芝ヶ原古墳:卑弥呼の時代が眠る、日本最古級の古墳を訪ねて

京都府城陽市の静かな丘陵に佇む芝ヶ原古墳(しばがはらこふん)は、3世紀前半から中頃 ― まさに卑弥呼の時代 ― に築造されたとされる日本最古級の古墳です。国の史跡に指定され、出土品は一括して国の重要文化財に指定されているこの古墳は、古墳時代の幕開けを物語る貴重な遺跡として全国の考古学ファンの注目を集めてきました。現在は史跡公園として美しく整備され、誰でも自由に訪れることができます。

芝ヶ原古墳とは

芝ヶ原古墳は、正式には「芝ヶ原12号墳」と呼ばれ、城陽市北部に広がる久津川古墳群の中の芝ヶ原古墳群(全13基)を構成する古墳の一つです。墳形は前方後方墳(ぜんぽうこうほうふん)という、二つの方形が連なった形状をしています。後方部は南北21メートル、東西19メートルを測り、前方部は道路建設により削平されていますが、残存長約3.5メートル以上、くびれ部の幅は11.6メートルに復元できます。

墳丘には段築や葺石は認められず、周囲には周溝が巡らされています。埋葬施設は組合式木棺の直葬で、木棺の大きさは長さ3メートル、幅0.8メートル。これを納めた土壙は長さ4.7メートル、幅2.5メートルでした。

なぜ国の史跡・重要文化財に指定されたのか

芝ヶ原古墳が全国的な注目を浴びたきっかけは、昭和61年(1986年)夏、宅地開発に先立って行われた発掘調査でした。出土した土器は「庄内式」と呼ばれる弥生時代末期から古墳時代初頭の古い様式であり、築造時期は3世紀前半から中頃と推定されます。これは南山城地方において、有名な椿井大塚山古墳よりもさらに古い時代の首長墓として位置づけられ、古墳時代の成立過程を解明するうえで極めて重要な存在です。

古墳域は平成元年(1989年)に国の史跡に指定され、平成24年(2012年)には史跡範囲が追加指定されました。また、出土品一括は平成2年(1990年)に国の重要文化財に指定されています。

出土品の魅力:古代の権威を物語る副葬品

木棺の北小口付近から発見された副葬品は、当時の有力首長の権威と交流範囲を雄弁に物語っています。

  • 銅釧(どうくしろ)2点:奄美群島以南で採れる貝で作った腕輪を模した銅製品。完形で出土した同タイプは全国唯一で、72本の放射線が刻まれた精緻な造りが特徴です。実際に身に着けるものではなく、被葬者の権威を示す威信財と考えられています。
  • 四獣形鏡(しじゅうけいきょう)1面:直径12センチメートルの仿製鏡(中国鏡を模して日本で作られた鏡)。四つの獣の文様が施されています。
  • 硬玉製勾玉 8点:翡翠(ヒスイ)で作られた曲玉で、霊力や地位の象徴とされました。
  • 碧玉製管玉 187点:緑色の碧玉を丁寧に加工した管状のビーズ。
  • ガラス製小玉 1,276点:大量のガラス玉は、広範な交易ネットワークの存在を示唆しています。
  • 鉄製品:ヤリガンナ(鉄鉋)1点、鉄針残欠、鉄鏃残欠各1点。

さらに、墓壙上面の礫敷からは供献用の庄内式土器(二重口縁壺4点、高坏1点など)が出土しており、弥生時代と古墳時代の過渡期の祭祀の様子を伝えています。

見どころ:史跡公園を歩く

平成25年(2013年)に史跡公園としてオープンした芝ヶ原古墳は、墳丘が築造当時の姿に復元され、周辺の地形も整備されています。復元された墳丘の上からは北方に素晴らしい眺望が広がり、約200年後に造営された南山城地方最大の久津川車塚古墳を望むことができます。かつてはその先に巨椋池まで見渡せたといわれ、この地を治めた古代の首長がなぜこの場所を墓所に選んだのかが実感できる景観です。

公園内の体験広場には、古墳や古代寺院跡の分布を示す磁器製の立体模型が設置されています。休憩室には解説パネルのほか、銅釧と四獣形鏡のレプリカが展示されており、実際に手に取って触れることができます。トイレも完備されているため、城陽の古墳巡りの拠点としても最適です。

城陽市歴史民俗資料館(五里ごり館)で出土品を見学

重要文化財に指定された実物の出土品を見るなら、城陽市歴史民俗資料館(愛称「五里ごり館」)を訪れましょう。「五里ごり」の名は、城陽市が京都から五里(約20キロ)、奈良からも五里の位置にあることに由来しています。

常設展示室では、旧石器時代から近現代に至る城陽市の歴史を通史的に紹介。芝ヶ原古墳の銅釧や四獣形鏡はもちろん、久津川車塚古墳の原寸大石棺レプリカなど見応えのある展示が充実しています。資料館は文化パルク城陽の西館4階にあり、プラネタリウムや図書館も併設された複合文化施設です。

