都萬神社末社稲荷神社:大隅の丘に佇む登録有形文化財の社

鹿児島県曽於郡大崎町の小高い丘陵地に鎮座する都萬神社。その境内に静かに佇む末社稲荷神社は、大正5年(1916年)に建てられた木造の社殿であり、平成21年(2009年)に国の登録有形文化財に登録されました。五穀豊穣や商売繁盛を司る稲荷大神を祀るこの小さな社は、古くから地域の暮らしと信仰を見守り続けてきた、大崎町の貴重な文化遺産です。

都萬神社の歴史と末社の成り立ち

都萬神社は、古代日向国の五郡(臼杵・児湯・那珂・宮崎・諸県)にそれぞれ一社ずつ設けられた「日向五社大明神」の一つとして深い歴史を持つ神社です。大崎町は明治初期まで日向国諸県郡に属しており、都萬神社はこの地域の一の宮として古来より篤く崇敬されてきました。

もともとは志布志原田村(現在の志布志市有明町原田)に鎮座していましたが、天文9年(1540年)11月3日に現在地へ遷宮されました。「三代実録」には天安2年(858年)に都萬神に従四位下が授けられたとの記録があり、また建久8年(1197年)の日向国図田帳には諸県郡都萬宮の神領が記されるなど、古くからの格式の高さがうかがえます。

現在の社殿群は大正5年(1916年)に再建されたもので、本殿・拝殿・末社伊勢宮・末社稲荷神社を含む計6棟が平成21年11月2日に国の登録有形文化財として登録されました。稲荷神社は、この再建時に本殿周辺の末社として整備されたものです。

なぜ文化財に登録されたのか

都萬神社末社稲荷神社が登録有形文化財に登録された背景には、日本の文化財保護制度の理念があります。平成8年(1996年)に創設された登録有形文化財制度は、都市開発や生活様式の変化により失われつつある近代以降の多様な建造物を、より幅広く後世に伝えるための仕組みです。

末社稲荷神社は、大正期の神社建築の特徴を備えた木造平屋建の社殿であり、銅板葺の屋根を持つ端正な建物です。大隅地方における大正期の宗教建築の一例として、また都萬神社境内の歴史的景観を構成する重要な要素として、保存すべき価値が認められました。本殿の装飾的な意匠と対照的に、末社群は簡潔ながらも格調のある佇まいを見せ、境内全体としての統一感と多様性を生み出しています。

見どころ・魅力

稲荷神社の社殿

末社稲荷神社は、木造平屋建てで銅板葺の屋根を備えた落ち着いた佇まいの社殿です。稲荷大神を祀る社らしく、境内には五穀豊穣や商売繁盛への祈りが込められています。周囲の木々に囲まれた静謐な空間で、地域の人々が長年にわたり守り続けてきた信仰の歴史に思いを馳せることができます。

十二支のレリーフが飾る本殿

都萬神社の本殿は、蟇股(かえるまた)と呼ばれる装飾部材に十二支の動物をかたどったレリーフが施されている点が大きな特徴です。子(ねずみ)から亥(いのしし)まで、一つひとつ丁寧に彫り上げられた動物たちの姿は見応えがあり、大正期の木造建築における彫刻技術の高さを伝えています。

国指定重要文化財の銅鏡

都萬神社の社宝として最も知られているのが、国指定重要文化財の「籬に菊双雀文様鏡(まがきにきくそうじゃくもんようきょう)」です。竹垣に菊の花と二羽の雀をあしらった優美な文様が特徴の銅鏡で、日本の金属工芸の精華を伝える逸品です。

復活した神舞(かんまい)

戦争によって途絶えていた都萬神社の神舞は、地域住民の尽力により平成22年(2010年)に復活しました。毎年10月末に行われる秋の例大祭では、豊栄乃舞(とよさかのまい)などの奉納が行われ、伝統芸能を間近で体感できる貴重な機会となっています。

御祭神について

都萬神社の主祭神は木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)と立述主命(タチノベノミコト)です。木花開耶姫命は天孫瓊々杵尊(ニニギノミコト)の妃であり、「つまの宮」という社名はこの夫婦の縁に由来します。安産やお乳の神様としても信仰され、また竹取物語のかぐや姫の伝説とも結びつけられています。

