犀川大橋:金沢の街を見守り続ける百年の鉄橋
金沢市の中心部を流れる犀川に架かる犀川大橋は、大正13年(1924年)に完成した鋼製ワーレントラス橋です。繁華街・片町と野町・千日町を結び、国道157号線の一部として一日約35,000台もの車両が通行するこの橋は、平成12年(2000年)に国の登録有形文化財に登録されました。大正ロマンの息吹を今に伝える力強い鉄骨の造形は、金沢を代表するランドマークのひとつとして市民や観光客に親しまれています。
歴史的背景
この場所に最初の橋が架けられたのは、文禄3年(1594年)のことです。加賀藩祖・前田利家の時代に木造の大橋として建設され、藩政期には犀川に架かる唯一の橋として「いさごの橋」「中河原の大橋」「一ノ橋」などと呼ばれていました。延宝年間の金沢絵図によると、長さ40間(約72メートル)、幅3間(約5.4メートル)の堂々とした橋であったと記録されています。
大正8年(1919年)、市電敷設計画の一環として木造橋は取り壊され、鉄筋コンクリート製の永久橋に架け替えられました。しかし大正11年(1922年)8月3日、豪雨による犀川の増水でこのコンクリート橋が流失。その2年後の大正13年(1924年)、日本の橋梁技術の先駆者である関場茂樹の設計により、現在のワーレントラス形式の鉄橋が総工費26万7,000円で完成しました。
完成当時は関東大震災の影響で国内の鋼材調達が困難であったため、一部に英国製の鋼材が使用されています。橋脚の鋼材には産地である英国ミドルズブラの銘が刻まれた銘板が今も残っており、大正期の国際的な建設事情を物語る貴重な資料となっています。
文化財指定の理由と価値
犀川大橋は平成12年(2000年)12月4日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。浅野川大橋と同様、市電建設計画の一環として広幅員道路として設計された歴史的経緯を持ち、橋長62メートル、幅員22メートルの鋼製曲弦ワーレントラス橋として高い技術的価値が認められています。
特に注目すべきは、橋門構・支材・鉛直材にそれぞれ形式の異なるトラス材が使い分けられ、構造全体の軽量化が巧みに図られている点です。日本国内で現役の主要幹線道路橋として使用され続けている鉄橋としては最も古い部類に属し、土木遺産としての価値と都市景観の一部としての文化的価値を併せ持っています。
見どころ・魅力
犀川大橋の最大の魅力は、力強い鉄骨トラス構造が「男川」と呼ばれる犀川の雄大な流れと見事に調和している点です。曲弦トラスの優美なアーチラインは、遠くからでも一目でそれとわかる金沢のシンボルです。
車道上部の梁に掲げられた金箔の橋名板も見逃せません。これは完成当時の石川県知事・長谷川久一の揮毫によるもので、金箔の街・金沢にふさわしい華やかさを添えています。
平成6年(1994年)の改修工事では、加賀友禅に見られるグラデーション技法を取り入れた青色系統の塗装が施されました。歩道は御影石で舗装され、レトロ調のガス灯風照明やベンチが設置されています。高欄には金沢の茶屋街を彷彿させる紅柄格子のデザインが採り入れられ、伝統と現代が融合した美しい橋へと生まれ変わりました。
夜間のライトアップも魅力のひとつです。温かみのある照明に照らされた鉄骨構造は、昼間の力強さとは異なるロマンチックな表情を見せ、片町での夕食後の散策にも最適です。
周辺情報
にし茶屋街
犀川大橋を渡って徒歩約5分。文政3年(1820年)に加賀藩から公許された花街で、金沢三茶屋街のひとつです。ひがし茶屋街に比べて観光客が少なく、落ち着いた雰囲気の中で茶屋建築の街並みや甘味処、カフェを楽しめます。現在も15名の芸妓が所属し、夕方には三味線の音色が聞こえることもあります。
妙立寺(忍者寺)
にし茶屋街から徒歩約3分。外観は2階建てに見えますが、実は4階7層・23の部屋と29の階段を持つ複雑な構造のお寺です。落とし穴の賽銭箱や隠し階段など、まるで忍者屋敷のような仕掛けが満載です。見学には事前予約が必要です。
室生犀星記念館
犀川大橋の近くにある、金沢出身の抒情詩人・室生犀星の記念館です。犀川の両岸には犀星が好んで散歩した道が「犀星のみち」として整備されています。
片町・竪町
橋の東側に広がる北陸随一の繁華街。ミシュランの星付きレストランが13店も集中するグルメタウンであり、おしゃれなショップやバーが立ち並ぶ金沢の夜を楽しめるエリアです。
神明宮
犀川大橋の近くにある神社で、「お神明さん」の愛称で親しまれています。樹齢1,000年を超える大欅がパワースポットとして人気で、名物の「あぶりもち神事」は300年以上の歴史があります。
Q&A
- 犀川大橋は歩いて渡れますか?
- はい、橋の両側に御影石で舗装された歩道があり、ベンチやバルコニー的な展望スペースも設けられています。24時間自由に通行できます。
- おすすめの見学時間帯はいつですか?
- いつでも美しい橋ですが、特に夕方から夜にかけてがおすすめです。レトロ調の照明によるライトアップで、昼間とは異なるロマンチックな雰囲気を楽しめます。春は犀川沿いの桜と橋の競演も見事です。
- 金沢駅からのアクセス方法は?
- 金沢駅から北鉄バスで香林坊・片町方面行きに乗車し、「片町」バス停で下車するとすぐ目の前です。所要時間は約10分です。
- 犀川大橋の青い色には意味がありますか?
- 平成6年(1994年)の改修工事で、加賀友禅に見られるグラデーション技法を取り入れた青色系統の塗装が施されました。水と緑をイメージした色彩で、金沢の伝統文化と自然環境を象徴しています。
- 見学に料金はかかりますか?
- いいえ、犀川大橋は公共の道路橋ですので、いつでも無料で見学・通行できます。
基本情報
| 名称 | 犀川大橋(さいがわおおはし) |
|---|---|
| 所在地 | 石川県金沢市片町~野町・千日町 |
| 文化財指定 | 国登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 平成12年(2000年)12月4日 |
| 竣工 | 大正13年(1924年) |
| 設計者 | 関場茂樹 |
| 構造形式 | 曲弦トラス単鋼橋(単径間鋼曲弦ワーレントラス橋) |
| 橋長 | 62メートル |
| 幅員 | 22メートル |
| 所有者 | 国(国土交通省) |
| 道路 | 国道157号(国道305号重複) |
| アクセス | JR金沢駅よりバス約10分「片町」バス停下車すぐ |
参考文献
- 犀川大橋 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%80%E5%B7%9D%E5%A4%A7%E6%A9%8B
- 犀川大橋 - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/114914
- 犀川大橋について|犀川大橋アーカイブ(国土交通省北陸地方整備局)
- https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/road/saigawa/about/
- 犀川大橋|金沢市公式ホームページ
- https://www4.city.kanazawa.lg.jp/s/11104/bunkazaimain/touroku/yuukeikenzoubutu/saigawaoohashi.html
- 浅野川大橋・犀川大橋100周年記念サイト
- https://asanogawa-saigawa-bridge100th.com/saigawa/
最終更新日: 2026.04.11