建築面積1.0平方メートルの登録文化財

長田神社八幡社は、兵庫県神戸市長田区長田町にある昭和3年(1928年)建立の摂末社社殿で、平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財に登録された(告示は同年3月12日)。

登録上の建築面積は1.0平方メートルである。

寸法は尺貫法で記録されている。桁行2尺7寸、およそ82センチメートル。梁間2尺2寸、およそ67センチメートル。向拝の梁間が1尺8寸、約55センチメートル。大人が両腕で抱えられる大きさだ。それでいて、本格的な社殿に備わるものは一通りそろっている。切石を3段積んだ基壇、一間社流造の反りのある屋根、銅板葺、軒は一軒繁垂木、木部は丹塗。

透塀の内側という位置

八幡社が建つのは透塀の内、本殿の西方である。本殿をはさんで東側には、同じ寸法・同じ仕様でつくられた天照社が向かい合う。

この二社の位置づけは付随的なものではない。文化庁の記録は、八幡社が天照社とともに透塀内の聖なる空間を構成する主要素になる、と記している。本殿が単独で立っているのではなく、左右を固められている、という意味である。長田神社の主祭神は事代主神で、本殿の瑞垣内には東に天照大御神、西に八幡神として信仰される応神天皇が祀られるとされる。

透塀に囲まれているため、参拝者は通常、塀の外から眺めることになる。透塀とはそういう構造物で、視線は通すが人は通さない。角度を選んで立つと、縦の桟のあいだから小さな社殿の丹塗がはっきりと見えてくる。

一間社流造という形式

流造は日本の神社本殿でもっとも多く用いられる形式である。切妻屋根の前後が非対称で、正面側の流れが壁の位置を越えて長く伸び、参拝する場所に屋根を差し掛ける。そのため建物はわずかに前傾しているように見える。一間社は正面の柱間が一間であることを指す。この寸法でその形式を成立させると、実物大の技術で組まれた縮尺模型のような姿になる。登録基準の「造形の規範となっているもの」が評価しているのは、その徹底ぶりだろう。

大正13年の火災と昭和3年の再建

長田神社そのものは古い。『延喜式』神名帳に名神大社として載り、近代の社格制度では官幣中社に列した。生田神社、湊川神社と並んで神戸を代表する神社に数えられる。歴史は長い。ただし建物は新しい。

寛文元年(1661年)の社殿が大正13年(1924年)1月、漏電により焼失した。再建が成ったのが昭和3年で、現在透塀内に建つものはほぼこの時の造営による。八幡社もそのひとつである。神社側の説明によれば、本殿以下の社殿は漆下地に丹塗と極彩色を施し、銅板葺とした初めての施工であり、本殿の設計は香川定太郎が担当した。昭和36年から38年にかけて塗り直しの修復が行われ、昭和55年前後には屋根の葺替えと再度の塗替えが施されている。

昭和20年(1945年)の神戸大空襲で市内の主要な神社の多くが焼けたなかで、長田神社は焼失を免れた。神社側は、神戸市内で戦災を免れた唯一の大社殿と記している。平成7年(1995年)1月の阪神・淡路大震災では長田区一帯が火災で大きな被害を受け、神社も被害を受けたが、境内は当日から臨時の避難所として使われた。

参拝の実際 ― 塀越しに探す

境内への立ち入りは無料で、八幡社を見るための拝観料もない。神職以外が中に入る建物ではないからだ。拝殿から本殿に向かい、そのまま視線を左へ振って塀沿いを探すことになる。開門時間は4月から9月が5時から18時、10月から3月が6時から18時とする案内があり、授与所の受付はこれより短い日中の時間帯に限られる。透塀の内側を落ち着いて見るなら平日の午前が向いている。

境内の一般エリアでの撮影に制限を設ける掲示は見当たらない。ただし神事の最中に塀越しへレンズを向けるのは控えたい。1月1日から3日は避けたほうが無難で、正月三が日の参拝者は100万人を超える。

あわせて見ておきたいものがいくつかある。黒漆金銅装神輿は昭和44年(1969年)指定の重要文化財で、源頼朝の奉納と伝わる一方、康正3年(1457年)修理の棟札から足利尊氏の奉納とする見方もある。弘安9年(1286年)の銘が入る石灯籠は兵庫県の指定。クスノキ2本は神戸市の天然記念物で、本殿裏手の楠宮稲荷社は病気平癒の信仰を集めている。

一日を選ぶなら2月3日。昭和45年(1970年)に兵庫県の重要無形民俗文化財に指定された古式追儺式では、神々に代わって7匹の鬼が松明と太刀を手に境内を巡り、一年の災いを祓う。鬼面には室町期の作と推定されるものが含まれる。

アクセス

神戸市営地下鉄の長田(長田神社前)駅、または神戸高速線の高速長田駅で下車し、長田神社前商店街を北へ徒歩5分。市バスならJR神戸駅・兵庫駅からの3・4系統、JR新長田駅からの17系統で「長田神社前」下車、参道はすぐである。

Q&A

Q長田神社八幡社は間近で見学できますか。
A間近には近づけません。透塀の内側に建つため、塀の外から眺めることになります。透塀は視線を通す構造なので、本殿の西側に丹塗の小さな社殿を確認できます。境内への立ち入りは無料です。
Q長田神社八幡社は境内のどこにありますか。
A透塀の内、本殿の西方です。本殿をはさんだ東側には、同じ寸法・同じ仕様の天照社が建ちます。拝殿から本殿に向かって立つと、八幡社は左手にあたります。
Q長田神社八幡社はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A平成14年に「造形の規範となっているもの」という基準で登録されました。文化庁の記録は、天照社とともに透塀内の聖なる空間を構成する主要素になると位置づけています。大正13年1月の火災を受けた昭和3年の再建造営に属する建物です。
Q長田神社にはほかにどんな文化財がありますか。
A昭和44年指定の重要文化財である黒漆金銅装神輿、昭和45年に兵庫県の重要無形民俗文化財に指定された古式追儺式、弘安9年銘の石灯籠(県指定)、神戸市指定天然記念物のクスノキ2本などです。昭和3年再建の社殿群も多くが登録有形文化財となっています。
Q長田神社八幡社へは電車でどう行きますか。
A神戸市営地下鉄の長田(長田神社前)駅、または神戸高速線の高速長田駅から、長田神社前商店街を北上して徒歩約5分です。市バスは3・4・17系統の「長田神社前」下車で参道に出られます。

基本データ

名称長田神社八幡社(ながたじんじゃはちまんしゃ)
所在地兵庫県神戸市長田区長田町3-1-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成14年(2002年)2月14日登録(告示同年3月12日)
員数1棟
寸法木造平屋建、銅板葺、建築面積1.0平方メートル。桁行2尺7寸、梁間2尺2寸、向拝梁間1尺8寸
所有者宗教法人長田神社
公開状況透塀の外から見学可、無料。開門は4〜9月5時〜18時、10〜3月6時〜18時との案内あり

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)長田神社八幡社
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002664
文化遺産オンライン 長田神社八幡社
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/115544
長田神社 御社殿・附属建物
https://nagatajinja.jp/keidai/goshaden.php
長田神社 指定文化財
https://nagatajinja.jp/nagatajinjatowa/siteibunkazai.php
長田神社 アクセス方法
https://nagatajinja.jp/access/

最終更新日: 2026.08.27