丹波に一基だけ残る中世の十三重石塔

延福寺十三重塔(えんぷくじじゅうさんじゅうのとう)は、京都府亀岡市本梅町の延福寺にある室町前期の石造十三重塔で、延文三年(一三五八)の建立とされ、昭和三十二年(一九五七)二月十九日に重要文化財に指定された。丸岡山の山中、伽藍より一段高い斜面に立つ。

十三重の石塔は中世に各地で造られたが、その多くは失われている。亀岡市文化資料館のデータベースは、丹波地域で中世まで遡る石造十三重塔としてはこれが唯一だと記す。指定の理由は、ほぼこの一点に集約される。

寺歴は古い。延福寺は高野山真言宗の寺院で、寺伝によれば久寿元年(一一五四)に文覚上人の開創とされる。源頼朝に挙兵を勧め、京都の神護寺を再興した、あの文覚である。正和元年(一三一二)に祐辨が再興し、花園天皇の勅願所となって、寺家十二坊を従える大寺として栄えたと伝える。

石を読む

台帳の記載は、石造十三重塔、一基。そして基礎に「延文三戊戌十月廿五日」の刻銘があること。延文は北朝の年号である。細かい話に見えるが、影は長い。七年前に丹後で造られた縁城寺の宝篋印塔は南朝の正平年号を刻んでいた。同じ京都府内で、ほぼ同世代の石工が、対立する朝廷の暦で自らの仕事に日付を入れている。

石材は花崗岩。高さは資料により約二・七メートルから三メートルとされ、十三重塔としては小ぶりな部類に入る。各層の屋根の上に低い軸部を作り出し、屋根はゆるやかに反る。

彫刻は初層に集中している。初重軸部の四方に四方仏が半肉彫され、それぞれ火頭形の龕におさまる。尊名の同定は確定していない。東面は薬壺を持つことから薬師如来と読める。西面は定印を結び阿弥陀如来。南面は錫杖を持つように見え、そうであれば地蔵菩薩。北面は両手を上げ転法輪印に見えるため釈迦如来とも解されるが、顕教四仏の組み合わせであれば弥勒となる。読みは開いたままである。

相輪の上部、九輪の上五輪は欠失している。この欠損は隠されておらず、調査記録にもそのまま記される。塔は現在、石柵に囲まれた円形の石積基壇上に立つ。

願主については資料が割れている。西願という僧の名を挙げるものと、寺を再興した祐辨に帰するものがある。文化庁の記載は刻銘の日付のみで、願主に触れていない。

奥丹波の寺を訪ねる

延福寺は亀岡市街から西へ約十キロ、公共交通の便が薄い土地にある。境内は開かれており、境内に入るための拝観料はかからない。塔は屋外に立ち、見学も撮影も自由である。堂内が開いているとは限らないため、境内を歩く行程として組むのが現実的だろう。

ほかに何があるか。朱塗りの二天門は三間一戸の八脚門で入母屋造、寛永年間(一六二四〜一六四四)の再建と伝わる。鐘楼は土砂崩れを免れて残った、境内で最も古い建物である。庫裏は安永六年(一七七七)の再建。その裏手には江戸時代に作られた池泉庭園があり、京都府の暫定登録文化財(名勝)となっている。庭だけを目当てに足を運ぶ人もいる。

訪れる季節としては秋を選ぶ人が多い。裏山のカエデやイチョウが色づくのは十一月中旬から下旬にかけて。この時期は、山腹の鐘楼、二天門、石塔、庭園がひとつの景色としてつながって見える。

行き方。JR山陰本線(嵯峨野線)千代川駅から亀岡市ふるさとバスで本梅下車、徒歩約五分。便数は多くない。車なら亀岡市街から西へ走ればよい。寺に拝観受付は置かれていないため、問い合わせは亀岡市観光協会(0771-22-0691)が窓口となる。

Q&A

Q延福寺十三重塔は見学できますか。拝観料は必要ですか。
A見学できます。塔は境内の屋外に立ち、境内に入るための拝観料はかかりません。撮影も自由です。ただし堂内が公開されているとは限らないため、境内を歩く見学として計画してください。
Q延福寺十三重塔にはどのような銘が刻まれていますか。
A基礎に「延文三戊戌十月廿五日」の刻銘があり、西暦一三五八年にあたります。延文は北朝の年号です。文化庁の記載に願主名はなく、西願とも祐辨とも資料によって説が分かれています。
Q延福寺十三重塔はなぜ重要文化財なのですか。
A丹波地域で中世まで遡る石造十三重塔としては唯一の遺例と記録されているためです。年号を刻む銘があること、初重軸部の四方に四方仏が半肉彫されていることも、地域の石造物の年代を測る基準として価値を高めています。
Q延福寺十三重塔の高さはどれくらいですか。
A資料により約二・七メートルから三メートルとされ、十三重塔としては小ぶりです。相輪の上部(九輪の上五輪)が欠失しているため、造立当初はもう少し高かったと考えられます。
Q延福寺へはどのように行けばよいですか。
AJR山陰本線(嵯峨野線)千代川駅から亀岡市ふるさとバスで本梅下車、徒歩約五分です。バスの便数は限られるため、車での訪問が確実です。亀岡市街から西へ約十キロの位置にあります。

基本情報

名称延福寺十三重塔
所在地京都府亀岡市本梅町
指定区分重要文化財(建造物) 指定番号 01396
指定年昭和32年(1957)2月19日
員数1基
寸法花崗岩製。高さ約2.7〜3m(相輪上部を欠失)
所有者延福寺
公開状況境内の屋外に立ち、随時見学可。拝観料なし

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 延福寺十三重塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1983
亀岡市文化資料館 文化財データベース — 延福寺 石造十三重塔
https://museums.city.kameoka.kyoto.jp/database/01s07h21/
京都通百科事典 — 延福寺(亀岡市)
https://www.kyototuu.jp/Temple/EnpukuJiKameoka.html
京都ガイド — 延福寺
https://kyototravel.info/enpukuji

最終更新日: 2026.08.07