岐阜公園に建つ煉瓦の博物館
名和昆虫博物館は、岐阜県岐阜市の岐阜公園内にある大正8年(1919年)建築の煉瓦造2階建の建物で、平成8年(1996年)に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は21-0001。岐阜県で最初に登録された建造物である。
博物館の出発点は展示施設ではなく研究機関だった。ギフチョウの発見者として知られる昆虫学者・名和靖が、明治29年(1896年)に害虫の駆除と益虫の保護を目的として名和昆虫研究所を設立する。研究所は当初岐阜市白木町にあったが、明治37年(1904年)に金華山麓の現在地へ移った。博物館の開館は大正8年10月26日。以来、館長は名和靖の子孫が代々務めている。
収蔵標本は約12,000種、30万点を超える。昆虫を専門とする博物館としては国内で最も古い。
設計者・武田五一と登録の理由
設計は武田五一(1872-1938年)。登録データベースにも記されているとおり、当時は名古屋高等工業学校の校長を務めていた。のちに京都帝国大学建築学科の創設に関わり、関西の近代建築を牽引した人物である。
建物でまず目に入るのは車寄せの玄関だろう。屋根の妻面をギリシャ神殿風のペディメントに見立てた意匠で、桟瓦を葺いた切妻屋根の煉瓦造という和洋の折衷の上に、古典建築の記号がひとつだけ載っている。
内部には3本の丸柱が立つ。奈良・唐招提寺の解体修理の際に譲り受けたもので、シロアリの食害の跡をあえて削らずに残したまま使っている。害虫の研究のために生まれた施設が、自らの構造材に虫害の痕跡を保存した。設計と展示の主題がここで重なる。
登録基準は「造形の規範となっているもの」。煉瓦造の壁体、玄関の古典意匠、小規模な建物としての均衡が、著名建築家の作風を示す事例として評価されたことになる。
見どころと拝観の実際
金華山ロープウェーの乗り場が近く、岐阜城とあわせて訪れる人が多い。館内へ入る前に、外観を数分眺めてみたい。煉瓦の焼きむらが場所によってまったく違う色を見せる。朝の光の下と、夏の濃い木陰の下とでは、玄関まわりの印象がかなり変わる。
隣には明治40年(1907年)建築の名和記念昆虫館が建つ。設計は同じく武田五一。標本を湿気から守るために床を高くした高床式の洋風建築で、岐阜市の指定文化財となっている。もとが一般公開を前提としない特別昆虫標本室であったため、通常は内部を見学できない。2棟の間に立つと、同じ設計者の12年の変化がひと目で分かる。
博物館の西側には、大正8年に名和靖の還暦を祝って建てられた昆蟲碑がある。昆虫の供養のための碑で、これも武田の設計と伝わる。
開館時間は10時から17時まで。休館日は火曜・水曜・木曜で、祝日にあたる場合は開館し、夏休み期間は無休となる。入館料は一般(高校生以上)650円、子ども(4歳以上)450円。20名以上の団体はそれぞれ550円、350円に割引される。団体の事前申し込みがあれば、休館日でも対応する場合がある。
アクセスはJR岐阜駅または名鉄岐阜駅から長良方面行きのバスに乗り、岐阜公園で下車して徒歩約5分。乗車時間はおよそ15分である。撮影の可否は建物と展示物とで扱いが異なることがあるため、受付で確認してから構えるとよい。
Q&A
- 名和昆虫博物館は見学できますか。入館料はいくらですか。
- 名和昆虫博物館は現役の博物館として一般公開されています。開館時間は10時から17時まで、入館料は一般(高校生以上)650円、子ども(4歳以上)450円です。20名以上の団体は一般550円、子ども350円になります。
- 名和昆虫博物館の休館日はいつですか。
- 名和昆虫博物館の休館日は火曜・水曜・木曜です。ただし祝日にあたる場合は開館し、夏休み期間は無休で開けています。行事や館内整理による臨時休館もあるため、遠方から向かう場合は事前の確認をおすすめします。
- 名和昆虫博物館はなぜ登録有形文化財になったのですか。
- 名和昆虫博物館は平成8年(1996年)に「造形の規範となっているもの」という基準で登録されました。煉瓦造2階建という構造、ギリシャ神殿風に妻面を仕上げた車寄せ玄関、そして武田五一の設計であることが評価の根拠です。登録番号21-0001が示すとおり、岐阜県で最初の登録建造物にあたります。
- 名和昆虫博物館へは岐阜駅からどう行けばよいですか。
- 名和昆虫博物館は岐阜公園の中にあります。JR岐阜駅または名鉄岐阜駅から長良方面行きのバスに乗り、岐阜公園で下車して徒歩約5分です。バスの所要時間はおよそ15分です。
- 隣接する名和記念昆虫館も名和昆虫博物館と同じ登録有形文化財ですか。
- 異なります。国の登録有形文化財となっているのは大正8年建築の名和昆虫博物館1棟のみです。隣の名和記念昆虫館は明治40年の建築で、同じく武田五一の設計ですが、岐阜市の指定文化財として別に保護されており、通常は内部を公開していません。
基本情報
| 名称 | 名和昆虫博物館(なわこんちゅうはくぶつかん) |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県岐阜市千畳敷大道西308-1(岐阜公園内。館が案内する郵便上の住所は岐阜市大宮町2-18) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号21-0001 |
| 指定年 | 平成8年(1996年)12月20日登録、同年12月26日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 煉瓦造2階建、瓦葺、建築面積183平方メートル |
| 所有者 | 財団法人名和昆虫研究所 |
| 公開状況 | 博物館として公開。10時~17時、火・水・木曜休館(祝日は開館、夏休み期間は無休)、入館料一般650円・子ども450円 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「名和昆虫博物館」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000048
- 文化遺産オンライン「名和昆虫博物館」
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/135818
- 岐阜観光コンベンション協会 岐阜市観光ナビ「名和昆虫博物館」
- https://www.gifucvb.or.jp/sightseeing/detail_kankou.php?eid=00006
最終更新日: 2026.08.06