富井家住宅とは

富井家住宅は、香川県仲多度郡多度津町家中にある多度津藩の武家屋敷で、文政11年(1828年)建築の主屋と、江戸時代末期に建てられた新座敷・土蔵・門の4件が、平成18年(2006年)10月18日に国の登録有形文化財に登録されている(文化庁)。読みは「とみいけじゅうたく」。

多度津町教育委員会は富井家住宅を、家中に残る多度津藩陣屋の武家屋敷と位置づけ、文政11年以降、江戸時代末期にかけて建てられた屋敷が当時の武士の住まいの形式と外観を伝えると説明している。文化庁も主屋について、大きな改変がなく、中級武士の住宅の姿をよく残すと評価する。屋敷はいまも個人の住まいである。

多度津藩の陣屋と家中

多度津町によれば、4代藩主京極高賢の時代、文政8年(1825年)に、藩は現在の家中を中心とする一帯に調練場・馬場・射場・御館・新館・鼓楼・藩校の自明館・堀・門などを設け、ここを陣屋として藩政を執るようになった。家中とは、本来は大名に仕える家臣団を指す言葉である。富井家住宅の主屋が建った文政11年は、陣屋が開かれてから3年後にあたる。

明治の廃藩置県のあと、陣屋の施設は次々に取り壊された。御殿があった場所はいまJR多度津工場の敷地になっている。町教育委員会の資料は、陣屋にかかわるもので残るのは藩の米蔵、蓮堀の石垣の一部、家中の武家屋敷1軒、家老屋敷の門の基礎だけだとしている。家中の一帯は町指定史跡「旧京極氏多度津藩家中屋敷」でもある。

多度津町の英文観光冊子は、富井泰蔵が長年にわたり多度津藩の要職を務めたと紹介している。富井家の家格や役職を示す一次資料は、今回確認できなかった。

屋敷の構え

文化庁の解説から、4棟の位置関係を読み取ることができる。敷地の中央に主屋が南を正面にして建ち、その表口の前方、前面道路から少し下がった位置に門がある。主屋の南西には渡廊下でつながる新座敷が、道路に近接して置かれる。主屋の後方には土蔵が南面して建つ。

武家屋敷は門と塀で囲うのが普通だが、富井家住宅の新座敷は囲いを設けずに道路際に出ている。文化庁はこの配置を独特とみて、門とともに屋敷の表構えをつくる建物として評価している。4棟はいずれも切妻造・本瓦葺で、屋根の形と素材がそろっている。

  • 主屋:文政11年(1828年)、木造平屋建、建築面積113平方メートル、登録番号37-0309
  • 新座敷:江戸時代末期、木造平屋建、建築面積30平方メートル、登録番号37-0310
  • 土蔵:江戸時代末期、土蔵造2階建、建築面積16平方メートル、登録番号37-0311
  • 門:江戸時代末期、腕木門、間口2.4メートル、登録番号37-0312

4件は第52回の登録で、平成18年(2006年)11月9日に告示された。登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁は江戸時代末期を1830年から1867年の幅で記録している。各棟の構造と見どころは、それぞれのページで扱っている。

見学とアクセス

富井家住宅は個人の住まいで、多度津町の文化財一覧でも個人所有とされている。2026年10月時点で、内部の公開や見学の受け付けに関する公的な案内は見当たらない。外観は前面の道路から眺めることになるため、敷地に立ち入らず、住む人の暮らしに配慮したい。

JR予讃線・土讃線の多度津駅から北西へ、直線でおよそ500メートル(所在地の座標からの概算)で、歩いて10分ほどの距離である。多度津藩陣屋の模型を所蔵する多度津町立資料館は、同じ家中の西南西およそ170メートルにある。

参考文献

富井家住宅主屋(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005923
富井家住宅新座敷(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005924
富井家住宅土蔵(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005905
富井家住宅門(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005759
町内の文化財一覧(多度津町)
https://www.town.tadotsu.kagawa.jp/soshikikarasagasu/kyoikuiinkaijimukyokusyougaigakusyuka/shakaikyoiku/2/565.html
町文化財の説明(多度津町)
https://www.town.tadotsu.kagawa.jp/soshikikarasagasu/kyoikuiinkaijimukyokusyougaigakusyuka/shakaikyoiku/2/563.html
多度津藩陣屋跡の遺物が発掘されました(多度津町教育委員会「たどつのむかし」)
https://www.town.tadotsu.kagawa.jp/material/files/group/14/tadotsunomukashi20.pdf
Tadotsu Town(多度津町産業課 英文観光冊子、香川県観光協会サイト掲載)
https://www.my-kagawa.jp/files/user/site/4d9a08f00833ffdf8301f1a3bc0b93a2adbae18b.pdf

最終更新日: 2026.10.20

基本情報

名称富井家住宅
所在地香川県仲多度郡多度津町家中8-6
所有者個人
指定登録有形文化財 4件
座標34.27523, 133.75432