国の重要文化財に指定された。
県道256号から東へ細い道を入り、杉並木を抜けたところに赤い両部鳥居が立つ。その正面、大きなモミの木の傍らに拝殿がある。装飾は少ない。正面五間(約9メートル)、側面三間(約5.4メートル)、入母屋造、檜皮葺。付近に多いチャートと砂岩を積んだ基壇の上に、素のままの木肌を見せて建っている。
棟札には文亀2年の年号と、願主として源守元の名が記されている。この棟札1枚も、拝殿の附(つけたり)として国の指定に含まれている。
拝殿が国指定となった理由
中世の神社建築で現存数が多いのは本殿である。神が鎮まる本殿は聖域として扱われ、式年の造替や丁寧な修理を重ねて伝えられてきた。これに対し拝殿は参拝者が集まる実用の建物で、傷めば建て替えられることが多い。室町期の拝殿がまとまった形で残る例は限られる。
文化庁の国指定文化財等データベースは、この建物を員数1棟、種別「近世以前/神社」、年代を文亀2年(西暦1502年)と記載する。指定番号は01364。山県市域で国の指定を受けている建造物は、現在この拝殿のみである。
記録に残るだけでも修理は5回を数える。近年では昭和39年(1964年)から翌40年にかけて、当時の文部省技士の指導のもと、大工・人夫・屋根葺師が入って解体を伴う修理が行われた。東深瀬から西深瀬にかけての一帯は鳥羽川の氾濫を繰り返し受けた低湿地で、耕作にも難儀した土地だったと伝わる。そうした場所に1502年の木造建築が立ち続けている。
細部を見る
まず軒を見上げたい。垂木は一軒疎垂木で、垂木にも隅木にもゆるやかな反りがつく。屋根の勾配と反りが呼応して、四隅がわずかに跳ね上がる。この線が拝殿の印象を決めている。彫刻で見せる建物ではない。
妻飾は豕叉首式。二本一組の斜材を一間ほどの間隔で並べて屋根を受ける構造である。破風には猪目懸魚が垂れ、棟には赤銅を張った箱棟が載る。
柱は10分の1の面取。柱上には舟肘木が置かれるが、この規模の建物としては彫りに力がある。長押は上下に二段まわしてあり、簡素な外観に格式を添えている。
外回りは要所を残して腰板を張り、床下には連子をはめ込む。天井は中央間を猿頬面をとった格天井とし、周囲一間通りは化粧屋根裏として構造をそのまま見せる。回り縁を支えるのは、渦巻文のある実肘木をつけた大斗で、その大斗が素朴な虹梁の上に載る。この取り合わせは正面の階段の下からでもよく見える。
拝殿の裏手には石段があり、山肌の本殿へ通じている。祭神は伊邪那美神。石段を登る参拝者は、段の下に置かれた藁草履に履き替えてから登る。境内には江戸時代後期の作とされる木造狛犬もあり、この地域では唯一の木造の一対と伝わる。
境内は常時開放されており、拝観料はかからない。外観の撮影も可能である。駐車場は用意されているが私有地であるため、行事のある日には利用できないことがある。例祭はかつて3月21日だったが、現在は4月第1日曜日に行われる。岐阜市中心部から車でおよそ40分。鉄道の駅は近くにないため、車かタクシーでの訪問が現実的である。
Q&A
- 白山神社拝殿は拝観できますか。拝観料や拝観時間は決まっていますか。
- 境内は常時開放されており、門や決まった拝観時間はなく、拝観料も不要です。拝殿は正面と側面から見学・撮影ができます。内部は通常公開されていませんが、格天井や舟肘木は正面の階段から見上げることができます。
- 白山神社拝殿へのアクセス方法と駐車場について教えてください。
- 所在地は山県市東深瀬で、県道256号から東へ細い道に入った先にあります。岐阜市中心部から車で約40分。最寄りの鉄道駅はありません。駐車場はありますが私有地のため、行事の日には利用できない場合があります。
- 白山神社拝殿はいつ建てられたのですか。年代の根拠は何ですか。
- 文亀2年(1502年)の建立です。棟札にこの年号と、願主である源守元の名が記されています。この棟札1枚も附として国の重要文化財指定に含まれています。
- 白山神社拝殿はどのような点が評価されて重要文化財になったのですか。
- 室町期の拝殿は本殿に比べて現存例が少なく、実用の建物であるがゆえに建て替えられやすかったためです。この拝殿は当初の規模と檜皮葺の屋根を保ち、舟肘木、一軒疎垂木、猪目懸魚、豕叉首式の妻飾など室町期の手法をよく残しています。
- 白山神社拝殿のほかに、境内に見どころはありますか。
- 拝殿の裏手から石段が伸び、山肌の本殿へ通じています。伊邪那美神を祀り、参拝には藁草履に履き替えて登ります。境内には江戸後期の木造狛犬や複数の境内社もあります。例祭は4月第1日曜日です。
基本情報
| 名称 | 白山神社拝殿(はくさんじんじゃはいでん) |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県山県市東深瀬 |
| 指定区分 | 重要文化財(指定番号 01364) |
| 指定年 | 昭和31年(1956年)6月28日 |
| 員数 | 1棟(附:棟札1枚) |
| 寸法 | 桁行五間(約9メートル)、梁間三間(約5.4メートル)、一重、入母屋造、檜皮葺 |
| 所有者 | 白山神社 |
| 公開状況 | 境内常時開放・拝観料無料。外観の見学と撮影が可能。内部は通常非公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「白山神社拝殿」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1092
- 岐阜県公式ホームページ 文化伝承課「白山神社拝殿」
- https://www.pref.gifu.lg.jp/page/353187.html
- 山県市ホームページ「白山神社」
- https://www.city.yamagata.gifu.jp/site/yamanavi/1125.html
- はじめての山県市めぐり「白山神社」
- https://www.kankou-gifuyamagata.jp/article/deatils/hakusanjinjya
最終更新日: 2026.08.06