街道に構える宿役人の町家

中山道が江戸から数えて四十四番目の宿場、落合宿。岐阜県中津川市の山あいに開けたこの宿場で、旧街道に南面して建つのが上田家の主屋、通称「上の上田屋」である。宿役人をつとめた家の格式を、街道側の構えがそのまま示している。

建てられたのは明治前期、およそ明治元年から十五年(1868〜1882)ごろ。木造二階建で一部に地階を備え、瓦を葺く。建築面積はおよそ200平方メートル。昭和初期と平成十六年(2004)の改修を経て今も使われており、宿場の暮らしのなかに置かれた建物として残る。

登録の理由と価値

平成二十六年(2014)十月、主屋は登録有形文化財となった。土蔵・離れとあわせた一括の登録で、登録番号は21-0230。文化庁が挙げる基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。落合宿の町並みを構成する一軒として、その姿に価値が認められている。

見どころは街道側の造作に集約される。二階正面を出梁で前方へ持ち出し、その下に出格子を立てる。裕福な街道町家に共通する構えだが、比例を保って残る例は多くない。解説を担当した建築史家の麓和善は、この家を宿役人の家が持っていた格式の記録として読み解いている。

訪ねるときの見どころ

まず軒から目を下ろしていきたい。持ち出された二階と出格子が正面に奥行きを与え、午後の斜光では格子の影が下の壁面に落ちる。

内部の構成も理にかなっている。東側は土間で、家の奥へと長く通る。奥寄りでは奥部屋の床下をくぐって背面の庭へ抜ける造りで、間口が狭く奥行きの深い敷地に人と荷を通すための工夫である。床上は前寄りを表間とし、その奥に居室や座敷を二列に並べる。表と奥、公と私を分ける空間の序列が、そのまま家の暮らしに対応していた。

ひとつ断っておきたい。ここは個人の住居で、内部は公開されていない。街道からの外観を落合宿の町並みの一部として眺めるのがよく、周辺の宿場歩きとあわせて楽しみたい。

Q&A

Q主屋の内部は見学できますか。
Aできません。個人の住居であり、内部公開は行われていません。外観は街道から落合宿の町並みの一部として見ることができます。
Qいつ建てられた建物ですか。
A主体部は明治前期、およそ1868〜1882年ごろの建築です。昭和初期と2004年に改修が加えられています。
Q「出梁」とはどのような造りですか。
A二階を梁で前方へ持ち出す構法を指します。上田屋ではその下に出格子を組み、街道に面する裕福な町家に共通する構えをつくっています。
Q落合宿へのアクセスは。
AJR中津川駅からバスまたはタクシー、徒歩なら旧街道沿いに約1時間。車なら中央自動車道中津川ICから国道19号経由で約10分です。
Q近くの見どころは。
A岐阜県内で唯一残る落合宿本陣や、馬籠へ続く落合の石畳が近くにあります。本陣の公開日は事前に確認してください。

基本情報

名称上の上田屋上田家住宅主屋
所在地岐阜県中津川市落合字落合町831
指定区分登録有形文化財(2014年10月7日登録)
登録番号21-0230
員数1棟
構造木造2階建一部地階付、瓦葺、建築面積約200㎡
年代明治前期(1868〜1882頃)/昭和初期・2004年改修
公開状況外観は街道から見学可、内部非公開

参考文献

上の上田屋上田家住宅主屋 — 文化遺産オンライン(文化庁)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/262302
国指定文化財等データベース — 主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010149
落合宿 — 中津川市
https://www.city.nakatsugawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kankoka/5/2/755.html

最終更新日: 2026.07.11