大文字町の町家に残る、九谷上絵付の家

小松市立錦窯展示館主屋は、石川県小松市大文字町にある昭和8年(1933年)頃建築の町家で、令和元年(2019年)9月10日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。九谷焼の上絵付を家業とした徳田家の住居兼工房であり、現在は小松市が管理する展示館として使われている。

建物は前庭をはさんで通りに西面する。木造二階建、切妻造の桟瓦葺で、建築面積は92平方メートル。一階は南側を土間とし、北側にミセをはじめとする四室が並ぶ。二階には七室が配され、そこが上絵付の作業場だった。住まいと仕事場が一続きになった構成が、平面にそのまま出ている。

小松市の説明では、この家は橋南地区の大火のあと昭和8年に建てられた。文化庁の国指定文化財等データベースは年代を「昭和8年頃/平成10年改修」と記す。市街地が焼けたあとに建て直された家が、九十年を経て公開施設になっているわけだ。

「造形の規範」という登録理由

登録の基準は「造形の規範となっているもの」。登録有形文化財の大半は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」を理由とするから、この基準が使われた建物はそう多くない。設計そのものが手本になると評価された、という意味である。

評価の核心は、窯元の住宅がどう組み立てられていたかを一棟で示す点にある。上絵付は絵付師が座り、筆先で細い線を引き続ける仕事で、安定した明るさと相応の広さがいる。二階を七室に割るという構成は、その必要から出てきたものだろう。

同じ敷地では窯納屋も別に登録されている。主屋の南に建つ木造二階建で、内部は石敷の土間、東側を吹抜けとして大小二基の錦窯を備える。文化庁はこれを九谷焼窯納屋の希少な遺例と位置づける。錦窯とは上絵の具を焼き付けるための小型の窯で、素地を焼く本焼きより低い温度で使う。展示館の名はここに由来する。

徳田家は初代から三代までがこの家で上絵付にあたった。三代徳田八十吉(1933年〜2009年)は重要無形文化財「彩釉磁器」の保持者、いわゆる人間国宝で、小松市はこの建物を三代の生家と説明している。生年と建築年がほぼ重なる。

訪ねるなら、どこを見るか

開館は午前9時から午後5時まで、入館の受付は午後4時30分で終わる。休館日は水曜(祝日は開館)、祝日の翌日(土日祝は開館)、展示替えの期間、そして年末年始の12月29日から1月3日。入館料は一般300円、高校生以下は無料、団体は250円。障がい者手帳またはミライロIDを提示した人と介護者1名は無料になる。特別展の期間は料金が変わることがあるので、遠方から向かうなら事前に確認しておきたい。

JR小松駅からは徒歩約10分。小松空港と北陸自動車道小松ICからは、いずれも車で約10分の距離にある。無料駐車場は3台分。

見どころを一つ挙げるなら、一階の土間からミセへ抜ける流れだろう。商いの顔と暮らしの奥が、段差と建具でゆるく仕切られている。二階に上がれば、部屋割りの細かさが目に入る。ここに絵付台が並び、窓からの光を頼りに筆が動いていた。

そして窯納屋の錦窯二基。九谷焼の色は、この小さな窯を一度くぐって初めて定まる。撮影の可否や特別展ごとの条件は変わりうるため、館内で確認するのが確実だ。近隣には九谷焼を扱う店もあり、見たあとに手に取れる。

Q&A

Q小松市立錦窯展示館主屋は見学できますか。開館時間と入館料は?
A小松市立錦窯展示館として一般公開されています。開館は午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)、入館料は一般300円、高校生以下は無料、団体250円です。休館日は水曜(祝日は開館)、祝日の翌日(土日祝は開館)、展示替え期間、12月29日から1月3日。特別展の期間は料金が変わることがあります。
Q小松市立錦窯展示館主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A文化庁の国指定文化財等データベースは、建築年代を昭和8年(1933年)頃、平成10年に改修と記載しています。国の登録有形文化財(建造物)への登録は令和元年(2019年)9月10日、登録番号は17-286です。
Q小松市立錦窯展示館主屋の「錦窯」とは、どんな窯ですか?
A錦窯は、素地を高温で焼いたあとに上絵の具を焼き付けるための小型の窯で、本焼きより低い温度で用います。展示館では主屋の南に建つ窯納屋に大小二基が残されており、この窯納屋も別途、国の登録有形文化財に登録されています。
Q小松市立錦窯展示館主屋へのアクセス方法を教えてください。
AJR小松駅から徒歩約10分です。小松空港からも北陸自動車道小松ICからも車で約10分の位置にあり、無料駐車場が3台分用意されています。所在地は石川県小松市大文字町95-2ほかです。
Q小松市立錦窯展示館主屋と徳田八十吉には、どんな関係がありますか?
A徳田家の初代から三代までが、この建物で九谷焼の上絵付に従事しました。三代徳田八十吉(1933年〜2009年)は重要無形文化財「彩釉磁器」の保持者に認定された人物で、小松市はこの家を三代の生家として紹介しています。

基本情報

名称小松市立錦窯展示館主屋(こまつしりつにしきがまてんじかんしゅおく)
所在地石川県小松市大文字町95-2ほか
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和元年(2019年)9月10日登録/登録番号 17-286
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積92平方メートル
所有者小松市
公開状況小松市立錦窯展示館として公開(午前9時〜午後5時、入館は午後4時30分まで/水曜・祝日の翌日・展示替え期間・12月29日〜1月3日は休館/一般300円、高校生以下無料)

参考文献

国指定文化財等データベース ― 小松市立錦窯展示館主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012897
小松市立錦窯展示館(小松市)
https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/1049/kanrenshisetsu/12923.html
文化遺産オンライン ― 小松市立錦窯展示館窯納屋(文化庁)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/404281
こまつ町家で人間国宝のアート鑑賞「小松市立錦窯展示館」(こまつ観光ナビ)
https://www.komatsuguide.jp/feature/detail_185.html
小松市立錦窯展示館(ほっと石川旅ねっと)
https://www.hot-ishikawa.jp/spot/detail_5368.html

最終更新日: 2026.08.19