稲葉家住宅とは

稲葉家住宅(いなばけじゅうたく)は、京都府京丹後市久美浜町にある豪商稲葉家の屋敷で、明治23年(1890年)に完成した主屋を中心に、江戸末期の長屋門と北宝蔵、明治中期の南宝蔵の計4棟が平成15年(2003年)に登録有形文化財となった。現在は「豪商稲葉本家」の名で一般に公開されている。

屋敷は久美浜の古い町なみの中ほど、府道11号に面した広い区画を占める。文化庁の解説も、稲葉家が町の中央に大きな敷地を構えていたことに触れている。

稲葉家住宅の所有者は京丹後市。運営は、指定管理者となった特定非営利活動法人わくわくする久美浜をつくる会が担っている。

糀屋から廻船業へ―稲葉家の歩み

京丹後市の資料によれば、稲葉家は「糀屋」の屋号をもつ江戸時代以来の久美浜の富豪で、当主は代々市郎右衛門を名乗った。運営側の紹介では、糀づくりで蓄えた資金をもとに廻船業へ進み、沿岸交易で大きな富を得て、近隣の諸藩の金融を一手に担うほどになったという。美濃の稲葉一族の末裔とも言われるが、これは家の由緒として伝えられている話である。

いまの主屋を建てたのは12代の市郎右衛門英裕で、明治18年(1885年)に着工し、5年がかりで明治23年(1890年)に完成させた。英裕は衆議院議員も務めている。次の13代市郎右衛門は、私財を投じて旧国鉄宮津線の久美浜・豊岡間の開通に尽くした人物として知られる。

稲葉家住宅の敷地には、この13代をたたえる銅像が立つ。昭和25年(1950年)に熊野郡の町村会が建てたもので、運営側によれば、像は美濃の稲葉山城の方角を向いているという。

屋敷の配置

稲葉家住宅の敷地は南側で道路に接し、その道に向かって長屋門が開いている。登録された4棟の中心は主屋で、その東側に2棟の土蔵が廊下でつながる。南寄りの1棟が南宝蔵、北寄りの1棟が北宝蔵である。

稲葉家には、この2つの内蔵のほかに金蔵・米蔵・道具蔵などの外蔵もあった。これらは登録の対象ではなく、現在は展示室や工房として使われている。江戸期の建物と伝わる離れの吟松舎や庭園も、登録の範囲には入っていない。庭は稲葉家の旧庭園をもとに、16代佐野藤右衛門が手がけたものと案内されている。

4棟の登録と年代

稲葉家住宅の4棟は、いずれも平成15年(2003年)1月31日に登録有形文化財として登録された。登録番号は主屋が26-0142、長屋門が26-0143、南宝蔵が26-0144、北宝蔵が26-0145で、同じ回の登録にまとまっている。

建てられた時期は棟ごとに違う。文化庁のデータベースによる年代は次のとおり。

  • 長屋門:江戸末期(1830年から1867年)
  • 北宝蔵:江戸末期(1830年から1867年)。主屋の建設にあわせて曳家されたことが古図から分かる
  • 主屋:明治23年(1890年)
  • 南宝蔵:明治中期。主屋と同時に建てられたと考えられている

登録基準は、主屋が「再現することが容易でないもの」、ほかの3棟が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。江戸末期の門と蔵を残したまま明治の大きな住まいを建て、蔵を1棟新たに加えた。4棟の年代の差は、その建て替えの順序をそのまま示している。

見学と行き方

稲葉家住宅は「豪商稲葉本家」として公開されており、開館は午前9時から午後4時まで。水曜日と年末年始は休館となる。入館は無料だが、建物の維持管理のため1人100円の協力金が呼びかけられている。主屋の内部と、主屋と廊下でつながる宝蔵の展示を見学できる。

鉄道の最寄りは京都丹後鉄道宮豊線の久美浜駅。運営側の案内では駅から歩いて7分ほどで、京都府の観光資料は徒歩約10分としている。JR山陰本線の豊岡駅で京都丹後鉄道に乗り換えるのが基本の経路で、運営側は福知山・天橋立方面から久美浜駅まで直通する特急「はしだて」も勧めている。

車の場合、稲葉家住宅の前を通る府道11号は道幅が狭い。運営側は、一時的な停車も含めて路上に停めず、案内している市営の無料駐車場を使うよう求めている。

参考文献

国指定文化財等データベース 稲葉家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003110
国指定文化財等データベース 稲葉家住宅長屋門(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003111
国指定文化財等データベース 稲葉家住宅南宝蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003112
国指定文化財等データベース 稲葉家住宅北宝蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003113
郷土史の黎明~明治時代の丹後地域~ 展示解説シート(京丹後市立丹後古代の里資料館)
https://www.city.kyotango.lg.jp/material/files/group/43/kyoudoshinoreimei.pdf
豪商 稲葉本家(公式サイト)
https://www.inabahonke.com/
館内のご案内(豪商 稲葉本家)
https://www.inabahonke.com/kannai/
交通のご案内(豪商 稲葉本家)
https://www.inabahonke.com/access/
協力金のお願い(豪商 稲葉本家)
https://www.inabahonke.com/news/%e5%8d%94%e5%8a%9b%e9%87%91%e3%81%ae%e3%81%8a%e9%a1%98%e3%81%84-2/
稲葉本家 運営団体のご紹介(豪商 稲葉本家)
https://www.inabahonke.com/about-npo/
丹後地域のイベント情報(京都府丹後広域振興局)
https://www.pref.kyoto.jp/tango/no-shoko/documents/3ibento.pdf

最終更新日: 2026.09.27

基本情報

名称稲葉家住宅
所在地京都府京丹後市久美浜町3102
所有者京丹後市
指定登録有形文化財 4件
座標35.60607, 134.89758