城下町の通りに北面する昭和7年の本社事務所

うすくち龍野醤油資料館は、兵庫県たつの市龍野町大手に建つ昭和7年(1932年)竣工の木造2階建で、平成20年(2008年)4月18日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

正面に立つと、まず壁の材質で迷う。柱型は赤みを帯びたタイル貼、腰と頂部は石貼。目は煉瓦造か石造だと判断する。実際の構造は木造である。

建物は通りに北面する。2階建の主体部を両脇の平屋が挟み、主体部の正面は太い柱型によって大きく2分される。1階にはアーチが架かる。2階はそれより細い小柱で3つに分けられている。文化庁の登録データでは建築面積687平方メートル、屋根は瓦葺と記録されている。

菊一、龍野、ヒガシマル

この建物は、片岡家が興した菊一醤油造合資会社の本社として建てられた。浅井醤油合名会社との合併によって龍野醤油株式会社となり、のちにヒガシマル醤油株式会社と改称する。社名が二度変わるあいだも、建物は本社として使われ続けた。

転機は昭和54年(1979年)11月。江戸時代の醤油蔵とあわせて改修され、醤油をテーマとする資料館として開館した。運営者は全国初の醤油資料館と説明している。この昭和54年の改修は、竣工年と並んで登録データに明記されている。

登録の理由と評価

登録番号は28-0356。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の一項のみである。登録年月日は平成20年4月18日、登録告示は同年5月7日で、第59回の登録にあたる。

周囲は醸造蔵の白壁と町家の低い軒が続く一帯で、そこに洋風の赤い正面が割り込む。本来なら不調和になりそうなところが、そうはならない。登録データはこの対比を欠点ではなく寄与として扱っている。兵庫県の景観形成重要建造物にも指定され、地域活性化に役立つ近代化産業遺産としても認定されている。

所有者は財団法人東丸記念財団。館内の収蔵品は建物とは別の位置づけを持ち、龍野醤油協同組合各社が保管してきた醸造用具や文献など約2400点が、兵庫県指定有形民俗文化財となっている。

ゆっくり見たい場所

展示は年代順ではなく、仕事の順に並ぶ。江戸時代の釣瓶井戸から始まり、揖保川の伏流水を汲み上げていた設備が最初に目に入る。続いて原料処理場、仕込蔵、杉の麹蓋を積み上げた麹室へ。道具の摩耗や継ぎ当ての跡に、使われ続けた年月が残っている。

淡口醤油そのものについても触れておきたい。色が淡いだけで、塩分は濃口よりむしろわずかに高い。原料に米を用いる点も、大豆と小麦と塩だけを想像していると意外に映る。鉄分の少ない揖保川の軟水、赤穂の塩、播磨平野の小麦と大豆という土地の条件が、この淡い色を生んだと説明されている。

館内では約15分の映像「その風土と淡口醤油造りと匠の技」が上映される。敷地内の醤油蔵を使ったギャラリーでは、日本画家・山下摩起の作品が展示されている。

訪ねる前に押さえておきたい実用面。開館は9時から17時まで、入館は16時30分まで。休館日は月曜日で、月曜が祝日の場合は開館する。入館料は観光情報の記載では年齢を問わず10円で、日本で最も安い部類の博物館料金といってよい。JR姫新線の本竜野駅から約1.3キロ、徒歩でおよそ20分。城下町の町割りを歩くことになるので、寄り道の時間を見込んでおきたい。徒歩2分ほどの別館は龍野醤油の歴史を扱い、入館券は共通である。館内の撮影可否は公表されていないため、受付で確認してほしい。

Q&A

Qうすくち龍野醤油資料館は見学できますか。開館時間と入館料は?
A見学できます。開館時間は9時から17時(入館は16時30分まで)、休館日は月曜日で、月曜が祝日の場合は開館します。入館料は観光情報の記載では大人・子ども一律10円ですが、遠方から向かう場合は事前に確認しておくと安心です。
Qうすくち龍野醤油資料館へのアクセスは?最寄り駅からどのくらいですか。
A最寄りはJR姫新線の本竜野駅で、資料館まで約1.3キロ、徒歩約20分です。道中は城下町の町並みが残る区間なので、見学時間とは別に余裕を持たせることをおすすめします。
Qうすくち龍野醤油資料館の建物は煉瓦造ですか。
A木造です。柱型をタイル貼、腰や頂部を石貼として仕上げているため、外観が煉瓦造のように見えます。文化庁の登録データでは木造2階建、瓦葺、建築面積687平方メートルと記載されています。
Qうすくち龍野醤油資料館には何が展示されていますか。
A江戸時代からの醤油醸造用具や文献など約2400点が、釣瓶井戸、原料処理場、仕込蔵、麹室という製造工程の順に並びます。これらは兵庫県指定有形民俗文化財です。約15分の映像上映と、山下摩起の作品を展示するギャラリーもあります。
Qうすくち龍野醤油資料館はいつ、どのような目的で建てられたのですか。
A昭和7年(1932年)に菊一醤油造合資会社の本社事務所として建てられました。その後、龍野醤油、ヒガシマル醤油と社名が変わっても本社として使われ、昭和54年(1979年)に江戸時代の醤油蔵とともに改修されて資料館になりました。

基本情報

名称うすくち龍野醤油資料館
所在地兵庫県たつの市龍野町大手54-2他
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 28-0356
指定年平成20年(2008年)4月18日登録、同年5月7日告示
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積687平方メートル。昭和7年(1932年)建築、昭和54年(1979年)改修
所有者財団法人東丸記念財団
公開状況資料館として公開。9時から17時(入館16時30分まで)、月曜休館(祝日の場合は開館)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「うすくち龍野醤油資料館」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007100
文化遺産オンライン「うすくち龍野醤油資料館」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/172402
ヒガシマル醤油株式会社「うすくち龍野醤油資料館」
https://www.higashimaru.co.jp/enjoy/museum/index.html
たつの市「うすくち龍野醤油資料館」
https://www.city.tatsuno.lg.jp/soshiki/1041/gyomu/5/4/3911.html

最終更新日: 2026.08.26