建築面積13平方メートルの蔵が庭をつくる
青木家住宅土蔵は、京都市中京区富小路通三条上る福長町にある昭和5年(1930年)建築の土蔵造二階建の蔵で、平成26年(2014年)10月7日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。
規模は桁行3.9メートル、梁間3.0メートル。建築面積は13平方メートルと記録されている。棟は南北に通り、主屋の後方に中庭を挟んで建つ。戸口は西面に開く。
土蔵は木造の軸組に厚く土を塗り重ね、表面を漆喰で仕上げる構法である。火に対する備えとして発達した形式で、たびたび大火に見舞われた京都の町家では、失っては困るものを収める場所が蔵だった。文化庁の解説文は末尾で、数寄屋意匠の主屋と対峙して良質な庭空間を創る、と述べる。この一文が登録の理由を端的に示している。
「歴史的景観への寄与」という登録基準
登録有形文化財の登録基準は三つあり、物件ごとに該当する項目が一つ記載される。同じ敷地の主屋が「造形の規範となっているもの」で登録されたのに対し、土蔵に付されたのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録番号は26-0460、主屋の26-0459に続く番号で、いずれも第78回登録にあたる。
基準の違いは、評価の焦点の違いを示す。建築面積13平方メートルの蔵が、平面計画の巧みさで評価されることはない。価値は、蔵と主屋のあいだに生まれる空間の側にある。
短冊形の敷地に前を主屋、奥を蔵とし、そのあいだに坪庭を挟む。京都の市街地住宅が長く用いてきた型である。庭は装飾のためだけにあるのではなく、両側を隣家に囲まれた建物に光と風を送り込む装置でもあった。
この事例で目を引くのは、両棟の年代が揃っている点である。京都の蔵には、前面の主屋が建て替えられるあいだ焼け残り、結果として主屋より古い年代を持つものが少なくない。福長町の速水家住宅でも、乾蔵は文久2年(1862年)、主屋は大正2年(1913年)と半世紀の開きがある。青木家では主屋も土蔵も昭和5年で、中庭は既存のものを引き継いだのではなく、両棟の関係として設計されたことになる。白い漆喰壁は、庭に面する仕上げとして選ばれている。
細部の読み方と、周辺を歩く
屋根は切妻造の桟瓦葺。西面の戸口には鉄扉が付く。厚い土壁も、開口部が燃えては意味がない。鉄扉はその弱点を塞ぐための装置である。戸口の上には下屋が差し掛けられ、扉と周囲の漆喰を雨から守る。外壁には鉢巻が廻る。壁面の上部に一段太く塗り出した帯状の部分で、軒下に伝う雨水を壁から離す役目を持つ。二階の西面には窓が一つ穿たれている。
寸法をあらためて見ると、桁行3.9メートルと梁間3.0メートルの積は約11.7平方メートルで、登録上の建築面積13平方メートルとは差がある。下屋の分が加算されたものと考えられる。
ただし、これらを現地で確かめることはできない。所有者は個人で、京都市の一覧にも公開に関する記載はない。土蔵は主屋の背後の中庭に建つため、主屋と違って道路からは姿が見えない。敷地内に立ち入ったり、塀越しに撮影したりすることは避けたい。
周辺を歩くのであれば、最寄りは京都市営地下鉄東西線の京都市役所前駅で、徒歩約5分。漆喰壁の内部に入れる建物を探すなら、西へ数分の三条通に出るとよい。明治39年(1906年)建築の旧日本銀行京都支店、現在の京都文化博物館別館は昭和44年(1969年)に重要文化財に指定されており、旧金庫棟が喫茶店として使われている。
Q&A
- 青木家住宅土蔵は見学できますか。外から見ることはできますか。
- 個人所有の建物で公開されておらず、拝観時間や拝観料の設定もありません。主屋の後方、中庭に面して建つため、道路からは外観も見えません。敷地内への立ち入りや塀越しの撮影はご遠慮ください。
- 青木家住宅土蔵の規模はどのくらいですか。
- 桁行3.9メートル、梁間3.0メートルの土蔵造二階建で、建築面積は13平方メートルです。棟は南北方向に通り、屋根は切妻造の桟瓦葺です。
- 青木家住宅土蔵はなぜ文化財に登録されたのですか。
- 平成26年(2014年)10月7日に、登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当するものとして登録されました。登録番号は26-0460です。数寄屋意匠の主屋と中庭を挟んで向き合い、庭空間を形づくっている点が評価されています。
- 青木家住宅土蔵にはどのような意匠上の特徴がありますか。
- 西面の戸口に鉄扉を設け、その上に下屋を差し掛けています。外壁は漆喰塗で鉢巻を廻らし、二階の西面に窓を一つ開けます。土蔵造の基本的な語彙が小さな建物のなかに一通り揃っています。
- 青木家住宅土蔵は徳島県にある同名の土蔵と同じものですか。
- 別の建物です。徳島県美馬市には大正4年(1915年)建築の青木家住宅土蔵(1)があり、平成10年(1998年)に登録されています。藍の生産に使われた蔵で、京都のこの土蔵とは所有者も来歴も異なります。
基本情報
| 名称 | 青木家住宅土蔵(あおきけじゅうたくどぞう) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市中京区富小路通三条上る福長町110 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 26-0460/登録基準:国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 指定年 | 平成26年(2014年)10月7日登録(第78回登録) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、瓦葺、桁行3.9メートル、梁間3.0メートル、建築面積13平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(中庭に面して建ち、道路からは見えない) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「青木家住宅土蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010185
- 文化遺産オンライン「青木家住宅土蔵」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/232798
- 京都市「京都市指定・登録文化財ならびに国指定等文化財(中京区)」
- https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000005984.html
- 京都市「国・登録有形文化財」
- https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000005962.html
最終更新日: 2026.08.06