村が自前でつくった水力発電所

旧上久下村営上滝発電所は、兵庫県丹波市山南町上滝の篠山川右岸に建つ大正11年(1922年)竣工の煉瓦造2階建で、平成20年(2008年)4月18日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

現地に着くと、まず大きさに驚く。文化庁の登録データによれば桁行9.2メートル、梁間6.5メートル、建築面積59平方メートル。切妻造の瓦屋根をのせた煉瓦造2階建で、橋が登録対象に含まれる。ゆとりのあるガレージほどの規模である。

煉瓦の積み方を見てほしい。長手と小口を段ごとに交互に見せるイギリス積で、都市部から遠く離れたこの谷で職人が積み上げた。1階の開口部は長方形の上下窓。2階には欠円アーチ、つまり半円まで至らない扁平な弧を描く窓が並ぶ。この建物の格を決めているのは、ほとんどこの窓の形である。

ランプの村に電灯がついた

大正9年(1920年)当時、上久下村はまだランプ生活だった。村内で水力発電の協議がまとまり、その年の12月に着工。大正11年6月に竣工し、大正12年(1923年)1月8日から送電を開始した。取水は専用水路ではなく既存の農業用水路を利用したという。有効落差18.9メートル、出力70キロワットという数値が愛好家の現地調査に記録されているが、概数として受け取っておきたい。

戦時下の電力統制により関西配電株式会社に統合され、のちの関西電力に引き継がれる。稼働が止まったのは昭和38年(1963年)で、故障が原因だった。修復されることはなかった。

登録の理由と、川床の恐竜

登録番号は28-0355。適用基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、告示は平成20年5月7日。所有者は丹波市である。ここで評価されているのは、ほぼ消えてしまった種類のインフラだ。全国送電網と大手電力会社に吸収される前、電気を使う住民自身が建てて運営した小規模発電所である。

この建物が残ったのには、電気とは無関係な幸運も働いている。平成18年(2006年)8月、真下の篠山川河床、篠山層群の前期白亜紀泥岩層から化石が見つかった。のちにティタノサウルス形類の新属新種と認定され、学名タンバティタニス・アミキティアエ、通称「丹波竜」と呼ばれることになる。化石に集まった関心が、その上に建つ廃屋同然の煉瓦の小屋にも及んだ。

保存・改修工事を経て、平成22年(2010年)2月11日に丹波市旧上久下村営上滝発電所記念館として開館。館内には発電の仕組みや建設当時を紹介するパネルと映像、恐竜化石に関する資料が置かれている。出力500ワット程度の小水力発電設備も設けられ、建屋の電源の一部をまかなっている。規模は小さいが、この建物はふたたび発電している。

訪ねるときに

開閉時間は丹波市の管理規則で午前10時から午後4時までと定められている。休館日は毎週月曜日と火曜日で、その日が祝日にあたる場合は翌日以降の休日でない最初の日に振り替わる。12月29日から翌年1月3日までも休館。入館は無料と観光情報に記載されている。運営体制が小さく、行事等で予定が変わることもあるため、事前に電話で確かめておくと確実である。

行き方には少し準備がいる。JR福知山線の下滝駅から約1.5キロ。記念館の隣は丹波竜発見地の展望広場で、化石のレプリカが展示されている。建物脇の階段から川へ降りることができるので、休館日でも外観はゆっくり観察できる。

一帯は東西約4キロにわたる川代渓谷で、篠山層群の堆積岩が露出している。近くの川代公園には篠山川をまたぐ長さ90メートルの吊り橋があり、4月上旬には川岸の桜が見頃を迎える。外観の撮影に支障はないが、館内の撮影可否は公表されていないため現地で確認してほしい。

Q&A

Q旧上久下村営上滝発電所は内部を見学できますか。開館時間は?
A見学できます。丹波市の記念館として公開されており、市の管理規則では開閉時間は午前10時から午後4時まで。休館日は月曜日・火曜日(祝日の場合は振替)と12月29日から1月3日までです。入館は無料と観光情報に記載されています。
Q旧上久下村営上滝発電所へのアクセスは?
A最寄り駅はJR福知山線の下滝駅で、現地まで約1.5キロです。車での来訪が中心で、記念館は丹波竜化石発見地の展望広場に隣接しています。
Q旧上久下村営上滝発電所はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A平成20年4月18日、登録番号28-0355として「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準で登録されました。村が独自に資金を出し、建設し、運営した水力発電施設という点に価値があります。こうした地域主体のインフラはほとんど残っていません。
Q旧上久下村営上滝発電所と丹波竜にはどんな関係がありますか。
A平成18年8月、建物の真下にあたる篠山川の河床で恐竜化石が発見されました。のちにタンバティタニス・アミキティアエと命名された丹波竜です。この発見をきっかけに廃止されていた発電所の価値が注目され、保存・改修を経て平成22年2月に記念館として開館しました。
Q旧上久下村営上滝発電所の建物はどのくらいの大きさですか。
A小規模です。文化庁の登録データでは桁行9.2メートル、梁間6.5メートル、建築面積59平方メートル。イギリス積の煉瓦造2階建で、屋根は切妻造の瓦葺。橋が登録対象に含まれています。

基本情報

名称旧上久下村営上滝発電所
所在地兵庫県丹波市山南町上滝字八ヶ坪1312-2他
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 28-0355
指定年平成20年(2008年)4月18日登録、同年5月7日告示
員数1棟
寸法煉瓦造2階建、瓦葺、桁行9.2メートル・梁間6.5メートル、建築面積59平方メートル、橋付。大正11年(1922年)竣工
所有者丹波市
公開状況記念館として公開。午前10時から午後4時、月曜・火曜および12月29日から1月3日は休館

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧上久下村営上滝発電所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007099
文化遺産オンライン「旧上久下村営上滝発電所」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/144361
丹波市例規集「丹波市旧上久下村営上滝発電所記念館管理規則」
https://www.city.tamba.lg.jp/section/reiki/reiki_honbun/r394RG00000332.html
北近畿観光連盟「丹波市立旧上久下村営上滝発電所記念館」
https://kitakinki.gr.jp/spot/2045

最終更新日: 2026.08.26