開館時間は午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)。休館日は月曜日(祝日の場合は翌日)および年末年始。観覧料は大人200円、小中学生100円です。

周辺情報:古墳のまち城陽を巡る

城陽市は「古墳のまち」と呼ばれるほど古墳が多く、市内には約150基の古墳が確認されています。芝ヶ原古墳からほど近い場所にも注目すべき遺跡が点在しています。

  • 久津川車塚古墳:5世紀中頃に築かれた、濠を含む全長161メートルの南山城地方最大の前方後円墳。墳丘には葺石と埴輪が並び、圧巻の存在感です。
  • 芭蕉塚古墳:直径27.5メートルの円墳で、家形・甲冑形の埴輪や朝鮮半島製の陶質土器が出土しています。
  • 芝ヶ原古墳群(他の古墳):前方後円墳2基、方墳、円墳など13基が3世紀から7世紀にわたって造られた古墳群です。

また、電車で少し足を延ばせば、抹茶と世界遺産・平等院で有名な宇治市へもすぐにアクセスできます。木津川市にある京都府立山城郷土資料館(ふるさとミュージアム山城)では、芝ヶ原古墳出土品の複製品も展示されています。

アクセス

芝ヶ原古墳へは、JR奈良線「城陽駅」から徒歩約15分、または近鉄京都線「久津川駅」から東へ徒歩約10分(約800メートル)です。史跡公園の開園時間は午前9時から午後5時(11月~1月は午後4時30分まで)。12月29日~1月3日は閉園。入園無料です。

Q&A

Q芝ヶ原古墳はいつ頃造られた古墳ですか?
A弥生時代から古墳時代への過渡期にあたる3世紀前半から中頃(卑弥呼の時代)に築造されたと推定されており、日本最古級の古墳の一つとされています。
Q出土品はどこで見ることができますか?
A重要文化財に指定された実物の出土品は、城陽市歴史民俗資料館(五里ごり館・文化パルク城陽西館4階)で展示されています。史跡公園内の休憩室にはレプリカも展示されており、手に取って触れることができます。
Q見学に料金はかかりますか?
A史跡公園は入園無料です。城陽市歴史民俗資料館の観覧料は大人200円、小中学生100円です。プラネタリウムとの共通観覧で割引もあります。
Q銅釧(どうくしろ)がなぜそれほど貴重なのですか?
A芝ヶ原古墳から出土した銅釧は、奄美群島以南で採れる貝殻の腕輪を青銅で模したもので、完形で発見された同タイプの銅製品は全国で唯一です。日常的に身に着けるものではなく、被葬者の権威や社会的地位を象徴する威信財として非常に重要な考古学的資料です。
Q海外からの観光客でも楽しめますか?
A案内板や展示は主に日本語ですが、復元された墳丘や立体模型は視覚的にわかりやすく、古墳文化に興味のある方なら十分楽しめます。事前に基本的な情報を調べておくか、翻訳アプリを活用されることをおすすめします。

基本情報

名称 芝ヶ原古墳(しばがはらこふん)/ 芝ヶ原12号墳
墳形 前方後方墳
築造時期 古墳時代初頭(3世紀前半〜中頃)
規模 後方部:南北21m×東西19m/前方部:残存長約3.5m以上/くびれ部幅:11.6m
文化財指定 国指定史跡(1989年)/出土品:国指定重要文化財(1990年)
所在地 京都府城陽市寺田大谷
アクセス JR奈良線「城陽駅」徒歩約15分/近鉄京都線「久津川駅」徒歩約10分
開園時間 9:00〜17:00(11月〜1月は9:00〜16:30)/12月29日〜1月3日閉園
入園料 無料(史跡公園)/資料館:大人200円、小中学生100円
出土品展示 城陽市歴史民俗資料館(五里ごり館)文化パルク城陽西館4階

参考文献

芝ヶ原古墳 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%9D%E3%83%B6%E5%8E%9F%E5%8F%A4%E5%A2%B3
芝ヶ原古墳 – 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/191202
京都府芝ケ原古墳出土品 – 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/207050
史跡芝ヶ原古墳 – 京都府観光連盟公式サイト
https://www.kyoto-kankou.or.jp/info_search/380
城陽市内の見学できる古墳 – 城陽市公式ウェブサイト
https://www.city.joyo.kyoto.jp/0000006270.html
史跡芝ヶ原古墳 – お茶の京都
https://ochanokyoto.jp/spot/detail.php?sid=192
芝ヶ原古墳 – JRおでかけネット
https://guide.jr-odekake.net/spot/14281
芝ヶ原古墳 – 京都通百科事典
https://www.kyototuu.jp/Sightseeing/HistorySpotShibagaharaKofun.html
城陽・芝ヶ原古墳が遊べる公園に – リビング京都
https://www.kyotoliving.co.jp/article/130427/last/e/index.html

最終更新日: 2026.03.02