福山城の旧二の丸に残る昭和初期の別荘

福山市福寿会館は、広島県福山市丸之内にある昭和10年(1935年)から昭和12年(1937年)頃に建てられた邸宅の建物群で、洋館が平成9年(1997年)に、本館・西茶室・南茶室・西蔵・東蔵の5棟が平成24年(2012年)に登録有形文化財となった。

敷地は福山城の天守の北東にあり、広さは7,395平方メートル。登録された6棟は、和風の本館、それに付属する2階建ての洋館、2棟の茶室、2棟の土蔵で、建坪はあわせて872平方メートルとされる。建物は敷地の北側に寄せて建てられ、南側を池の庭園が占めている。

名前には注意がいる。文化庁の登録名で「福山市福寿会館」を名乗っているのは施設全体ではなく、最初に登録された洋館1棟である。ほかの5棟は「福山市福寿会館本館」のように施設名に棟の名を続けた形で登録されている。このサイトでも洋館のページは登録名どおり「福山市福寿会館」としている。

所在地の書き方も2通りある。文化庁のデータベースは「丸之内1-1-1」、市の施設案内は「丸之内1丁目8番9号」を用いる。前者は地番、後者は住居表示とみられ、どちらも同じ敷地を指している。

「鰹節王」の別荘から市の施設へ

建て主は、海産物商として財を成し「鰹節王」と呼ばれた安部和助である。読みは、福山城博物館と市の施設案内が「あんべわすけ」とする一方、市の観光案内には「あべわすけ」とあり、資料によって分かれている。

敷地は福山城の旧二の丸の北側にあたり、江戸時代には福山藩の御用米を納める五千石蔵が並んでいた。明治以降に民間へ払い下げられたこの土地に、和助は1930年代に広い別荘を構えた。市の説明では本館が昭和10年(1935年)から昭和12年(1937年)頃までにでき、西茶室が昭和15年(1940年)、南茶室が昭和17年(1942年)に加わっている。

昭和20年(1945年)8月8日の福山空襲で福山城の天守は焼け落ちたが、城のすぐ北にあったこの屋敷は焼失を免れた。その後、所有者が替わったのち、昭和28年(1953年)に土地と建物が福山市へ寄贈され、「福寿会館」と名付けられた。当初は結婚式場として公開され、現在は貸会議室や茶室として市民の茶会や催しに使われている。

文化財としての登録は2度に分かれた。平成9年(1997年)7月15日に洋館が、平成24年(2012年)2月23日に本館、西茶室、南茶室、西蔵、東蔵の5棟が登録された。市は本館について、廊下や天井に至るまで今日では手に入らないと思われる材を多用した数寄屋建築だと評価している。

敷地の配置と庭園

本館が敷地の北の中ほどを占め、北西に廊下でつながる西蔵、西に渡り廊下でつながる西茶室、北東に東蔵がある。洋館は本館の東寄りに付属し、切妻の妻面を庭に向ける。池の向こう、敷地の南に離れて建つのが「望城亭」とも呼ばれる南茶室である。

庭は回遊林池式の庭園で、京都の作庭家西村氏の指導のもと、完成まで10年をかけたと伝わる。池は小堀遠州好みの心字形とされ、欄干付きの太鼓橋が架かる。東側には深山から流れ出た水が大きな流れになる様子を表した滝があり、園路の途中には門や垣根、東屋、意匠の異なる石灯籠が据えられている。

この屋敷は、庭の向こうに福山城の天守を眺めることを前提に配置されている。本館の南の広縁から池と松越しに天守が見えるのはそのためである。ただし建築当時に見えていた天守は1945年の空襲で失われ、現在の天守は昭和41年(1966年)に市民や企業の寄付をもとに天守台を使って再建されたものである。

回る順序としては、本館の事務所で声をかけて座敷の広縁から天守の方向を確かめ、それから庭の園路を南へ下り、南茶室の露地の構えを見るのが分かりやすい。池の南側から振り返ると、本館の低い屋根と洋館の急な切妻屋根が一続きに見え、和館に洋館を添えた昭和初期の邸宅の構成が読み取れる。

アクセスと開館時間

福山市福寿会館へは、JR福山駅の北口から北西へ歩いて約5分である。福山城公園の北東の一角にあたる。車では山陽自動車道の福山東インターチェンジから西へ約20分だが、専用の駐車場はなく、周辺の有料駐車場を使うことになる。

開館時間は午前9時から午後5時まで。休館日は毎週月曜日(祝日の場合は翌日)と12月28日から1月3日までで、保守のため臨時に休むこともある。市が掲げている料金は部屋を借りる場合の使用料で、庭を歩くための料金は示されていない。

本館や茶室は貸室として使われており、予約の入っている部屋には入れない。建物の中を見たいときは、当日に事務所(電話084-923-1516)で空き具合を尋ねるのが確実である。撮影の扱いもそのとき確かめておきたい。

年中行事では、春と秋に市民茶会が開かれ、2026年度の茶席券は700円である。2月から3月にかけての「くつろぎのひな祭り」では本館に江戸時代から現代までの雛人形が飾られ、会期中は入館無料、時間は午前9時30分から午後4時30分(入館は午後4時まで)となる。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 福山市福寿会館
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000264
文化庁 国指定文化財等データベース 福山市福寿会館本館
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009217
ふくやま文化財ナビ(福山市)福山市福寿会館・福山市福寿会館本館 ほか4棟
https://fukubun.net/ja/collection/680
福山市 福寿会館和館
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/fukuju/16605.html
福山市 福寿会館庭園
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/fukuju/15916.html
福山市 福寿会館アクセス
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/fukuju/15847.html
えっと福山(福山市)福寿会館
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/miryoku2023/288928.html
福山市 2026(令和8)年度福寿会館主催行事のご紹介
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/fukuju/392592.html
福山城博物館 福寿会館
https://fukuyamajo.jp/miru/fukujyu/
福山市 福山城の歴史
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/koho-detail14/koho-202006/187064.html

最終更新日: 2026.09.26

基本情報

名称福山市福寿会館
所在地広島県福山市丸之内1-1-1他
所有者福山市
指定登録有形文化財 6件
座標34.49195, 133.36138