建礼門前の宮家の屋敷から、御苑西側の官舎へ
有栖館(有栖川宮旧邸)は、京都市上京区の烏丸通と下立売通が交わる角の北西にある明治期の邸宅で、明治24年(1891年)に現在地へ移された主屋と、青天門・長屋門の3棟が、平成24年(2012年)2月23日に国の登録有形文化財に登録された。敷地は烏丸通をはさんで京都御苑の西側に向き合っている。
有栖川宮は、寛永2年(1625年)に後陽成天皇の第七皇子である好仁親王が興した宮家で、伏見宮・桂宮・閑院宮とともに四親王家に数えられた。屋敷は、京都御所の建礼門の前に構えられていた時期がある。
明治に入ると、その建物は京都の裁判所の仮庁舎に転用された。明治24年、一部が当時は民有地だった現在地へ移され、京都地方裁判所の所長宿舎として平成19年(2007年)まで使われる。宮家の住まいとして生まれた建物が、移築後の116年を司法官の官舎として過ごしたことになる。
文化庁のデータベースは、主屋の建築年代を明治前期(1868〜1882年)とし、明治24年に移築・改修したと記している。解説も、主屋を公家の住宅の面影をとどめた明治期の官舎として評価する。建礼門前の屋敷と現在の主屋がどの時点でどうつながるのかは、この記載だけでは確定できない。
平安女学院の16年と、2024年の売却
官舎としての役目を終えた翌年、平成20年(2008年)8月に、下立売通の南側に校地を持つ平安女学院が施設を取得した。学院はここを「有栖館」と名付け、日本文化の授業や講座の場とした。翌平成21年(2009年)には、植治(うえじ)の名跡を継ぐ十一代小川治兵衞が、前庭・中庭・南庭を作庭している。
3棟の登録は、学院が所有していた平成24年に行われた。文化財としての名称がいずれも「平安女学院有栖館」で始まるのはこのためで、登録名は現在も変わっていない。学院の時代には春と秋に数日ずつ特別公開があり、創立150周年の記念事業として令和6年(2024年)3月にも無料公開が行われた。
令和6年5月31日、森トラスト株式会社が土地と建物を取得したと発表した。発表によれば敷地面積は2,148平方メートルで、歴史的建造物として京都の景観に資する保全と活用を検討するとしている。文化庁データベースの所有者欄は三菱UFJ信託銀行株式会社となっており、本サイトの基本情報もこれに従う。
3棟の配置と、外から見る順序
敷地は東辺で烏丸通に、南辺で下立売通に接する。烏丸通に向けて開く表門が青天門、下立売通に沿って建つのが長屋門で、主屋はその内側にある。主屋は中庭を囲んで玄関棟・客室棟・居室棟を廊下でつなぐ構成で、庭は建物の前と中央、南側の3か所に分かれる。
外から見るなら、烏丸下立売の交差点を起点にするとよい。まず烏丸通を少し北へ歩くと、京都御苑の木立と向かい合う位置に青天門が現れる。大正元年(1912年)に建てられ、2度の移築を経てここに落ち着いた平唐門である。
交差点へ戻り、下立売通を西へ進むと、白い漆喰壁に出格子を付けた長屋門が道沿いに続く。通りの南側には聖アグネス教会の煉瓦の壁が立ち、和の門と明治の教会が向かい合う一画になっている。主屋は門と塀の内側にあり、外から建物の全体を見ることはできない。
見学とアクセス
有栖館は、2026年9月時点で一般公開されていない。確認できた最後の公開は2024年3月の平安女学院による公開で、同年の売却以降、公開の告知は見当たらなかった。青天門と長屋門は公道に面しており、外観は通りからいつでも見られる。門は普段閉じられている。
最寄りは京都市営地下鉄烏丸線の丸太町駅である。2番出口を上がり、京都御苑に沿って烏丸通を北へ5分ほど歩くと、下立売通との交差点に着く。市バスなら「烏丸下立売」で降りればすぐである。
門前は歩道なので、外観を撮影する際は通行の妨げにならない位置を選びたい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):平安女学院有栖館主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009185
- 国指定文化財等データベース(文化庁):平安女学院有栖館青天門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009186
- 国指定文化財等データベース(文化庁):平安女学院有栖館長屋門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009187
- 文化遺産オンライン:平安女学院有栖館主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/199518
- 森トラスト株式会社:「有栖川宮旧邸 有栖館」の土地・建物取得について(2024年5月31日)
- https://www.mori-trust.co.jp/news/2024/20240531/
- 京都旅屋:有栖川宮旧邸「有栖館」の特別公開
- https://www.kyoto-tabiya.com/2024/03/25/110798/
- にしZINE(京都市):有栖川宮旧邸 平安女学院大学有栖館・春の特別公開
- https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/event/nishijin-heian2403/
- 京都モダン建築祭2023:平安女学院大学 有栖川宮旧邸 有栖館
- https://kyoto2023.kenchikusai.jp/program/detail.php?id=2467
- 京都通百科事典:有栖川宮旧邸
- https://www.kyototuu.jp/Sightseeing/HistorySpotArisugawaTei.html
- 平安女学院大学:アクセス
- https://www.heian.ac.jp/access
最終更新日: 2026.09.27
基本情報
| 名称 | 有栖館(有栖川宮旧邸) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市上京区下立売通烏丸西入五町目町185-1他 |
| 所有者 | 三菱UFJ信託銀行株式会社 |
| 指定 | 登録有形文化財 3件 |
| 座標 | 35.02018, 135.75901 |