末社稲荷神社は稲荷大神を祀っています。稲荷信仰は日本全国で最も広く浸透した神道の信仰形態の一つであり、五穀豊穣、商売繁盛、家内安全など、暮らしのあらゆる面での加護を願う人々に親しまれてきました。農業が盛んな大崎町において、稲荷社の存在はこの地域の生業と深く結びついています。

周辺情報

大崎町は鹿児島県大隅半島に位置し、南部は志布志湾に面した豊かな自然に恵まれた町です。12年連続リサイクル率日本一を達成した「スーパーエコタウン」としても知られ、農業・畜産業が盛んな「食材の宝庫」でもあります。

都萬神社の周辺には、鹿児島県内第2位の規模を持つ前方後円墳「横瀬古墳」(国指定史跡)があり、古代大隅の歴史を体感できます。海岸沿いに広がる「くにの松原」は美しい白砂青松の景観が楽しめ、ウミガメの産卵地としても知られています。「道の駅 野方あらさの」では地元の特産品を購入できるほか、大崎海岸では志布志湾の雄大な景色を望むことができます。

近隣の志布志市では港町の風情を楽しめ、広域的には大隅半島の温泉地や鹿屋市のバラ園など、多彩な観光スポットへのアクセスも可能です。

アクセス

大崎町内には鉄道駅がないため、車またはバスでのアクセスとなります。東九州自動車道の大崎ICから車で約5分です。公共交通機関を利用する場合は、JR日南線の志布志駅が最寄り駅となり、そこからバスで大崎上町バス停まで向かい、徒歩約5分で到着します。大崎町役場からは徒歩約12分です。最寄りの空港は鹿児島空港または宮崎空港です。

Q&A

Q都萬神社や末社稲荷神社の拝観料はかかりますか?
A拝観料は無料です。境内は年間を通じて自由に参拝していただけます。
Q国指定重要文化財の銅鏡は見ることができますか?
A銅鏡などの社宝は大切に保管されており、常時公開されているとは限りません。拝観を希望される場合は、事前に大崎町教育委員会社会教育課(電話:099-476-1111)にお問い合わせください。
Q訪問におすすめの時期はいつですか?
A一年を通じて参拝できますが、10月末の秋の例大祭では伝統的な神舞の奉納が行われます。また、元旦には初日の出を見た後に参拝される方が多く、新年の活気ある雰囲気を味わえます。
Q駐車場はありますか?
A神社周辺に駐車スペースがございます。大崎町役場の駐車場も利用可能で、そこから徒歩約12分です。
Q都萬神社にはどのような登録有形文化財がありますか?
A都萬神社では、本殿・拝殿・末社伊勢宮・末社稲荷神社を含む計6棟の建造物が国の登録有形文化財に登録されています。いずれも大正5年(1916年)に建てられた大正期の神社建築です。

基本情報

名称 都萬神社末社稲荷神社(つまじんじゃまっしゃいなりじんじゃ)
文化財種別 国登録有形文化財(建造物)
登録年月日 平成21年(2009年)11月2日
建築年 大正5年(1916年)
構造 木造平屋建、銅板葺
御祭神 稲荷大神(五穀豊穣・商売繁盛の神)
所在地 鹿児島県曽於郡大崎町假宿字西迫1589
アクセス 東九州自動車道 大崎ICから車で約5分/大崎上町バス停から徒歩約5分
拝観料 無料
お問い合わせ 大崎町教育委員会社会教育課文化公民館係 電話:099-476-1111

参考文献

鹿児島県観光サイト かごしまの旅 — 都萬(妻萬)神社
https://www.kagoshima-kankou.com/guide/51472
かごしま文化財事典 — 都萬神社本殿
https://k-bunkazai-school.com/cultural/f-q-60084/
かごしま文化財事典 — 都萬神社末社伊勢宮
https://k-bunkazai-school.com/cultural/f-q-60086/
鹿児島県神社庁 — 都萬神社
https://www.kagojinjacho.or.jp/shrine-search/area-oosumi/%E5%A4%A7%E5%B4%8E%E7%94%BA/933/
文化遺産オンライン — 都萬神社本殿
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/174165
大崎町公式サイト — 指定文化財
https://www.town.kagoshima-osaki.lg.jp/kh_bunkakouminkan/kyoiku-bunka/bunka/bunkazai/maizo.html
全国観光情報サイト 全国観るなび — 都萬神社
https://www.nihon-kankou.or.jp/kagoshima/464686/detail/46468ag2130130884

最終更新日: 2026.03.02