豪農藤井家の屋敷が美術館になるまで
コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)は、兵庫県西脇市市原町にある豪農藤井家の屋敷で、明治23年(1890年)に建てられた主屋を中心に、門と塀、蔵、洋館、離れなど9件が国の登録有形文化財に登録されている。別名を旧藤井家住宅といい、観光案内では「藤井滋吉邸」「豪農の館」とも紹介される。
藤井家は東に杉原川が流れるこの地で大きな屋敷を構えた農家で、運営者の株式会社コヤノは、旧国鉄鍛冶屋線の建設や西脇商業銀行の設立に力を尽くした家と説明している。伊藤博文が泊まったという話も館は伝えるが、これは家に残る伝承として紹介されているもので、宿泊の記録が公にされているわけではない。
屋敷はその後長く空き家となり、傷みが進んだ。大阪に本社を置く株式会社コヤノが平成17年から20年(2005〜2008年)にかけて床や壁を修復し、建具・柱・上り框などは明治の部材を残したまま、平成20年(2008年)8月に美術館として開館した。展示品は館長の小谷野達雄が集めた古美術や古民具で、テーマを替えながら屋敷の各室に並べている。
同じ名を持つコヤノ美術館の本館は大阪市都島区の本社ビルにあり、開館日も料金も西脇館とは別である。カーナビで「コヤノ美術館」と入れると大阪が出ることがあると館自身が注意を促しているので、住所の西脇市市原町139で探すほうが確実だ。
9件の登録と、建てられた順序
コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)の登録は2回に分かれる。まず主屋が平成25年(2013年)12月24日に登録され(登録番号28-0565)、続いて平成27年(2015年)11月17日に残る8件がまとめて登録された(28-0627〜28-0634)。敷地内の建物と門・塀は、これですべて登録有形文化財になった。
年代を並べると、屋敷は30年ほどかけて今の姿になっている。明治23年(1890年)の主屋が最も古く、表門及び塀、庭門及び塀、主屋南脇門及び塀、米蔵、衣装蔵の5件が明治後期に加わった。大正後期には主屋の西へ長い廊下を延ばし、その南側に洋館と浴室及び便所棟を建て、廊下の突き当たりに大正11年(1922年)の離れを置いた。和風の農家住宅に、応接間と書斎だけの小さな洋館と、タイル張りの浴室を足していった過程がそのまま残っている。
登録の基準も1件ずつ異なる。門・塀・蔵と主屋は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、洋館と離れは「造形の規範となっているもの」、浴室及び便所棟は「再現することが容易でないもの」として登録された。外から見える屋敷構えと、内部の意匠や設備とで、評価の観点が分かれていることが読み取れる。
このほか兵庫県は、平成28年度の第10次指定として、屋敷を景観形成重要建造物に加えている(西脇市観光物産協会は平成29年(2017年)と案内している)。
屋敷の配置と、見て歩く順序
敷地は約3,000平方メートルで、コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)は東の道路に正面を向けている。道に面するのは間口2.5メートルの表門と、その左右に延びる板張りの高塀で、表門の南には米蔵が妻を見せて建つ。来館者はこの表門をくぐって屋敷に入る。
門を入ると、主屋の中央から表門の北へ庭門と塀が延び、座敷の前庭と玄関までの通路を仕切っている。主屋は敷地の中央に東を向いて建ち、その南には主屋南脇門と高さ約4メートルの塀が西へ続いて、屋敷の南辺を閉じる。衣装蔵は主屋の北西で中庭を囲む位置にある。
主屋の西からは廊下がまっすぐ西へ延びる。館の案内ではこの廊下が約20メートルあり、東半分の南に洋館、西半分の南に浴室及び便所棟が付き、突き当たりで2階建ての離れにつながる。見学は館のスタッフが案内しながら回る形式で、順路はおおむね主屋から廊下を西へ進み、離れで折り返す流れになる。各棟の見どころは、それぞれのページにまとめた。
開館日・入館料・撮影のきまり
コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)は毎週日曜日だけ開館する。時間は午前10時から午後5時まで、12月から2月は午後4時に閉館する。祝日でも日曜日以外は休館で、年末年始は展示替えのため閉まる。平日と土曜日は予約制で、17名までは1回16,000円、18名以上は1人900円で受け入れている。豪雨や台風、地震の際は当日休館することがあり、館の X(株式会社コヤノ)に告知が出る。
入館料(館は協賛金と呼ぶ)は一般1,000円、小中学生300円、18名以上の団体は1人900円である。一般料金は2025年1月11日に800円から改定された。年間フリーパスポートは2,800円。館内は案内付きで、ひととおり見るのに1時間から2時間かかる。
館内での写真撮影はできる。ただしフラッシュ(記念撮影時のカメラ内蔵フラッシュは除く)と三脚は使えず、ドローンなどを駐車場を含む敷地の上空に飛ばすことも禁じられている。撮った写真をSNSに載せるのは自由で、販売目的の撮影やロケ利用は事前の相談が要る。前撮りやコスプレ撮影の受け入れもあり、その場合も土蔵の内部・屋根裏部屋・事務所は撮影場所から外される。
季節の企画としては、2月半ばから4月半ばに大正から昭和の雛人形を屋内に飾るひな祭り展がある。12月から2月の土曜日には、予約した人だけが夜の屋敷を照明の下で見られるナイトミュージアムも開かれる。
開館日・料金・撮影条件は2026年10月4日に館の公式サイトで確認した。
アクセス
鉄道ならJR加古川線の西脇市駅が最寄りで、コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)まではタクシーで約10分、市バスで約20分かかる。市バスは1時間に1本ほどなので、帰りの時刻を先に確かめておきたい。大阪駅・新大阪駅・三ノ宮駅からは神姫バスの高速バスが西脇(アピカ)まで直通しており、そこからタクシーで約7分、市バスなら約20分である。
車の場合は中国自動車道の滝野社インターチェンジから約15分。館には大型バスも停められる専用駐車場がある。
屋敷のすぐ近くに、西脇市立の鍛冶屋線市原駅記念館が建つ。大正10年(1921年)に播州鉄道の延伸で開業した市原駅の駅舎を再現した施設で、鉄道は国鉄鍛冶屋線として走ったのち平成2年(1990年)3月末に廃止された。藤井家が建設に尽くしたと伝わる鉄道の駅が、屋敷のすぐそばにあったことになる。春は記念館前の桜が咲き、館もその時期の来館を勧めている。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース:コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009807
- 文化庁 国指定文化財等データベース:コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)離れ
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010859
- 文化遺産オンライン:コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/270866
- 西脇市:西脇市の指定文化財
- https://www.city.nishiwaki.lg.jp/kakukanogoannai/kyouikuiinkai/kyouikukanribu/kyoudoshiryoukan/bunkazai.html
- コヤノ美術館:西脇館
- https://koyafron.co.jp/museum/nishiwaki/index.html
- コヤノ美術館:フロアーガイド(西脇館)
- https://koyafron.co.jp/museum/nishiwaki/floor.html
- コヤノ美術館:アクセス(西脇館)
- https://koyafron.co.jp/museum/nishiwaki/access.html
- コヤノ美術館:撮影会等利用案内(西脇館)
- https://koyafron.co.jp/museum/nishiwaki/rental.html
- コヤノ美術館:イベント情報
- https://koyafron.co.jp/museum/event.html
- コヤノ美術館:コヤノの秘密(両館共通)
- https://koyafron.co.jp/museum/honkan/secret.html
- 西脇市観光物産協会 にっぽんまんなか紀行:コヤノ美術館 西脇館
- https://www.nishiwaki-kanko.jp/guide/sightseeing/koyanobijutsukan.html
- 西脇市観光物産協会 にっぽんまんなか紀行:鍛冶屋線市原駅記念館
- https://www.nishiwaki-kanko.jp/guide/sightseeing/ichiharaekikinenkan.html
最終更新日: 2026.10.04
基本情報
| 名称 | コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅) |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県西脇市市原町字広畑ケ139 |
| 所有者 | 株式会社コヤノ |
| 指定 | 登録有形文化財 9件 |
| 座標 | 35.01350, 134.95450 |